リリーの新種野菜
「それじゃ、頼んだぞ。 俺は作業部屋に戻る、何かあったら呼んでくれ」
「はい」
そう言って二人は別れた。
「さて、食堂か」
言われた通り食堂に向かってジグは歩きだした。
「…うん?」
食堂近くにつくと付近にいい匂いが漂っている。
ジグは食堂の扉を開けて中に入った。
「何か作っているのか?」
食堂に入り、奥の厨房に着いた彼は中で料理をしている彼女に話しかけた。
「あら、ジグ。今は新しく入った食材で試作をしている所よ」
「新しい食材?」
そういうエミルにジグは聞いた。
「ええ、資源班のリリーから新種の野菜を貰ったの」
「美味いのか?」
エミルは食糧庫から、その野菜を取り出した。
「これなんだけど…」
「随分大きい葉野菜だな」
「かじってみて?」
「ん? …ああ」
イタズラっぽい笑みで言うエミルに若干の怪しさを感じながらも、ジグは渡された野菜の切れ端をかじった。
「…! ごほっ! む…」
「苦いでしょう?」
辛そうな顔でむせるジグにエミルは笑いながら水の入ったコップを渡した。
「…。…。…ふぅ。 分かってるなら何故食べさせたんだ…」
「その苦さを知らないと、この後驚かないからよ」
「どういう事だ?」
疑問に思うジグを尻目にエミルは隣の箱から同じものを取り出した。
「これは同じものじゃ…ないな、なんだ?」
「さっきの野菜を乾燥させたものよ」
「旨そうには見えないが…」
「慌てないで」
先ほどの件もあり、ジグは警戒するが、構うことなくエミルは容器と棒を取り出す。
「これに水を加えて細かく砕くと…」
エミルは容器に野菜を入れ、水を加えて棒で細かくしていく。
「ほら」
「…塊になったな? …?」
「まだよ。これを焼くの」
未だに怪しむジグにエミルは笑いながら言う。
握り拳大に固めた野菜を火にかけ焼き始める。
ジュアッと良い音をたてて焼けていくそれからは香ばしい良い匂いが漂ってきた。
「おお、これは…」
「良い感じでしょ?」
自信ありげに言うエミルにジグは頷く。
「あとはこれと…これも…」
エミルは取り出した数種類の香辛料とたれを追加し焼き上げていく。
「はい!出来上がり!」
焼き上がった料理を皿に乗せてテーブルに置いた。
「凄いな、元があれだったとは思えない」
「でしょう? 食べてみるともっと驚くわよ?」
そういってエミルはジグにナイフとフォークを渡した。
「どれ…」
進められたジグはひとかけら切り取り口に運んだ。
「これは…凄いな…」
口に入れた瞬間に広がる香ばしさや、たれとスパイスのピリッとした味付けもさるものだが何より…。
「お肉みたいでしょう?」
「ああ、これはさっきの野菜なんだよな? まるで焼いた肉だ」
驚いた?と言わんばかりの顔をするエミルに、ジグは信じられないとばかりに言った。