訓練準備 2
二階から降りてくるエミルに気づいたジグは視線をそちらに向ける。
「起きたのか?」
「ええ、ぐっすり寝てたわよ…全く…」
「扉越しによく分かったな」
「…」
エミルは墓穴をほってしまい思わず黙る。
「ふぁ…。 何してるんだ?」
二階から降りてきたユールは無言でそっぽを向くエミルに近づき話しかけた。
「なんでもないわ…よっ!」
「いった! 何すんだよ!」
「目が覚めたでしょ?」
振り向きざまに背中を叩かれたユールは憤慨する。
しかしエミルはシラをきって言った。
「なんなんだ…」
「はは、まぁ俺のせいでもあるのか? 悪いな」
「意味がわからないぞ…」
突然謝ってくるジグにユールは困惑する。
「ほら。もうお昼よ、ユール。 何か食べたら? 朝から何も食べてないんでしょう?」
「そうだった…。 何にすっかなぁ…」
「私は軽いものにするわ。 ジグは?」
「俺も軽く済ませておくとしよう。 動けなくなりそうだしな」
そう言って三人は厨房の方へ向かった。
「じゃあ…俺はこれを!」
「はいよ!」
ユールが注文したのは大盛りの定食だった。
「あんた、そんなの食べて大丈夫なの? この後訓練なのよ?」
「大丈夫大丈夫! むしろ食べないほうが持たないって!」
「ならいいけど…」
笑いながら言うユールを若干呆れながらエミルは見ていた。
注文を終え、料理をテーブルまで運んだ三人は訓練について話していた。
「ここで待ってればいいんだよな?」
「そうね、リゼさんが来てくれるはずだわ」
「なら、なるべく窓際の方に居たほうが良いかもな」
ジグの提案に三人は窓際の席に移動し、食べ始めた。
「そういえば二人共、次の配属は決まったの?」
「うん? 俺はまだ何も言われてないなぁ……ジグは?」
「俺もだ。 だがまぁ…恐らくまた同じだろう」
エミルが聞いた配属とは、船員に割り振られた役割を指す。
島への上陸、流れ岩の調査、他国への謁見など役割は多岐にわたる。
ユールとジグは暫く前からダグラの調査船に世話になっており、エミルはここ最近に船に配属されたばかりだった。
「そう。 昨日言われたのだけど、私は次の航海には参加しないみたい。 リリーと一緒に研究区に配属されたわ」
「おおっ! ってことは本格的にあの野菜を育てるのか?」
「それは楽しみだな。」
エミルの言葉に二人は期待を寄せて言う。
「ふふ、恐らくそうね。 必ずものにしてみせるから楽しみに待ってなさい」
「ああ! 任せたぞ!」
「ユール、お前が偉そうにしてどうする」
「ふふ、食べ物のことになると必死ね」
期待から目の色を変えて言うユールに二人は笑う。
食事を食べ終わり暫く談笑をしていると、寮の外の方に人だかりが出来始めていた。
「なんだ?」
いち早く発見したユールが声を上げ、三人は外を見る。
するとそこには人に囲まれたリゼが来ていた。
「リゼさん。 今日は何のようで?」
「誰か探してるんですか? 呼んできましょうか!」
ざわめき出す群衆を制して彼女は言う。
「ああ、大丈夫だ。 自分で探すよ、ありがとう」
寮の方に目を向けた彼女は窓際でこちらを見るユール達と目が合った。
リゼを発見した三人は、立ち上がってこちらに向かってくる。
「リゼさん!」
「エミル、準備は大丈夫か? 他の二人も」
真っ先に駆けつけてきたエミルと、後ろからついてくるユールとジグにも声をかける。
「「「大丈夫です!」」」
声を揃えて言う三人にリゼは微笑む。
「ふふ、そうか。 なら、早速向かうとしよう。 場所は大体わかると思うが、研究区の訓練場だ。 着いて来てくれ」
人混みをぬけ、四人は研究区に向かって歩き出した。
進みながらリゼは三人に話しかける。
「三人共、休息はしっかり取れたか?」
「大丈夫です!」
「ユール、あんた…昨日の夜疲れすぎて昼まで寝てたでしょ…」
真っ先に返事をするユールにエミルは避難の目を向ける。
「大丈夫だって! しっかり寝たし飯も食ったしな!」
「ふふ、そうか。 ジグとエミルも大丈夫か?」
「俺はしっかり一日休んだので大丈夫です」
「私も!」
リゼに聞かれた二人も答える。
「これからする訓練では体力を消耗する。 体に不調を感じたらすぐに言うんだ」
「そんなに大変なんですか?」
「そうだな、だが無理をさせるつもりはない。 ゆっくり、それぞれのペースで進めるから大丈夫だ」
リゼは不安な顔で言うエミルに優しく返事をした。
「リゼさん、武器とか持ってきてないんですけど良いんですか?」
「ああ、装備品は訓練場に置いてある備品を使うから大丈夫だ」
「わかりました! 楽しみだな~」
「何を気楽に言っているのよ、ユール。 遊びじゃないんだから」
「はは、変に気負うよりは良いんじゃないか?」
その後も他愛もないことを話しながら、四人は研究区に向かっていった。




