6.黒ウサギ
黒ウサギ
寝台の上。寒々しい外の風景を眺めながら、ふと、思い出す。
「そういえば、エヴァンったら」
「ん?」
体調を崩した弟嫁の様子を見に来たリンクィンに、ついこぼしてしまう。だって、ねえ。こんな話、一人で抱えていられないもの。
「ウィリアローナが、黒ウサギに見えるんですって」
くすくすと、笑いが漏れた。
「はぁ」
わかっていないリンクィンに、つまり、と繰り返す。
「あの人、ウィリアローナのこと可愛くて可愛くて仕方ないのよ、きっと」
「……」
呆気にとられたようにリンクィンは黙っていたが、やがて、ぷ、と吹き出す。
「よくそんなの聞き出せたね。さすがだよ。いったいどんな話術を使ったんだい」
「エヴァンが勝手に喋るのよ」
私は何も、と、澄まし顔を見せれば、そうかい、とリンクィンは肩を震わせた。あぁ、それにしても目に見えるようだわ。
「きっと、ウィリアのことギューってするたびに心の中で『かわいいかわいいかわいいかわいい!』って叫んでるんでしょうねぇ」
「そんな王様には見えなかったけど」
「外面取り繕うの本当うまいのよ」
病的に? なんて言ったら、失礼ね。きにしないけど、と笑ってみせる。
リンクィンと二人、ひとしきり笑って、はぁ、と咳き込みそうになる胸元をさすった。
「あと、大事にできる相手が見つかって、幸せなのね」
はしゃぐよりも前に、噛み締めているのだわ。