第1話 いつもの日が終わった日
「お~い!健~!!、起きなさ~い!!」
大きな声が窓の外から聞こえた。
いつもの朝だ。
僕は薄い掛け布団をどかし、ベットの隣にあるカーテンを開け、手を振った。ありがとうのつもりだ。
僕はベットからでて、薄着を脱ぎ、制服に着替えた。
階段を降りると、朝食が並べられていた。
キッチンで洗い物をしている母が「いつまで楓ちゃんに起こしてもらうつもりよ」と言ったので、「さぁ、あっちが飽きるまでじゃない?」と返した。
「なにそれ。感じ悪いわね」と母に言われた
僕は何も言わず、弁当をスクールバックに入れ、玄関を出た。
言っておくが、ちゃんと歯磨きはしてある。
「遅いわね~、遅刻しちゃうよ」
少し顔を膨らませながらそう言われたので、「悪い」と悪びれる様子もせずに返した。
「感じ悪い!」
「悪い」
僕と同じ制服を着ているこのポニーテールの女は〈朝比奈 楓〉、おせっかい好きの女だ。僕とはいわゆる幼馴染。腐れ縁ってヤツだ。
「もう~」
楓は僕の隣に付き、歩いた。傍から見たらカップルに見えるだろうな。
多分、僕は楓から好意を寄せられている気がする・・・。まぁ、あっちから告白してきたらそのつもりだ。
いつもの通学路を、いつものスピードで歩き、いつもの様に他愛のない会話をし、いつもの様に学校につき、いつもの様に席についた。
僕の席は通路側の前から二番目だ。
「じゃあ、帰りね~」
と楓が僕にいつもの様にいい、楓は自分の席に戻っていった。
楓の席は、窓側の一番後ろの席だ。
あれ?、楓の後ろに机がある?なんでだ?。
「おっ、おしり夫婦だね~」
「それを言うなら、おしどり夫婦な。って、そんなんじゃないって」
僕は通路側の窓に背中を預けるようにし、後ろの席にいる高橋にツッコんだ。
この高橋というヤツは、学校で1、2を争うほどのバカだ。なんで、新学校にこういうヤツがいるのは謎だが、・・・まぁ、優しくて良い奴だ。
「あ、山田、知ってるか?」
今更だが、僕の苗字は山田だ。〈山田 健〉が僕の名前だ。
「ん?、何が?」
「今日、転校生が来るってよ!」
「へぇ~~」
「テンション低いな~~。いつもながらだけど。」
高校2年生にもなって、転校生位でテンションが高くなる方が、僕からしたら、少し変な様な気もするが。
「あ~、でも驚かないか。今日は新学期の初めだもんな」
「あっ、そうか」
高橋は僕の肩を軽く叩き「冬休みがあったやろうがい!」とツッコまれた。
「どんなヤツなんだろうな?」
「すげーイケメンらしいぞ~~」
高橋が何かを言いたそうな目を僕に向けた
「カエデちゃん、取られちゃうかもよ~~。早めに告っとけよ~~」
心臓が飛び上がりそうだったが、顔には出さずに「ふ~~ん」と鼻で言い流した。
「お~~い、席につけ~~」
図太い声が教室中に響いた。体育の教室の郷田がいつもの様に大きな声でそう言うと、全員がいつもの様に自分の席に戻っていった。
「早速だが、転校生を紹介する」
郷田のその言葉に、クラス中はどんちゃん騒ぎになった。
おいおい、お前ら高2だぞ?。そんな、小学生みたいな感じでいいのかよ。
「え~~!!!」
「キャーー!!!」
「どんなヤツ!?どんなヤツ!?」
そんなクラスメイトを僕は冷めた目で見ていた。
変に期待するのも可哀そうだろ~~~。と心の中でクラスの騒いでる奴らに注意した。
だが、そんな僕の心配も吹く風に飛ばされた紙のように消える事になった。
「じゃ、入ってこい~」
ガラガラガラ~
教室の前の扉が開いた。そこから来たヤツに僕は目を見開いた。
窓に預けていた頭を起こし、ソイツに目が奪われた。
「どうも、〈一ノ瀬 彼方〉です。よろしくお願いします」
物静かな男だった。だが、周りとは明らかに雰囲気が違っていた。
身長も体格も普通よりちょっといい位だが、
髪の色がおかしい、赤色だ。そして、名前がラノベから飛び出したような独特の名前だ。
だが、そのおかしさを消してしまうような顔を持っている、男の僕が思う程に絵に描いたようなイケメンだ。
そして、男が持つ雰囲気、なんといえばいいか分からないが、明らかに僕とクラスの奴らとは違っていた。
その時、僕の心臓が大きく跳ねた。さっきとは違う鼓動が僕の全身に鳴った。
僕は後ろを振り向こうとした。
「あ、あんたは!!!!」
中心の席に座っている、クラスのマドンナ的存在の神崎さんが立ち上がり、転校生に指を指した。
「あんたは朝に私にぶつかった男ね!!」
「あ~・・・誰だっけ?」
転校生のカナタは表情を変えずにそう言うと、神崎さんは「謝りなさいよ!!」と大声でカナタに言うと、腕を組んだ。
「ごめんさない。先生、僕の席はどこですか?」
「ちゃんと謝りなさいよ!!」
まるで、ラブコメのそれだな。と心の中で僕は呟いた。
でも、良かった。神崎さんが、ラブコメのキャラの様な事を言っているという事はそう言う事だ。
楓と僕はモブという事になる。・・・現実の世界で僕は何を言っているんだ・・・。
「か、カナタ?」
その時、僕の前の席にいる桜さんが、呟いた。
「・・・桜?」
「やっぱり、カナタ君なんだ!」
ん?、転校生は桜さんと知り合いなのか?。それよりも、意外だな。桜さんは普段は喋らないタイプなのに、こんなに注目される場面で口を開くなんて。
「なんだ?。知り合いか?」
郷田がカナタに訊くと、カナタは平然に答えた。
「昔、家が隣同士で、小学生の頃からの友達です」
「からの・・・」
そう桜さんが耳を赤らめながら呟いたのを、僕は見逃さなかった。
なんだ、この不安感は?、この桜さんはいわゆる負けヒロインポジションな筈だ。幼馴染枠が勝てないのはラブコメの定番だ。
さっきから僕は現実の世界で何を言っているんだ?・・・。だが、なんだ、この不安感は。
「あれ~~??、カナタ~~??」
僕の列の一番後ろの席にいる、普段は寝ていて、眠り姫と呼ばれている天音さんが目をこすりながら、起きた。
その際に、天音さんは背伸びをし、男子の視線を釘付けにする。
ラブコメで言ったら、いわゆるお色気担当だ。
だが、妙だ。
普通のラブコメだったら、お色気担当は、年上か先生とかだ。
胸騒ぎがする・・・。ラブコメじゃないのか?・・・。
だから、さっきから何を言っているんだ僕は!!。
ここは、現実だ。ラブコメの世界じゃない。・・・ラブコメの世界じゃない?・・・。
その時、喉に刺さった小骨が取れた様にスっとした気持ちになったのも束の間、不安がMaxになった。
僕は後ろを振り返った。
正確に言えば、左斜め後ろに振り返った。
その方には、僕の、僕の―――!!!
「う、嘘だろ・・・」
心の声が思わず漏れ出た。
小学生から一緒、なんなら、あっちは忘れているが、保育園から一緒の僕には分かる。
幼馴染の僕には分かる。
その表情を初めて見たが僕には分かった。
あの楓の顔は・・・・。
あの、朝比奈 楓 の顔は明らかに―――。
惚れた顔だ。
恋に落ちた顔だ。
僕は椅子に座ってるのに、椅子が引かれた様に落っこちた感じがした。
僕は力が抜けた。
その拍子に思いっきり、窓に頭を打ちつけた。皆が振り向くほどに。
その時、転校生と目があった。転校生の目は少し薄く青かった。五〇悟の様だ。
「ぞ、属性盛りすぎだろ・・」
その時、狼狽えている僕の肩を掴んで、心配の声をかけられた。
「おい、大丈夫か!?」
「た、高橋」
「どした、気分が悪いのか?」
「このクラスは終わりだ。主人公の出現により僕はモブにランクダウンしてしまった。ただでさえ影が薄いというのに」
「な、なにを言っているんだ。いきなり」
高橋は少し引いた目をしていた。だけど、僕の事が心配の様子だった。
ん?、ちょっと待て、なんかおかしくないか?。
僕は目を凝らした。
「た、高橋?、お前の髪色ってそんなに茶色だったか?」
僕は早い瞬きをしながら高橋に訊いた。
「?。そうだけど・・・」
「それは、いつからだ」
「?、生まれた時から?」
ウソだ、そんな筈はない。あれ、そうだった様な気もする。普段から人の顔を適当にしか見ていないから気づいていないだけだったのか?。
いや、現実であり得ないだろ!!
僕は高橋から目を逸らし前を見た。
ウソだろ・・・。
僕は前の席にいる桜さんの頭を見た。
桜さんも心配そうに僕の顔を伺っていた。
「山田君、大丈夫?」
桜さんは小さな声で心配の声をかけてきた。
「さ、桜さん?」
「どうしたの?」
「桜さんって、そんな髪色していたっけ?」
桜さんの髪色は、明らかに桜色だった。おかしい・・・、だが、僕は今初めて桜さんと喋っている気がするし、初めてちゃんと視界に入れたような気がする。
時速200キロで不安が加速するのを感じた。
「そ、そうだけど?」
桜さんは困ったような顔でそう小さな声で答えてくれた。
「お、おかしい・・・。そ、そんな上澄みのイラストレイターが描いたような綺麗な桜色に人間がなるわけがない、おかしいだろ、どういうDNAが入ってるんだよ・・・」
桜さんは少し照れたような顔になったが、そんな事はどうでもいい。
おかしいに決まっているはずだ。どんな配合したら髪が桜色になるんだよ。
「ほ、本当は染めてるとか?」
「?。違うけど?」
ウソだ・・・。僕は視界がクラクラするのを感じた。ありえない。
僕は真実を確かめようと、桜さんの前髪に手を伸ばした。
「や、山田くん?」
パシッ!
「先生、山田やっぱり気分が悪いらしいんで、保健室に連れていきます!」
寸前の所で、高橋が手を伸ばして、僕の手を掴んだ。
「はっ、僕は何を」
「山田、肩を貸すぜ」
僕は高橋の肩を借りるようにし立ち上がった。いや、持ち上げられたというべきか。僕は目の前の出来事が信じられずにいて足に力が入っていなかった。
「た、高橋、ありがと―――!!」
な、なんだと!?
席を立ったことに気が付いた。皆の頭頂部が見えたことで気が付いた。
「う、うそだ・・・」
「や、山田?、ほら、行くぞ!」
なんだ、あのカラフルはよ。行ったこともない新宿か原宿にある虹色の綿あめが僕の脳裏に浮かんだ。
僕は、高橋に連れられるように教室の扉まで来た。
う、うそだと言ってくれ。
「ご、郷田ぁ・・・」
「バカお前!先生つけろって!」
「あぁ?」
教室の空気が凍りついたのを感じた。だが、これを聞かずにはいられない。
「な、なんで、髪色が青なんだよ・・」
「んぁ??どういう事だよ、山田ぁ~~」
「お前は、青色ってより僕と同じ黒がぁ黒が良いだろ・・」
「?生まれた時から、こうなんだよ。文句あるか!」
郷田が教卓を叩き、音が教室中に響いた。
「それじゃあ!!!、ただの青いゴリラじゃないか!!」
「なんだとぉ!!」
「あ、山田の体から凄い熱を感じる!!あっ、凄い熱い!!熱いなぁ!!これは、早退コースだぁ!!」
高橋はそう独り言を言いながら、僕を持ち上げ教室を出て、廊下を走った。
「廊下は走るな!!!」
郷田の怒号が廊下に響いた。
階段辺りで、高橋は僕を離した。僕は体の力が抜け、階段の広い所で尻もちをついた。
「山田?、どうしたんだよ。先生に反抗とか、キャラじゃないだろ」
「高橋、肩を貸してれ」
「うん?、まぁいいけど」
僕は高橋の肩を借りて立ち上がった。
「高橋、もう一度、二階に行こう・・」
「いや、一回の保健室が先だろ、マジでおかしいって」
「高橋、頼む」
僕は高橋の目を見て頼んだ。
「・・・・仕方がないな。」
高橋はそう言い、嫌そうな顔をしながら僕に肩を貸しながら二階に戻った。
「教室に戻るのか?」
「いや、階段の隣の教室の1組の様子が見たい」
「?・・・まぁ、それなら怒られないから俺的には良いけど」
僕は心臓の音を聞きながら力が入らない足を動かし、一組の前側の扉から覗く様に顔を出し教室の中の様子を見た。
「なにがあるんだよ」と、高橋は小声で僕に耳打ちしてきた。
僕はそんな高橋に顔を向けずに、教室の様子を見ながら、高橋に訊いた。
「高橋、お前はこの教室を見てどう思う?」
「?・・・まぁ、普通って感じ?」
「そ、そうか。これが普通か・・・ふ、ふは、フハハハハはははは!!!」
「バカ!お前!!」
僕は大声で笑った。こんな虹色クワガタの色を分割しましたみたいな髪色している教室の奴らが普通?バカか!!。普通なわけないだろ!!。
僕は足の力が抜け、腰が抜けたように地面に崩れ落ちた。
「山田?大丈夫か!?」
「ふ、ふははははは」
「ちょっと待ってろ!、先生呼んでくる!」
僕は走っていく高橋の服の袖を掴んだ。
「や、山田?どうした?」
「高橋、僕たちはどうやらモブの様だ。こんな世界で黒と茶って、なんの個性もない。クズと言ってもいい」
「いきなり酷い事言うなよ」
「高橋、僕は今!確信したよ!!」
「バカッ大声出すなって!」
僕らの教室の扉が開き、血相を変えてコッチに向かってくる青いゴリラの姿が見えた。髪色はともかく、なんで、サラサラヘアーなんだよ。
だが、そんな事なんてどうでもいい。
「高橋」
「やばいやばい!!山田!逃げるぞ!」
「僕はここをラブコメの世界と思っていた。だが、違う」
「何言ってんだ、お前!」
「この世界はラブコメなんて優しい世界じゃない。」
「郷田先生が来てるって!!!」
「転校生の気が抜けたような顔、だが、イケメン。そして、伏線ありまくりの展開、多分一話でこれだ・・・。間違いない」
「山田!、俺は逃げたいから袖を離してほしいんだけど!!」
「この世界は、間違いない。この世界はハーレム系主人公の世界だ。しかも僕の予想だが、恐らく、なろう系だ。」
「何言ってんだよ!お前は!」
「つまり、僕らモブには一切のお恵みが来ない。僕らは一生童貞って事だ」
「どういうことだよ!!?」
「僕は今、恋を取られたんだ。主人公に・・・」
「や、山田・・・」
僕らの前には激高した青いゴリラがいた
「俺はお前のせいにするからな」
高橋が小さな声で言う
「・・・・、高橋も青いゴリラって言ってました」
「!!お前!」
郷田先生が大きく息を吸い教師にあるまじき事を言った。
「!!!。お前ら!!殺すぞ!!」
これから、寝取られる役の僕を殺してくるんなら殺してくれよ。手間が省ける。
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この物語はフィクションです、実際のモノとは関係ありません( ^ω^)・・・




