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黒剣の退屈  作者:
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弱者の時間だ。第2章

モブという名の看守の男。

彼は俺の牢屋の右側の壁に、小さな水晶玉を取り付けた。


次の瞬間——


その水晶玉から眩い光が放たれ、俺たち二人を照らし出す。

左側の壁には、俺たちの影がはっきりと映し出されていた。

俺の影は座っている。

両手は後ろの壁に繋がれた手枷によって拘束されていた。

そして、モブの影は俺の正面に立っている。



俺はコンクリートの台の上に腰を下ろし、背中を壁にもたれさせていた。


やがて——


彼はゆっくりと身を屈める。

その顔が、俺の顔へと近づいてきた。


「質問に答える前によぉ〜、恐怖とは何なのか、俺の手で……お前に教えてやろう〜」

凄んではいるが、どこか滑稽な顔だった。


それを聞き、俺の両脚は激しく震えだした。


……体を左右に必死に揺らし、激しく抵抗してみせる。


「む! 無理ですぅぅ〜! ……怖いんですぅぅ〜! ……」


モブは拳を固く握りしめた。そして——


「そうこなくちゃ……よ!」


——壁のシルエットの中で、彼が俺を何度も何度も殴りつける影が映し出された。


彼が拳を振るうたび、壁の影の奥から、俺の情けない声だけが響く。


「あぅ! あぅ! あぅ!」


モブが拳を止めた。両目をギラつかせ、口元を大きく歪めて笑っている。

その息は、わずかに上がっていた。


「へへっ! 恐怖ってやつ、もうわかっただろ?」


俺はなおも体を悶えさせ、脚をガタガタと震わせる。


「痛いですぅ〜、痛いよぉ〜!」


壁のシルエットの中、モブが俺の襟首を掴み上げるのが見えた。


「…痛いの嫌だろ!? だったら答えろよ! なんでリリを誘拐した!?」

モブの怒号が響く。


「違いますぅぅ!! 私、違いますよぉぉ~!」

シルエットの体が必死に暴れる。


「お前っ! 彼女に何をした!」


「…痛いですぅ〜、痛いのだけは……お願いしますぅぅ!!」


期待通りの答えが得られず、モブの顔は怒りで引きつっていた。


「だから……!! 答えろよ! 俺様はBランクだぞ!」


壁のシルエットで、彼は再び俺を殴り始めた。


「リリに何をした!」


「痛い!……骨が!……折れる!……砕けるぅぅぅ!」


……やがて、モブが殴るのをやめた。


彼の目の前で、俺は力なく首を垂れ、気絶したようにぐったりとしていた。


モブは肩を激しく上下させ、疲弊しきった息を吐き出している。


ふと、モブは震える自分の両手の平に目を落とした。

拳の跡は、真っ赤な血に染まっていた。


『これ全部、俺の血だよな……』


そしてモブは、気絶している俺の姿を見やった。

傷一つない。ただ、彼自身の血だけが、俺の服や顔にべっとりと付着している。


『こいつ、Eランクのはずだ。なんで無傷なんだよ?!

マナオーラを隠してんのか?!』


モブは牢屋の扉に鍵をかけ、外へと歩き出した。


「きっと間違いだ。俺様だぞ……!」


水晶の球体はまだ光を放ち、気絶したようにうつむく俺の顔を照らし続けていた。


……静寂が戻る。


「俺は強すぎる……死ぬほど退屈なくらいに……だが……」


壁の穴に固定されていた両手の鎖が、ゆっくりと自動的に伸びていった。


自由になった俺の両手の平が、膝の上へと落ちた。


長い鎖が、俺の座っているコンクリートの梁に落ちてぶつかり、音を響かせた。


「お前の存在こそが、俺に生きている実感をくれる」


冷徹な眼差し。

俺は手の平で、頬についた彼の血を静かに拭い取った。


「感謝する」


水晶の光が唐突に消え去った。

すべてが深い闇に包まれる。

ただ、鉄格子の通気口から差し込む、微かな月光だけが、そこに残されていた。


◆◆◆


朝。


朝の光が、牢屋の鉄格子の上にある通気口から静かに差し込んでいた。


埃が、俺の牢獄の中でわずかに舞い上がっている。

俺は目を閉じ、まだコンクリートの塊の上に座っていた。


独房の外から、モブとシェアリーが話している声が聞こえてくる……


「情報は何が得られたの?」

シェアリーが尋ねる。


「申し訳ありません。

拷問したにもかかわらず、有意義な情報は得られませんでした。

ただ、バスモント公爵の報告によると、リリはあの男に何をされたかについて、頑

なに何も話そうとしないそうです」


「それだけ?」


「噂では、リリはよく自分の胸を抱き抱えるようにしているとか……

まるで誰かに触られるのを恐れているかのように。」


「なるほどね〜……分かった。」


(分かった? …何を?!)


俺の視界の外、俺の独房のすぐ近く……。


……シェアリーは背中に魔法の杖を持たずに、モブの前に立っていた。

指を唇に当て、彼女は何かを考えているようだ。


「間違いない……これは完全にセクハラ事件です!

あいつの前では、あなたみたいな美人は危険ですよ!

危険すぎます! よければ、その取り調べ……私も同行しましょうか?」

モブが言う。


「その必要はありません。私を誰だと思っているの? もう下がってもいいよ。」


「ハッ! 失礼いたします。」


俺の視界の先、鉄格子の向こうから足音が近づいてくるのが聞こえた。


(この足音…… 新たな客人はもう来たか)


シェアリーは横から歩いてきて、鉄格子の向こう側で俺の方を向いて立ち止まった。


彼女は赤色の模様が入った白いドレスを着ていた。


彼女は牢獄の鍵を開ける。


そして……


……鉄の鎖が俺の両手を引っ張り、背後の壁へと押し付けた。


また手錠が動いた。二つの鉄の輪がさらに近づき、互いに触れ合うまでに詰まり、両手のひらを交差させた状態に押し込めた。


シェアリーは俺の牢獄の中へと入り、牢の扉が閉じられた。


彼女の手の平は上を向き、胸の近くまで上げられる。


【 SOUL MARK ……TRUTH CHAIN 】


一瞬にして、先端に槍のついた1メートルほどの白い小さな鎖が現れた。

その鎖は、換気用の鉄格子の隙間から差し込む朝の光を反射して、眩しく輝いている。


「私はシェアリー」


彼女は冷徹な顔で、その鎖をきつく引き締めた。


「さあ、正直に話そうか」

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