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黒剣の退屈  作者:
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27/28

弱者の時間だ。

女王ヴィオナ・エスティア。

彼女は色白の肌に長い白髪、そして虚ろな暗紅色の瞳を持つ、美しき大人の女性だった。

その耳元には、白いイヤリングが飾られている。


身にまとっているのは、暗紅色の模様があしらわれた黒いドレス。

袖口は短く仕立てられており、全体から『DARK GOTHIC』な雰囲気を漂わせていた。

________________________________


真暗闇の中、ヴィオナはテーブルの端にある豪華な椅子に静かに座っていた。

その椅子は暗闇の中でかすかに輝いている。


彼女の前にある貴族のテーブル、その金の装飾が施された側面が、暗闇の中でわずかに光を放っていた。


彼女の前のテーブルには、ナイフとフォークが20センチほどの間隔を空けて置かれている。

彼女はいつも、それを虚ろな目で見つめていた。


彼女の左側には、空席の椅子が一つ。

俺は彼女の右側に立ち、その姿を見ていた。


その暗闇の中、俺は彼女から3メートルほど離れた位置に立っていた。

俺の服装は、料理人に似た清潔な白い服に黒いズボン。


胸元には、黒い金属製の小さなプレートで作られた名札があり、そこにはこう書かれている。

《 56. NOITRAMA 》


俺はただ静かに立ち、左手を背中に回して上品に佇んでいた。


「…動かないな。体も、口も。…動かせるのは……」


俺は目だけを左右に動かした。


「目だけか…」


俺がただ目を動かし続けていると、耳元にかすかな声が聞こえた。


「食事は?」


そして、俺の目はヴィオナを見つめた。


ヴィオナは机の上のフォークとナイフをじっと見つめ続け、まるで俺の心を読めるかのようだった。


(……今、なんて言った?)


「……食事は?」

ヴィオナの唇が柔らかく、そしてゆっくりと動いた。

その声には、いかなる欲も貪欲さも含まれていないかのようだった。


ヴィオナはまだ、ナイフとフォークを見つめている。


(……食事? 何のこと?)


「剣を握って……」


(剣?)


まもなくして、こちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。


ヴィオナとは反対側の、机の端から。


暗闇の中から、ラファエルがゆっくりと姿を現した。

彼は俺と同じ服を身にまとい、うやうやしくトレイの上に料理を載せて歩いてくる。


ラファエルの髪は後ろで綺麗に結ばれていた。


それから、彼の視線が俺へと向けられた。


……俺は彼の名札に『32. RAPHAEL』と書かれているのを目にした。


(ラファエル……)


彼はトレイを机の上に置いた。

そして、料理の皿をナイフとフォークの真ん中に並べた。


その料理は、黄色いオムレツの上に赤いソースで『JUSTICE』と書かれたものだった。


ラファエルはエレガントにお辞儀をすると、そのまま踵を返した。

歩き去る際、彼はほんの一瞬だけ、また俺の方へ視線を向けた。


俺もゆっくりと視線を右に動かし、彼を見つめた。


ラファエルの背中が、もう10メートルほど先に見える。

一歩、また一歩と、彼の姿はゆっくりと暗闇に呑まれて消えていった。


ヴィオナはまだ、料理を見つめている。


「行って……」


俺はお辞儀をしてから、ラファエルと同じ方向へと歩き出した。


(…俺の体が勝手に動いてる。まるですべて、彼女の思い通りに動かされてるみたいだね)


俺が歩いていくと、背後にあるヴィオナの姿がゆっくりと暗闇に包まれ……そして——


「不味い」ヴィオナの声が、俺の背後から聞こえた。その直後……


……皿の割れる音が響いた。


そして、すべてが暗黒に包まれた。


◆◆◆◆◆◆


夜。


目を開けると、まず目に入ったのは自分の太ももの上に置かれた両手だった。

その両手は長い鎖で手錠をかけられていた。


俺は今、長さ三メートルほどのコンクリートブロックの上に腰を下ろしている。

身にまとっているのは、白と黒の縞模様が入った囚人服だった。


「夢……か」俺は静かに呟いた。


俺の牢屋は暗く、狭い。換気と明かりは、頭上にある鉄格子だけが頼りだった。


手枷につながれた鎖は上へと伸び、背後の壁に開いた穴の中へと続いている。

その穴の内部には、横長でおよそ一メートルほどの鉄製の構造が取り付けられていた。

まるでいつでも両手を壁に引き寄せられてしまいそうだった。


……左手がゆっくりと、自分の左顔に触れた。


「ヴィオナ・エスティア……

なんでかな、彼女の名前がずっと頭から離れない。

忘れてはいけない存在っていうか……いや、忘れたくても体が拒否してる感じ。

俺は変態じゃないし」


「……」


「剣を握って……か 、なぜ?」


俺は小さな声で呟き、ため息をついた。気だるげに、少し斜め下へと頭をうなだれる。


「考えれば考えるほど、考えない方がいい。いつも通りで良しとしよう」


俺の前の鉄格子の向こうから、足音が近づいてくるのが聞こえた。


俺の目が、期待でゆっくりと見開かれる。


「来た来た来た」


横から一人の太った男が歩いてくるのが見えた。

男は鉄格子の前で立ち止まり、俺と向き合う。

彼は看守の服を着ていた。


「来たー!!」


その瞬間、俺の手の手錠の鎖が自動的に引っ張られ、両手が壁に張り付けられた。

俺はコンクリートブロックに座ったまま、両手をだらりと無力に拘束される。


やがて、その太った男は牢屋の鍵を開け、中へと入ってきた。


男は俺の目の前で、自分の手のひらに拳を何度も叩きつけ、いつでも俺を殴る準備を整える。


「尋問の時間だ」


凶悪だが、どこか滑稽に見える表情で男は言った。


俺は不敵な笑みを浮かべながら、目を閉じる。


(ふんっ! ……弱者の時間だ)

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