シルヴァ・アヴェラと戦う。
赤黒い剣が俺の顔の前に突きつけられていた。
シュッ——。
シルヴァは視界から一瞬で消えた。わずかな残像と、舞い上がる砂埃だけがその軌跡を残す。
静寂。
カキン!
反射的に両腕を交差させて首を守る。火花が周囲に散った。
手首から掌にかけては漆黒に染まり、まるで硬い金属のようだった。
体がわずかに後ろへよろめく。
ヒュッ——
それから風が吹き荒れた。まるで空気ですら、あの動きに遅れを取ったかのように。
「なっ……アイアンモンキーの能力か!?」
俺は振り返り、彼女を見た。
そして、首元の近くで黒く染まった両手のひらを広げて笑った。
「アイアンスキンって呼べばいい」 《 IRON SKIN 》
彼女は左手で鞘を握り、右手で刀を構える。頬にはまだ涙が残っていた。
「お願い…さっさと死ね……」
「カチン!」彼女は素早く剣を鞘に収めた。
そして、視界から消えた。
ガキン!
俺はまたそれを防いだ。
赤い雷のような斬撃が、目の前を一瞬で駆け抜けた。
次の瞬間、彼女は洞窟の壁に静かに着地し、しゃがみ込んでいた。
音はない。ただ、周囲の空気だけがゆっくりと揺れていた。
彼女は再び、残像だけを残して跳んだ。
ガキン! ガキン! ガキン!
攻撃は雨のように途切れなく降り注ぐ。
彼女は洞窟の壁から壁へと一瞬で移動し、その軌跡ごとに赤い閃光を残していく。
俺は月明かりの下で、それをひたすら受け流し続けた。
(首だけ……あれが狙いか。服さえ破られなければ、まだ遊んでやるさ)
一撃がぶつかるたびに、俺の手と彼の剣の間で小さな火花が散った
振動が骨まで響く。それでも俺は耐え続ける。
「いつまで続けるつもりだ?もうすぐ毒が回るんじゃないのか?」
俺の声と同時に、攻撃が止まった。
「……そうだな」
彼女は俺の背後で、すでに強い構えを取っていた。
俺は振り向かず、視線だけを右へ滑らせる。
彼女はゆっくりと剣を鞘に収める。
『ノイトラマ。アンタがどこまでマナオーラを隠しているのかは知らない。
でも一つだけ分かる。アンタは私の斬撃を見切れている。』
スキリィン〜……剣が鞘に収まる擦過音が、洞窟の静寂を切り裂いた。
【 ABYSS 】
「カチン!」剣が鞘に完全に収まる音がした。
一瞬で、彼女はその場から消えた。
(一速い。)
月明かりの下、俺が立っているその場所。彼女はすでに俺の前にいる。
【 SLASH!】
その斬撃は、まっすぐに俺の首へと向かう。
ガキン!左手が上がり、それを止めた。
キィィィン〜……
刃が俺の硬い皮膚を削り、甲高い金属音を響かせる。
火花が散り、シルヴァの顔のすぐそばで弾けた。
そしてそのまま、全力で一気に横へ斬り払う。
ザシュッ!…速く、鋭い一閃。
視界に赤い残像だけを残した。
俺の手から血が吹き出し、空中に散った。
(やるな、こいつ……)
俺は少し後ろによろめいた。
彼女の斬撃が俺の手を押し込み、血と手のひらが一瞬、視界を覆い隠す……
…… その一瞬の隙に、彼女の姿は俺の視界から消えていた。
今、彼女は俺の右側にいる。俺の腰を斬り裂こうとしている。
【 DOUBLE SLASH!】
右手が反射的に剣を握り込む。
手の中で刃と握力が激しく震え、火花が散る。
ザシュッ! 彼女の一振りが、また俺の手のひらを傷つけた。
彼女は鞘を投げ捨てる。それは俺の頭上で回転する。視線がつられて上がる。
(違う……罠だ。)
一瞬の隙に、彼女は再び姿を消した。
俺は倒れるように体を横に傾け、わざと隙を作ってやる…
シュッ!
彼女は高速で俺の背後に回り込んだ。
【 FINAL SLASH!】
赤い閃光のように、剣が横一線に俺の背中へと振り抜かれる。
(やっぱり。今度は俺の服を切り裂くつもりか!)
俺はすぐに足の向きを変え、体を反転させる。
「やらせるか!」
右手が伸びる。剣の一撃を受け止めるために。指を硬く曲げ、鉤爪のように。
【 BLACK DRAGON CLAW 】
俺は剣の刃の中央を指で掴んだ。握りは激しく震え、金属が軋み、火花を散らす。
刃にゆっくりと亀裂が走り、それが全体へと広がっていく。
キンッ!
剣は砕けた。鋭い破片が月光を反射しながら飛び散る。
——シルヴァはまるで俺を斬り抜けたかのように、そのまま通り過ぎた
俺たちは背中合わせに立っている。
シルヴァは胸の前に手を上げた。その手は震えている。剣は柄だけを残していた。
『まさか…素手でSランクの剣を破壊できるとは……』
俺は背を向けたまま、彼女を見た。
「お前の大事なものが簡単に破壊されたら、どんな気分だ?」
彼女は黙ったままだった。
俺は胸を押さえ、頭を垂れた。
「……ああ〜、痛い。もう毒が回ってるかも……」
淡々とそう言って、俺は彼女を見た。
「なんちゃって。」
スッ——
鉛筆ほどの大きさの針が、俺の顔の前に向かって飛んできた……
……俺はそれを二本の指で掴む。
「なにを——」
(消えた)
彼女は胸の前で二本の指を掲げる。
【 AURA ZONE】
シュッ——!マナオーラが広がり、地面の表面で濃い煙のように固まる
俺はその領域の中心にいた。
さっきのように拡散させるためのものとは違う。
【 NIGHT STAB 】
ザシュッ!瞬間、何かが速く突き刺さり、俺の太ももを貫いた。
血の飛沫とズボンの穴だけが、その唯一の痕跡だった。
(三倍……いや、五倍か)
ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!
一瞬で、俺の体は全方位からの攻撃に打ちのめされ、よろめいた。
時間がゆっくりと流れる……
月明かりの下、俺の血が宙に舞う。
(なるほど、この領域が彼女の全速…か)
「くくく〜……」
俺は小さく笑った。
(まさか……人間と戦うことが、これほどまで楽しいとは……)
シルヴァは岩壁の脇に着地し、息を切らしていた。二本の指が震え、血を滴らせている。
『なんて硬い体だ……だが、少なくともマナオーラの流れの要所は突いた』
俺がよろめく中、彼女は俺のうなじを見据える。
『あと一つ!』
「あと一つ……そう思ってるんだろ」
高速で踏み込み、二本の指を揃えて俺のうなじへ突き出す
間合いに入った、その瞬間…………
【 SILENT 】




