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【自信作】心に「オジサマ」を飼うお嬢様のマナー~とんでもない名家のお嬢様なのに、気づけばクソボケ扱いされていました~【毎日投稿】  作者: ながつき おつ
第二章

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5話 怒る 前編 

気に入っていただけたら、★やブックマークで応援してもらえると嬉しいです。



 僕から見ても、かなは毎日成長し、スポンジのようにいろんなことを吸収しながら、強く柔軟に育っている。


 そこに、僕は必死についていく。かながメインOSだとして、僕は小さな常駐アプリ。いつもちょっとだけかなを支えている。この形が自然なので、以前のように、僕が表に出るようなことはもう起こらないだろう。


 そうやって安定してから、もう一年が経った。今のかなは立派な年中さんだ。最近では、毎日楽しそうに幼稚園で駆け回っている。


 そんなかなは感受性が強いぶん、苦手なものも実は多い。


 例えば鳩。


 なんだか鳩のあの見開かれたような目を見ていると、背筋がゾワッとする。


 あの目に吸い込まれると死の世界にワープしてしまうと、かなは本気で思っている。


 例えば虫。


 まず羽音がおぞましい。生きているのか死んでいるのか分からない体温も不気味だ。色も形も生態も何もかも、とにかく理解できない。


 だから、かなは虫のことをエイリアンだと本気で思っている。


 他にも、病院の待合室だったり、注射だったり、大型トラックのブレーキ音、雷、ホラー映画、真っ暗な場所など……とにかく弱点まみれなのだ。


 そして、かなは弱点に遭遇すると、とにかく逃げる。今まではそれでなんとかなってきた。


 ただし、この日はそうはいかなかった――



「おまえ、きもい!」


「そうだ!そうだ!お前なんてトモダチじゃない!」


「キモチワルイ」


 お昼前の自由時間、幼稚園の建物の隅から、男の子たちの不快な声が聞こえてきた。


(うっわ、また三馬鹿がなんかしてるよ……)


 かなと一緒に、僕も思わず顔をしかめる。


 三馬鹿とは、年長、年中、年少が一人ずつ集まった、とにかく反抗的で、生意気な男どもだ。


 かなは三馬鹿が虫と同じくらい嫌いだ。


 かなのこの感情を単純に言うと、なんかいけすかねぇ、だ。思考の全てが理解できず、小さなエイリアンのように思っている。


 ちなみに、その三馬鹿は「ドレスよりスニーカー」の攻略対象だったりするんだよね。


 そのせいか、確かに顔はとんでもなく整っているし、家柄もとんでもない。


 でも、あの性格じゃあなあ……


 物語ならば、高校生になる頃には多少マシになっているはずだが、今の三馬鹿はただの生意気で傲慢なガキでしかない。


 ……いや、冷静に考えたら、高校生になってあんまりマシにならないかもしれない。


 妻の見事な手腕で、そういう悪い部分も「キャラ」として、魅力的に見えるようにしただけ……か?


 まあいいや。かなが三馬鹿を苦手としている限り、そんなに積極的に関わることはないだろう。



 三馬鹿たちがおそらく何か悪いことをやっているので、かなはいつものように先生へ報告しに行こうとした。直接は関わりたくないかなにとって、当然のことだろう。


 ただ、


「聞いたぞ!お兄ちゃんは凄いのに、弟の方は出来損ないだってな!」


 出来損ない。


 この言葉を耳にした瞬間、今までにないくらい、かなの頭がカッとなった。


「こらーーー!!!」


 幼稚園全体に、かなの大きな声が響き渡る。


 それから、かなは夢中で突っ走り、すぐに三人のもとへとたどり着いた。


 三馬鹿は、一人の男の子を囲んでいた。囲まれた男の子は小さくしゃがんで小さくなっており、表情は見えず、誰かも分からない。


「な、なんだよ」


 かなのあまりの剣幕に、うろたえながら三馬鹿の一番年上が答えた。


 今まで誰からも反抗されたことがないような、ワインのような暗赤(あんせき)の生意気な瞳。あれは、自分のことを正しいと信じ切っている目だ。


「なんだよ。邪魔すんな」


「遊んでただけじゃん」


 一人が答えると、続けて二人も続ける。


 かなの勢いに怯んでいた三馬鹿だったが、すぐに数の力で立て直したようだ。


 ただ、そんなことはかなには関係ない。


「いいか、三馬鹿ども!」


「「「三馬鹿?」」」


 つい脳内で言っていただけの蔑称(べっしょう)を口に出してしまったが、気にせずかなは続ける。


「出来損ないっていうのは!人を傷つけるためにある言葉だってお母様は言ってた!そういう言葉を使うやつは、敵だって。だから、お前らは私の敵だ!!」


 以前劣等感に関して相談した時、母はこう言っていた。


『かなに“出来損ない”なんて言う輩がいれば、お母様に教えなさい。そいつは紛れもなく、あなたの敵よ』


 そして、付け足すようにこう教えられた。


『そういうやつには、絶対に容赦するな』と。


 だから、かなはいつものように三馬鹿の言葉を聞き流せなかったのだ。


 その気持ちは僕も同じ。


 今まで三馬鹿は、先生の言うことを極端に聞かないくらいだったが、今回の件は少しやりすぎだ。いくら家がとんでもなくすごかろうが、幼稚園の時点ですでに女の子にモテモテであろうが、悪いことは悪いことだ。


「なんだよ、出来損ないに出来損ないって言って、何が悪いんだよ!」


「「そうだそうだ!」」


「そう言えば、こいつもゆりに比べて出来損ないだって聞いたことあるぞ!」


「「ギャハハハ!」」

 

 三馬鹿はおちょくるように笑うが、かなの金色の瞳は、依然としてギラギラと輝いたまま。


 その射殺すような視線の力強さに、三馬鹿は少し怯んだ。


「……そ、そうだ!こいつ、虫が大の苦手だったよな。よし、この出来損ない二人に、ダンゴムシを投げつけてやろうぜ!」


 絞り出すようにそう言った捨て台詞に、かなは明らかな動揺を見せた。


 ダンゴムシを投げつけられると想像しただけで、かなの頭は真っ白になってしまったのだ。


 そんな様子を見て、三馬鹿は完全に調子を取り戻す。


「お前らみたいな出来損ないが、ナマイキなんだよ」


「そうだ、お前ら二人、出来損ない同士でお似合いじゃね?」


「ちょっとだけ痛い目にあってもらわなきゃね」


 ダンゴムシに対処しながら、三人の敵を倒して、しゃがみ込んでいる子を助ける。そんな方法、かなの引き出しの中には存在しない。


 かなは立ち尽くすことしかできなかった。


 下を向いて唇を噛み締め、拳を強く握り込んだ、その時。


「え?」


 短い声が漏れる。


 その声が僕が発したものだと、一瞬、理解が追いつかなかった。


 二度と僕が表に出ることはない。そう思っていたのに――


 どうやら、また僕は表に出てきてしまったようだ。



感想、ツッコミ等、じゃんじゃんお待ちしています。


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― 新着の感想 ―
こんばんは。 女の子に複数で暴力…つまり殴り飛ばしても正当防衛だな!やっちゃえおじさん!(極論) >虫はエイリアン そう言えば昔そういう説も発表されてた気がしますなぁ…古い情報なので今はわからない…
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