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【自信作】心に「オジサマ」を飼うお嬢様のマナー~とんでもない名家のお嬢様なのに、気づけばクソボケ扱いされていました~【毎日投稿】  作者: ながつき おつ
第二章

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6話 怒る 後編

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 なぜ僕が突然表に出たのか、色々混乱している部分もある。


 でも、今はそれどころじゃない。かなが苦手な虫は、かなの一部である僕だって苦手なのだ。


 とにかく今は、この場をどうにかしなければいけない。


 ……うん。


(かなは怒るかもしれないけど、僕にはこの方法しか思いつかない!)


「いくよっ!」


「――えっ」


 僕は座り込むように小さくなっている男の子の手を引っ張って、走り出した。

 

 三馬鹿どもがダンゴムシを取りに行こうと後ろの花壇へ向かっている隙に、逃走する。これが僕の選んだ手段である。


 ただ、すぐに後ろから「逃げたぞ!追え!」という騒がしい声が耳に入ってきたので、まだピンチは継続しているがな。


 男の子の手を引っ張りながら、僕の口角は少しだけ上がっていた。胸に、妙な懐かしさが込み上げてきたからだ。


(僕は自分の記憶ですらあやふやだけど……この方法が真っ先に思いついた辺り、前世でもよくこうやって逃げていたのかもしれないな)


「じゃあ、君……って、なんだ、狼牙君か。なら安心だ」


 どうやら三馬鹿に絡まれていたのは、狼牙くんだったらしい。僕と同じクラスにいる、前髪で目を隠した、いつも自信なさげな男の子だ。


 ちなみに、狼牙君はドレスよりスニーカーの攻略対象の一人だったりする。


 あの三馬鹿と、狼牙君と、もう一人が「ドレスよりスニーカー」のメインヒーローだ。


 もう一人に関しては転校生枠なので、会えるのはおそらく高校生になってからだろう。


「ごめんね」


 手を引いて走っていると、突然狼牙くんが謝ってきた。


「なんで謝るの?」


「とにかく、ごめん」


「……まあいいや。狼牙君!もし三馬鹿どもが虫を投げてきたら、僕を守ってね!僕、本当に虫が無理だから」


 狼牙君になら、安心して守られる。


 かなも僕も、狼牙君のことを密かに買っているからな。


「う、うん。分かった……?」


 狼牙君の前髪からチラリと覗いたダークグレーの瞳が、自信なさげに揺れる。


 それでも、狼牙君は動いてくれた。周りを見渡し、三馬鹿たちに壁になるような立ち位置に移動した。


 瞳に困惑の色を写しながらも、精一杯僕を守ろうとしてくれているのが、嬉しい。



 ……あ、しまった。遅れて、狼牙君がなんで困惑しているか、今分かった。


 かなっていつも一人称が「私」だったんだ。それを狼牙君は知ってるから、違和感を感じたんだろう。


 もう仕方ないから、かなに上手く誤魔化してもらおう。


(後ろから聞こえてくる足音からするに、敵は三方向に分かれて僕たちを追い詰めるつもりだ)


 さて、どうするか……


 うん、やっぱり僕には、情けない方法しか思いつかないみたいだ。


「狼牙君、ちょっとの間だけ、耳を塞いでいてくれる?」


「う、うん」


 わけも分からず、狼牙くんは僕の言うことを聞いて耳に手を当てた。


 それを横目で確認した僕は、大きく息を吸って、胸をふくらませ……


「せんせー!!!!助けてー!!!!」


 力いっぱい、叫んだ。


 流石はかなだ。かなの身体は楽器みたいに音がよく響く。


 これで、先生方にも僕たちがピンチなのは伝わったはず。


 僕の思惑通り、周りの大人たちがバタバタと動き出した。三馬鹿どもの「やべっ!逃げろ!」という声も耳に捉えた。


 作戦成功。困った時は大人に頼る。やっぱりこれに限るね。



 僕たち二人は、飛び込むように花壇の裏の茂みに隠れた。


 ……うん、もう完全に大丈夫だな。


 そこでようやく、身体に入っていた力が抜け――いつものように、かなが表に出て、僕は心の奥に引っ込んだのだった。



 少し息を整えたのち、かなは狼牙くんに向かって語りかける。


「はあー、助かった……ほんと、ジャップはホントファッキン陰キャばっかだな」


「?????」


 かな!?どこでそんな言葉覚えた!?


 ただ、そのやさぐれたような言い方……どこかで聞き覚えがあるような……


 その直後のことだ。


 僕の脳内で、流れ込むように「ある人物」の記憶が蘇ってきた。


 遅れて、どうやってかながそんな汚い言葉を覚えたのか、全て繋がっていく。


(そうだった……これ、僕の前世のお姉ちゃんがよく言っていた言葉だ。そうか、忘れていた()()の記憶を、かなが掘り起こしたんだ)


 僕の長女はなんというか、こう……言い方をマイルドにすると、とにかくマイペースで、独自の哲学を持つ人だった。


『九割の人間が、自分の能力ですらうまく発揮できない能無しばっか。だから、私がプレイヤーとしてコマ共を導いてやらなければいけないんだよ』

『私が産まれて最初に話した言葉は、ママやパパなんかではなく、天上天下唯我独尊だ』

『いいか?弟よ。ルールは守るものじゃない。自ら作り出すものだ』


 ああ……懐かしい。お姉ちゃんが言っていた言葉の数々が、今なら鮮明に思い出せる。


 有能な社長としてバリバリ働く一方、ダメな男に何度も引っかかり、私生活はてんで上手く行かない。


 大酒飲みで、家事が全くできなくて、自分にも他人にも厳しい。

 

 そんなお姉ちゃんが僕は大好きだったけれど……子供にはちょっと刺激の強い人でもある。


 僕としては、あんまり幼い女の子(かな)に影響を与えないでほしい気持ちもあるが……まあ、もうそれは後の祭りか。どうやらすでに長女の言葉遣い、考え方が移っているみたいだしね。



 狼牙くんとちょっとだけお話をしたのち、三馬鹿どもが捕まった声が聞こえたので、茂みから出る。


 それからは、全てが上手く回った。


 先生方に事の顛末が伝わり、三馬鹿はかなり強めに怒られ……トドメとばかりに、ゆりから「かなを出来損ない扱いしたの、絶対に許せない」と本気で怒られたことで、三人は相当落ち込んでいた。


 お姉様だけでなく、いつも優しげでほんわかした雰囲気を持つ、僕たちのクラスのみどり先生まで、


「いつもは家での厳しい教育の息抜きになればと優しくしていましたが……今回ばかりは親に連絡させてもらいます」


 おそらくみどり先生は、怒るのにかなりエネルギーを使う人だ。それなのに、かなり本気で怒ってくれたのが、なんだか嬉しかった。



感想、ツッコミ等、じゃんじゃんお待ちしています。


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