02-43.発展の原動力
組織化ってことはリーダーが必要だよね?
「事実上のトップは巫女の二人よ」
私物化する気満々だね。
「そりゃそうでしょうよ」
元々そのつもりだもんね。
「巫女二人を立てる大人が必要ね」
崇め奉ってもらわないとね。巫女を神の代理人としてありがたがってもらわないとだ。
実際には代理の代理なんだけど、そこは明かすつもりもないし。
「リーダーの役割はその人に担ってもらいましょう」
つまり「教主」を決めるんだね。
「その通りよ」
けどいっそ、巫女二人を実務のトップにもしちゃうんじゃダメなの? 卑弥呼みたいにさ。あくまで大人のリーダーにはその補佐を頼んでさ。卑弥呼の弟みたいに。
「それは無理よ。あの二人はあくまで部外者ですもの。たとえ二人の方が先にいたからって、村人たちからしたら納得できるものではないのよ」
それ言い出したら誰がリーダーになっても納得なんて出来ないんじゃない? だって村はいくつもあったんだから。そっから掻き集めてきた人達なんだし。
「それはそうよ。私たちが考えるべきは、いかにその衝突を和らげるかってことよ。そんな事で争っている余裕は無いと知らしめるのよ」
なるへそ。
「先ず村長達を集めましょう。巫女から話をさせましょう」
持ち回りにするの?
「いいえ。頻繁には変えないわ。言い換えれば敢えて任期は定めない。教主は村長たちの中から一人を決めてもらうわ。村長たち自身によ。そして村長は各村毎に決めてもらうわ」
どっかで聞いたことのある政治体制だね。
「倣いましょう」
意図的なんだね。けどいいの? 結局村毎の仲は纏まらないんじゃない? どころか対立が激しくならない?
「そうしない為に村長達が話し合うのよ」
みんな納得するかなぁ?
「するまで話し合うのよ。選任が済むまで解放しないわ」
根比べだ。
「まさしくね」
「その為には会場が必要ですね♪」
「大掛かりな仕事になるわね」
「礼拝堂を作りましょう♪」
「村人たちも参加させましょう。彼らにとっても重要なものであるのだと印象付けましょう」
「けれどあまり時間はかけられません」
そもそもいいの? 王都の人達を迎える前に教主を決めちゃっても。
「構わないわ。任期は無いけど入れ替えがないわけじゃないの。務まらなければ降りてもらいましょう。それでも少しは長引かせるわ。彼らにも新入りであると自覚してもらわなければならないから」
「ですね♪」
この辺は既にキスイと未来ちゃんでも話し合ってたのか。
「でないとまたリーリャさんに叱られてしまうもの」
そういえばあったね。そんな事も。
「節度を守って楽しみましょう♪」
未来ちゃんはもっと楽しんで。私の勉強ばっかりじゃなくてさ。
「自制心がありすぎるのも考えものよね」
「ダメですよ! 綺透さん! 今は影裡さんに抱きつかないでください! 話しがまた中断されてしまいます!」
「はいはい。それで礼拝堂の件だけど」
どうやって作るの? 村の人達総出でやったって、手作業じゃどうしても時間がかかるでしょう? ましてや特別な意味を持たせる建物なら、相応の規模にしないとだし。
「いいえ。最初は敢えてシンプルに済ませるわ。なんなら箱だけでも構わない」
どういうこっちゃ。
「村の規模に応じて何度も建て替えさせるのよ。最終的にはあの遺跡のものを越えるサイズにまで作り変えましょう。けれどそれは人が集まってからの話しよ。今は簡易的なもので構わないわ。家具の類もアリシアさんのスキル頼みで済ませましょう」
なるほど。敢えて繰り返させる事で認識を上書きし続けるんだね。
「その通りよ。一度では浸透しきれずとも、何度も繰り返し成長することで彼らの中にも強く根付く筈よ」
ふむふむ。
「もちろん私たちも手伝うわ。そう時間は掛からないでしょう」
「問題ありません♪」
未来ちゃんのお墨付きも出た。
「ならば話を進めましょう。皆もそれでいいかしら?」
「「「「「「「「異議無し!」」」」」」」」
満場一致だ。なら次は具体的な手段とスケジュールだね。
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計画を定めた私たちは、早速村人たちと共に礼拝堂の建造に着手した。彼らには料理を振る舞う代わりに作業に専念してもらうことにした。今回も少量の調味料付きだ。村人たちはそれでも十分に喜んでくれた。
この調子で村の発展にも興味を持ってもらえるとありがたい。ただ生きる為に木の実を拾うだけの毎日では進歩がないからね。せめて狩猟だけでも覚えてもらわないとだ。それだって前向きな原動力になる筈だ。武器を持つ事にはもちろん危険もあるけれど、道具の発明は人間の進化に欠かせないものだからね。
その辺り、栄養満点のファンタジー木の実がかえって足を引っ張ってしまっているのだ。この世界の住人は木の実を齧っているだけで生きていけてしまうんだもの。食文化があまり発展していないのも当然だ。味だって美味しいし。それでも普通は飽きるものだとは思うけど。だからって別の味を知らなければ考えようもないことか。
神様にとっても苦肉の策だったのかもしれないけれど、偏った食生活は改善すべきだ。それには狩猟技術だけでなく、調味料の発明も必要になるだろう。実はいくつかの試作品も既に作ってある。とはいえこれは、キスイとリーリャのスキルで特定の成分だけを抽出して生み出したものだ。私たちにしか作れないものだ。それにまだまだ種類も足りていない。いずれはこの世界の人々の手で発展開発を行ってもらわなければならない。せめて引き継げるような形に持っていかないとだ。
やはりやる事はまだまだ多い。私たちの真の目的は元の世界への帰還だ。それが本当に可能なのかはわからない。けれど、女神様は変わらず私たちを気に掛けてくれている。きっと約束は果たしてくれる筈だ。そう信じて頑張ろう。




