01-42普通の……
「……ごめん」
いいよ。さくちゃん。
「会議中断させちゃった……」
大丈夫。皆も気にしてないよ。
「……カゲリちゃんは、さ」
なぁに?
「……家族に会いたい?」
え? まあ。うん。そうだね。会えるといいね。
「……カゲリちゃんママは、っ!?」
石クナイが飛んできた。今回はメモ無しだ。それでも警告で間違いないようだ。少なくともさくちゃんはそう受け取った。
「……ごめん」
私はいったい何を謝られたんだろう? 私は何かを忘れているのだろうか。
「……ごめん、なさい」
あかん。また泣き出しちゃった。
「(ナデナデ)」
さくちゃんも限界だったのだろう。本当は皆そうなんだ。元々寮暮らしで疎遠だったとはいえ、家族とはもう二度と会えないかもしれないなんて言われれば悲しみもするものだ。
「……なんで他人事なの?」
え?
「そんな筈無いのに……」
さくちゃん?
「……」
さくちゃんは再び口を閉ざして啜り泣いた。
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さくちゃんは泣いている内に眠ってしまった。皆とは少し離れているけれど、たまには二人だけで寝るのも悪くはない。でももう少しだけ考え事を続けよう。考えるべき事はいっぱいあるからね。
本当は私達が帰れる可能性なんて殆ど無いのかもしれない。だから女神様も言葉を濁していたのだろう。女神様は条件なんて提示してはいなかったけど、そう簡単に帰してくれるわけでもないのだろう。望みを叶えてもらうには対価が必要だ。遠回しにそう示された。私達はこの世界で女神様の期待に応えるしかない。
けれどその道程はあまりに遠い。皆仲良く世界平和なんて私達が生きている内に実現出来るものなのだろうか。
私達がただ自分の都合だけを考えて動くなら、密かに王様を排除するのが一番手っ取り早いのかもしれない。或いは王様を魅了スキルで支配下に置くかだ。それだけで全てが綺麗にひっくり返るわけではないけど、同じ事を繰り返していけばいずれは王国を掌握出来るのかもしれない。
女神様は私達がそうすると思ってスキルを選んだのだろうか。私達は手段なんて選んでいる場合ではないのだろうか。
わからない。私達は何を選ぶべきなのだろう。私達のよく知る人としての正しさは本当に必要なものなのだろうか。この世界の常識が大きく異なっているのは間違いない。私達には覚悟が足りていないのかもしれない。全てを放り出してでも望む未来を掴み取る覚悟が必要なのかもしれない。
「似合わぬよ。影裡殿にそんな考えは」
武士道ちゃん。起こしちゃった?
「いいや」
武士道ちゃんは私の隣に腰を下ろした。
「少し考え事をしていた」
そっか。
「皆が影裡殿を頼っている」
え? 突然どうしたの? そんなわけないじゃん。
「影裡殿の精神は驚く程に安定している。それが皆に安心感を与えているのだ」
そうなの? 私は薄情なだけだよ?
「そんな筈があるものか。多少親切にされた程度であれだけの好意を抱けるのだ。影裡殿の心根は真っ直ぐで純粋だ」
それは皆が凄いだけでしょ。皆が人から好かれる才能に溢れてるからだよ。私は普通だよ。普通に優しい皆を好きになっただけだよ。
「影裡殿の普通は我々の思うものと少し違うのかもしれん」
チョロいってこと?
「ふふ。そこは逆かもしれんな」
じゃあ皆が? 私が皆を好きになったから皆も私を好きになってくれたの?
「そういうものだよ。普通というのは」
つまり皆は好きでもない相手に優しく出来るんだね。私からしたらそっちの方がずっと凄い事だと思うよ。
「……なるほど。ふふ。ふふふ。くふっ」
めっちゃ笑い堪えるじゃん。さくちゃんなら心配要らないよ。一度寝たらそうそう起きないから。
「……いや、失敬」
すんってなった。
「精神修養は武術の基礎だ。造作もない」
なるほど。流石武士道ちゃん。頼りになるなぁ~。
「光栄だ」
大袈裟だよ。
「恋人の言葉が信じられんのか?」
うん? 恋人?
「ハーレムに加えてくれたではないか。今更取り消しは認めんよ」
え゛? ……え?
「さて。そろそろ眠るとしよう。おやすみ。影裡殿」
……行っちゃった。
え? 今の本気? まさかね? 違うよね? からかわれただけだよね? 武士道ちゃんも冗談とか言うんだね。あ~びっくりした。さくちゃんが寝てて良かった。起きてたらまた大騒ぎしてたかもだし。
よし。私も寝よう。おやすみ、さくちゃん。大好きだよ。ちゅっ♪
「………………………………バカ」




