エピローグ 「序列学園都市リュミエール」
――世界に、完全な秩序など存在しない。
だが、それを信じようとした者たちがいた。
《リュミエール》。
それは、人間の“価値”を数値で管理するために築かれた、巨大な学園都市。
都市の空には無数の光が浮かび、ドローンが網目のように行き交う。
すべての建造物は直線とガラスで構成され、
機械の眼が常に人間の一挙手一投足を見つめていた。
中心にそびえるのは、塔のような学園――《アカデミア・ルミア》。
学園都市の全てを統べるAI、《System:∞》がその中枢を担う。
生徒たちの行動、成績、発言、感情。
その一つひとつが監視され、数値化され、
“序列”という名の数字に変換されていく。
この学園での序列は、単なる成績表ではない。
寮での待遇、使える施設、発言権、交友関係、
――そして未来までもが、その数字によって決められる。
上位に立つ者には自由と特権が与えられ、
下位に沈む者は、見えない枷に縛られる。
それが、この都市の“公平”であり“正義”だった。
街の人々はそれを疑わない。
なぜなら、System:∞はこう告げていたからだ。
> 『序列は秩序。秩序は希望である。』
――だが、希望とは誰のものだろう。
この春。
一人の少年が、その閉ざされた学園都市に足を踏み入れる。
名を、天城蒼。
特別な才能もなく、誰にも知られず、
ただ“新入生の一人”としてこの都市に入学した少年。
彼がまだ知らぬのは、
ここが「未来を学ぶ場所」ではなく――
「未来を選別する場所」だということだった。




