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爆槍!アルス・マグナ  作者: 七緒木導
第六章 マグナ、森に行く
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第137話

 一方、ロウディは森の中から赤沼の方へと戻る最中だった。

「痛ててて……」

 ロウディは体を引き摺りながら歩く。

 全身が傷だらけだった。

 殴打された時の肩から脇に掛けての打撲痕に森の枝葉に落とされた時の引っかき傷、地面の上に落ちた時の足首の捻挫。

 幸い致命傷は免れた。

 地縛竜の横っ面で殴り飛ばされたにも関わらず、むしろこの程度の傷で済んだのは奇跡と言って良かった。

 これも風魔法の加護が残っていてくれていたのと元来からの強靭な肉体のお陰だ。

「それでも痛えな……」

 今はもう戦えそうにない。

 直ぐにパーティに戻ってスフィーリアに治癒魔法を掛けて貰い所だが、彼女達は生きていてくれるだろうか……。

 あれから爆発が三度あった事は知っている。

 その爆発の意味をロウディはまだ知らない。

「お願いだ。皆、無事で居てくれ……」

 ロウディは祈りながら森の中を進む。

 そして赤沼に辿り着いた途端、そこにある光景を目の当たりにして息を呑んだ。 

 赤沼の中央で首と右脚を失った地縛竜の死体が浮かんでいたのだ。

 死体は完全に生気を失い動く気配は無い。

 そしてそのすぐ傍の水面でマグナ・グライプが浮かんでいるのを発見した。

 マグナは気を失っていた。

 髪も元の黒髪に戻っていた。

「こいつがやったのか……」

 ロウディは唖然としたままつぶやく。

 もしかしたらエリッサとスフィーリアの魔法がぎりぎり間に合ったのかもしれない。

 それでも奴の力がこの戦いの帰趨を決したのは間違いはないはずだ。

 ロウディは痛いのを我慢しながら赤沼に入ると、ざぶざぶと水面を掻き分けながら浮かんでいるマグナの元に向かった。

「よっこらせ!」

 そしてマグナの体を抱き起すと脈と呼吸を確かめた。

「生きてるな……。おい、起きろ!」

 ロウディは二度、三度とマグナの頬を打った。

 しかしマグナは気を失ったまま。起きようとはしない。

「チッ、しゃーねぇなあ……」

 仕方なしにロウディはマグナを肩で担ぎ上げた。

 自分も怪我で体中が痛む所だが、今は我慢するしかない。

「ポーターが担がれて帰っちゃ世話無ぇぜ……」

 ロウディは赤沼の泥の中を溜息を吐きながら歩く。

 ロウディが森の中でマグナを担ぐのはこれで二度目だ。

「だがこれでエリッサの言った事が本当だったって証明された訳だな……」

 それは認めざる得ない。ロウディもこの目ではっきりと見たのだ。

 あの地縛竜と互角に渡り合う人智を超えたあの力。

「さてこれからどうなる事やら……」

 一方でロウディの中で一抹の不安が残る。

 ロウディの中でマグナへの不信感は拭いきれていない。

 むしろ前より増大していた。

 何より、この少年の素性が依然として不明なままなのだ。

「もし地縛竜の眷属だったら……」

 それを思うと身の毛がよだつ。

 恐らく人の中でその力が解放されれば、自分達では……否、フラム村の戦力だけでは止めようがないはずだ。

「一層、この場で止めを刺した方が……」

 ロウディの中で黒い衝動が湧く。

 そして腰に下げていた短刀を無意識に抜いた。

 刀身が闇夜に晒される。

「あっ、二人が居たニャ! ロウディ~!」

 だがその直後、ミャールの声が聞こえた。

 マグナを背負ったロウディを見つけたのだ。

 その瞬間、ロウディは短剣を慌てて鞘の中に収め直した。

 程なくしてロウディもマグナを背負ったままエリッサ達の元へと合流した。

「良かったニャ。皆、無事で本当に良かったニャ!」

 二人の無事な姿を前にミャールは歓喜する。

「よかった、本当にあなたが無事で居てくれて、ロウディ……」

「ああ、マグナ……生きていてくれたのですね……」

 エリッサとスフィーリアもロウディとマグナの顔を見て涙を流す。

 だが二人とも霊力をすっかり宝玉に吸い取られ全身ふらふらだった。

 それでも彼等が近付くと力の出ない両腕で懸命に抱き締め、互いの無事を確かめ合った。

 そんな彼女達を見て先ほどまで心に帯びていたロウディの殺意は萎えていく。

 確かにマグナは危険な存在だった。

 しかしここで奴を殺せば間違いなくこの二人を悲しませる事になる。

 仲間として彼女達の悲しむ姿は見たくない。

 それに地縛竜を奴が倒したのは確かだった。

 そんな功労者を個人的な疑念だけで殺そうというのも冒険者の美学に反した行為ではないか。

 しかも奴は気を失っている。

 寝込みを襲うのは人狼族の剣士として一族の誇りが許さない。

 奴を倒すならば、その正体を白昼の下に曝したその瞬間だ。

 そうでなければならない。

 ロウディが静かにつぶやく。

「ならば、もう少しだけ見届けてみるか……」

 彼は自身の中に潜む誇りと美学に従う事に決めた。


作者より

今まで、私の稚作にお付き合い下さった大勢の皆様、この場を借りてお礼申し上げます。

ありがとうございました。

誠に勝手ですが本作はこれを一区切りとし一旦、休載とさせて頂きます。

現在、再開のめどは正直なところ未定となっております。

大変申し訳ございません。

ですが続編は執筆中なのでまた皆さまと再会出来る日を目指して頑張っていこうと思います。

では皆様、お元気で……

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