第31話 海流
宇宙エレベーター【高坂】まであと三日。
艦内は慌ただしい空気で包まれていた。
「民間機じゃないんだな!」
「敵艦隊です!」
松平が叫び、怒号が帰ってくる。
レーダーにいくつもの赤い点が浮かび上がる。
こちらは一隻に対して敵は少なくとも五隻確認した。
「敵はカタストロフ級と確認、砲撃を確認!」
「俺を出せ」
「だが、あんたのAnDは地上戦用じゃないぞ! やれるのか!?」
俺の提案に、怪訝な顔で見る松平。
「ああ。スワローの力見せてやる」
そう言い終えると、俺は甲板に設置されたスワローに乗り込む。
複胴艦であるこの機には大量のミサイルが積んである。だが、そのミサイルの発射管を塞いでいたのではただのお荷物だ。
この艦には前方と後方にミサイル発射管がある。その後方部をスワローが乗っていることで使えない。
なら、スワローに乗り込み、神経接続を行うと、俺はバーニアをふかし、敵艦へと向かう。
ジェットパックを装備したAnDにとってはたやすいこと。
高周波ブレード・アガツガリを引き抜くと、艦隊へと突っ込む。
アガツガリで艦一隻を切り飛ばすと、次に隣の艦へと飛び立つ。
――いける。
慌てて転進する艦にとりつき、敵の機銃を浴びながら、アガツガリで艦橋を切り落とす。
二隻目。
するとミサイルの撃ち合いが始まり、空中で飛散するミサイル群。
俺はアガツガリを投擲して、三隻目を撃破すると、ハンドガンを撃ち放つ。
内臓された徹甲榴弾が電磁誘導により発射され、一隻の艦に突き刺さり、爆発的に広がり、爆煙を上げる。
その瞬間、海から何かが光り輝く。
「あの赤い色は……!」
『ご存じじゃないか!』
襲ってくる赤い機体。
「実莉! どうして!?」
『わたしは悪を滅ぼすだけよ。あなたもそちら側なら、戦うわ!』
脚部を潜水艇ように改造したAnDで襲いかかる実莉。
「そうまでして、なぜ戦う!」
『人が人を管理しようなどと、そんな時代は西暦で終わりにしたはず。にも関わらず、我々は未だに争っている。それはおかしなことよ』
分からない。分かりたくない。
俺たちがいいようにこき使われているなど。
「今にもテロリストが言いそうなことだな。争いがなくならないから、力が必要になる」
『最初から、話し合う舌も持たずに、ね』
ミサイルをシールドで受け止めると、爆破の中から飛び出す敵機。
実莉のAnDが肉迫し、機体をぶつけ合う。
衝撃で破損したシールドを振り回し、実莉を威嚇する。
徐々に沈んでいく敵艦。その上で繰り広げられる戦闘。
まずい。このままじゃ、艦に帰れなくなる。
ブースターをふかし、飛び立とうとする。そこで沈黙したはずの敵艦がミサイルを発射する。
「しまった!」
ミサイルが背中のジェットパック一基に被弾する。赤い爆煙とともに誘爆を起こす。
すぐに分離して被害を最小限に抑えたものの、飛び上がる力が弱く、艦には戻れずに水面に叩きつけられる。
『これで終わりよ! 内藤祐二』
叫ぶように言う実莉。
実莉のAnDが体当たりを食らわせ、その水力を得た俺のAnDは海流に流される。
「実莉。俺たちは戦う理由があるのか?」
『何をいまさら、お姉ちゃんを殺した組織に加担したものなど!』
苛立ちを露わにする実莉。
その隙を狙い、もう一本のアガツガリを敵AnDに突き刺す。
『くっ。このままでは……』
ジェットパックを全開にふかし、敵機の動きを制する。
相手もバーニアをふかし、抵抗して見せる。
「くそ。なにを!」
『わたしにだって!』
聞こえてくる声はティアラとそっくりだった。
そういえば、ティアラには妹がいた。
「まさか、お前! ティアラの妹か!?」
驚きの声を上げると、実莉は押し黙る。
すさまじい衝撃を受け、俺と実莉は海流に流されていく。
「スワローを見失った、だと……!」
松平が冷や汗を流しながら報告を受ける。




