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第11話 禁止

 トリニティのやり口はひどかった。

 武装を放棄して敗北をした相手にも容赦のないタックルを食らわせた、と。

 独自で作った超振動モーターを搭載したブレードナイトと呼ばれる接近戦用の武器。

 だが、規約違反になり、没収された。

 それで切り刻まれたAnDが戻ることはない。それにナーブ・コネクトを行っていた生徒は激痛で一時、気絶したとのこと。

 非情無情。

 悪質なタックル行為も見受けられるとのこと。

 そんなトリニティとの試合が明日行われると聞き届けたのは午後になってからだ。


「作戦はどうする?」

 熊野が問い、俺と火月が静かに頷く。

「って、言ってもなー。敵やるき満々じゃねーか。作戦の意味あんのかよ?」

 乱暴な物言いだが、火月の言っていることは分かる。今回の戦い、作戦を立ててもしょうがないと思った。

「俺も同意見だ」

「うへ。てめーと同じとかきょしょいわ」

 火月が自分の腕を触り、大仰に身をすくめる。

「お前らが一緒なのは珍しいな。内藤。どういう意味だ?」

「俺の反応速度で奴のタックルを利用する。それくらいしか作戦が立てられない」

 熊野が訝しげに目を向けてきたが、すぐに目を伏せる。

「そう、だな。確かに今回は作戦がうまく立案できない」

 熊野が苦渋の選択をしたような顔をしている。

「奴らは大型シールドによるタックルを仕掛けてくる。狙撃は難しいだろう。装備を変えるぞ、火月」

「い・や・だ・ね。おれはスナイパーライフルで応戦する」

 猛反発する火月。熊野の言葉に過剰に反応する火月。

「なら単縦陣でいくか」

「けっ。てめーの尻なんて追いかけたくないってーの」

 火月のこの言動だ。どうやっても作戦を立てられないだろう。

「単縦陣で行くぞ」

 熊野が渋々提案に乗る。陰りのある顔を見せるがコホンと咳払いをする。

「へいへーい」

 あんまり分かっていない様子で首を振る火月。


 試合開始まで一時間を切った。

 整備しているAnDを見やるが、どこにも異常はない。

「玄覺。どうだ?」

「問題なし。これで負けたら承知しないからな!」

 がはははと大笑いを浮かべる玄覺。俺の無理難題に答えてくれるのは彼だけだ。

 乗り込むと、今度はエンジニアの虹織にじおりが対応する。

「内藤さんの動きからAIの解析によると、足の機能と腰の動きが機敏になっています。逆に言えば、そこが弱点で一試合だけでもすぐに摩耗してしまいます」

 説明を受け、続けて話をする虹織。

「なるほど。腰の可動部と足の構造を見直す必要がある、か……」

 俺は独りごちると、虹織の顔がぱあっと明るくなる。

「そうなんです! だからハード面での強化が必要になってきます。これは工場に持っていかないと無理ですが、今はとりあえずソフト面でのサポートが可能なのです!」

 鼻息荒く、説明を続ける虹織。

 整備を終えて、俺と火月、熊野が戦闘空域に向かって飛翔する。

 座標を固定すると、敵チームも座標を固定する。

『いよいよだな』

 熊野のごくりと生唾を呑み込む音が耳朶を打つ。

《試合開始!》

 その合図とともに三機とも単縦陣で突っ込んでくるトリニティ。

 俺たちは火月の前に立ち、火月のスナイパーライフルの射線から外れる。

『うは! やっちゃうぜー!』

 テンションの上がった火月が隙間から銃弾を撃ち放つ。

 トリニティはそれでも立ち止まらずに突っ込んでくる。

 前の一機が火月の猛攻を浴び、倒れた。だが――、

「ゾンビアタック!?」

『そんなバカな!?』

 俺と熊野の、驚きの声が無線に広がる。

 ゾンビアタック。

 サバイバルゲームなどでは、忌み嫌われる行為。通常、ダメージを受けた人がすぐに戦闘空域から出ていくのだが、ダメージを受けたことを無視し、戦闘を行うこと。

 死んだはずの者が戦う――だからゾンビアタックと呼ばれる。

 もちろんASGにおいても禁止行為にされている。

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