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事業拡大。 その3

 ミッツはマリルに現状を話す。

 何か対策を打たねば、ダンジョンエナジー枯渇が目の前と。


「本日、先輩から言われた通り半数以上の一般人に手を出さなかったのですが、あんなことをせず、全員からダンジョンエナジーを回収させてもらえば宜しいのではないでしょうか?」

「マリル……おまえ、さらっと怖いこと言うな」

「あ、いえ、決して皆殺しにすることに抵抗がないわけではないですよ。しかし、姫さまを守るためならば、人殺しも致し方ないかと」

「そういう意味じゃ無いんだなぁ」

「では、どういう……」

「絶対に死ぬ。それだと、損しかしない一般人が出て来る」

「なんと! 先輩は本当に慈善的な考えで、一般人をダンジョンに誘っていたのですか」

「違う、違う。損しかしないとなれば、ダンジョンに来る意味がなくなってしまうだろ?」

「そうですか?」

「そうだと思うぞ。もし違ったとしても、そんな博打を打つ気はない」


 納得してないマリルに、しみじみといった感じで言い含める。

 キャッシュバックや本体一括ゼロ円などと言う、安易な値下げキャンペーンに慣れた客が、キャンペーンの終了と同時に以前以上に来なくなるということを何度も経験しているミッツとしては、お金の稼ぎやすさで集まっている一般人は同じことになると危惧しているのだ。

 現状、一般人からのダンジョンエナジーは最低限稼がねばならないダンジョンエナジーの半分近くを占めている。

 それを失うかもしれないリスクなんて、冒せるはずもない。


「だけど、マリルの提案も、そうだな……。どうしようもなくなったら、最後の手段として実行しなくてはいけない。マリルがその選択肢を持っていてくれてよかったよ」


 否定はするが、フォローもする。

 褒められて、認められてやる気をださない人間――今はモンスターになっているが――なんていないはず。

 今朝方までは敵視していたマリルだが、今はミッツの仕事仲間となったのだから、それくらいの気を回すことも吝かではない。

 決して、正体が少女だったと分かったから優しくなったという訳ではないのだ。

 だから、ちらちらと顔を盗み見ているのも恐らく気のせいなのだろう。

 そして内心、『畜生……なんで、男だと思い込んでいたんだよ。よく見たら可愛いじゃないか。女子高生と同じ年齢だが、とてもそうは見えん。目力が強いからか、大人っぽく感じる。こう……芯が強そうなのも、嫌いじゃない』と考えているとしても、下心を持った優しさではない。

 少なくともミッツは、そう自分に言い訳している。


「一応俺にも考えがあってだな……。それで、こんな夜分にマリルを起こしてしまったんだが――」

「――大丈夫ですよ。何故だか眠くならないので起きていましたから」

「腹も減らないだろ?」

「そういえば……」

「気づいていなかったのかよ……」


 マリルのワーカーホリックっぷりに引いているミッツもまた、ワーカーホリックなのは言うまでもない。

 自分も普段から、下手すれば1日1食とかが当たり前だったくせに。


「それについては後で説明するとして、マリルに聞きたいことというのはだな――」


 このままでは話が先に進まないと、多少強引に本題へと切り込む。

 質問は、とてもシンプルだった。

 聞かれたマリルも、何故そんなことを聞かれるのかといった顔だ。


「『どのように、ダンジョンを決めていたか』ですか……。そうですね、参考になるか分かりませんが、自分の場合は“はじまりの魔王”を討伐した最初の勇者が、冒険譚で初めに潜ったとされているダンジョンに向かっていました」

「そこは人気があるのか?」

「皆一度は入りますが、何度も潜っているのは自分くらいではないでしょうか。なにせ、直立する狗(コボルト)しか出て来ませんから。手に入る品も、大して価値がありませんし」


 前置きする程度に参考にならないと分かっていたなら、話さなくても良い内容だった。

 だが、その中にもヒントがない訳ではなかったが、それはミッツの考えを裏付ける以上のものではなかった。

 ひとつは、ネームバリュー。

 知名度のあるダンジョンには、人が集まる。

 そしてもうひとつ。それは、そんなダンジョンだとしても、実利を提供出来なければすぐに見放されるということだ。

 そこには一般人と冒険者、更にいうならば、日本で相手にしていた客たちと何も違いはない。


 では、それを踏まえて【黒髪姫の薔薇のお城】に人を呼び込むためにはどうするか。

 ネームバリューに関しては、冒険者には現在マイナスだという他ない。

 すぐに上げる方法なんて見当もつかないので、手の施しようなんてない。


 それでは、実利の提供に関してはどうか。

 ネームバリュー、知名度を上げるのと比べれば、なんとか出来なくもない。

 一般人に提供するベネフィットは“より良い暮らし”。即ち“金”と、とてもシンプルだった。

 それと比べると、冒険者は少し複雑だ。

 一般人と同じく“良い暮らし”、もっというと“豪勢な暮らし”のために“金”が欲しいというのは同じ。

 しかし、その金額は桁違いに多い。

 だから、その金を安全に(・・・)稼ぐためには強くならなくてはいけない。

 そうなると、経験値や強い武具も必要となる。

 それだけではなく、引退後の生活や皆にちやほやされることを考えれば名声も欲しい。

 一般人と比べると、欲がとても大きくなっているのだ。

 そのどれもが、現在の【黒髪姫の薔薇のお城】では提供出来ていない。

 それは、以前の失敗で実証されている。


 だからといって、新しいモンスターの設置や宝箱の設置を行うダンジョンエナジーの余裕はない。

 宝箱の設置に関してだが、階層を増やし、ダンジョンのランクが上がったことで可能となった。

 宝物庫という機能も増えていて、そこにストックされたアイテムを振り分ける形だ。

 これは、ダンジョンにドロップされたアイテムが一定時間経過すると自動で取り込むという機能。

 なので、自然とアテムが溜まって行くのだが、今は当然の如く空。

 ランダムで一定時間ごとにアイテムを生成する能力もあるのだが、維持費が結構馬鹿にならない。

 ということで、宝箱は今の所使えそうにはない。


「さて、どうしたものか……」


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