雇用と土下座。 その5
ミッツは勃起した。
それはもう、ギンギンと。
だが、大きく硬くなった逸物は、金属の履物に阻まれ、ギチギチに押さえ込まれていた。
痛みで存在をミッツ本人に訴えるも、涼しい顔をして周りに、といっても姫とイケメン冒険者しかいないが、二人にバレないように耐える。
「見ふぁいで、ふだしゃい……」
必死に耐えているミッツに、勃起の原因となっているイケメン冒険者が儚げな声で追い討ちをかける。
何がどうなっているかというと、姫が呼び出した魔法陣から出てきた触手に、イケメン冒険者は全身を絡め取られたのだ。
それも、ただ絡め取られたのではない。
首元や、脇、肘膝の関節、腹部といった鎧の隙間に入り込んだ触手に、だらしなく開いて涎を垂らす口を弄ばれているのと同じような目に、鎧の下も遭わされているのだろう。
顔は真っ赤になっていて、時々口から短く「あっ……」と喘ぎが漏れる。
そんななりで、か細い声での懇願。
興奮するなという方が、無理がある。
それにイケメン冒険者は中性的な美形。
今までのことを考えなければ、十分にいける。
そこまで考えて、ミッツは自分の変質に気がついた。
同性でも大丈夫。
可愛ければそれで良い。
そう考えてしまった。
元より、同性同士の恋愛について、完全な否定論者ではない。
お互いの同意があれば、自由にしてくれて構わない。
ただ、自分は同性に欲情しないので、巻き込まないで放ってくれれば良いという考えだったのに、ここでまた新たな扉を開かれた。
ロリコンに続き、バイ。
このままここに居ると、これから共に働くこととなるイケメン冒険者を、そのような目で見てしまうことになりそうなので、ミッツは立ち去ることにした。
イケメン冒険者は、足音が離れて聞こえなくなると、大きな嬌声を上げ、体をびくびくと震わせた。
これまで声を押し殺していたのだが、それも限界だったらしい。
だが触手は、無機質に攻め続ける。
次第にイケメン冒険者の口から漏れる声も掠れ、小さくなり、聞こえなくなる。
白目を剥き、それでも痙攣させ続けられる身体。
この時イケメン冒険者は何を思っていたのだろう。
快楽か、苦難か。
それとも、その両方か。
因みに姫は、「息苦しそー、可愛いそうかも」と少しずれたことを考えていた。
階段を上がり地下1階に来たミッツは、深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとしていた。
しかし脳裏には、イケメン冒険者の痴態と、偶に漏れる喘ぎ声がこびりついていて、ちょっとやそっとで忘れられそうにない。
いっそ一度抜いて、スッキリしてしまえば楽になれただろうが、ダンジョン内はどこでも監視出来る。
見られるかもしれない中で堂々と行う。ミッツは二つの新しい扉を開いたが、そこにはまだ踏み出していなかったようだ。
なので、悶々としたまま待つ。
何もしないより気が紛れるのではと、1階に一般人を狩りに行くのも考えた。
だが、覚えたての中学生のように、何にも手に付きそうになかったので止めた。
そして待つこと数十分。
煩悩退散と呟き続けてようやく落ち着いて来たミッツに、近づく者が現れた。
それも、後ろから。
階段を上がってきて、それはミッツに声をかけた。
「先輩……お待たせ、しました」
その声は、恥ずかしさから俯いていてくぐもり、折角持ち直していたミッツの心を掻き立てる。
だが、そこはミッツ。笑顔を貼り付け、紳士の出で立ちで返事をする。
振り向いて見えた、俯き加減のイケメン冒険者の顔。それがとても可愛く感じても、ぐっと飲み込み、平然と。
「結構かかったな。お疲れさん」
「お疲れ……様です」
本当は、ぎゅっと抱きつきたい衝動を抑えて。
「こいつは同僚。男の同僚……」
「え? なんですか?」
「なんでもない。さ、姫のところに戻るか」
独り言ち、自分に強く言い聞かせて、イケメン冒険者の肩を叩く。
気軽い男同士のコミュニケーション。そんなつもりのそんな行動。
「ひゃ!」
「あ……、すまん」
過剰なイケメン冒険者の反応で、ミッツの手は所在がなくなり、脳裏にはまたあの情景が蘇った。
仕方なく、無言で二人は階段を降りる。
だが、階段を降りたところで、ミッツの浮ついた心に冷や水が浴びせられる。
「なんで!?」
そこには玉座がなく、勿論姫も居ない。何もないだだっ広い部屋になっていた。
イケメン冒険者は、その部屋に何も感じていないように、すたすたと進んで行く。
奥の階段を降りると、同じように何もない空間がもう一層。
そこを更に降りて、地下4階。そこに玉座と姫が待っていた。
「姫様、先輩をお連れしました」
「おかえりー」
姫とイケメン冒険者の自然な遣り取り。
それに追いていけていないのは、ミッツ一人。
「あの……。どうなっているのか、説明していただいてよろしいでしょうか?」




