イケメン、コロスベシ! その8
イケメン冒険者を吹き飛ばしたミッツは、続けざまにガントレットで覆われた拳で一般人を殴りつける。
偶然に綺麗に腰の入った右ストレートは、“大阪さん”の顔面を撃ち抜き命を奪う。
そのまま腕を後ろに振り抜くと、裏拳気味に男の首を折り。
少し離れた位置に立っていた最後の男には、距離を詰めようとした突進が距離を見誤り激突。
ぶつかった男は、車に撥ねられたような勢いで壁まで弾き飛ばさた。
イケメン冒険者の守りが無くなった一瞬で、ミッツは3人の一般人を死に至らしめたのだ。
「あ……」
そんなイケイケで飛ばしていたミッツ、痛恨のミスに気がついた。
「その声は!」
だが、気づいたところで後の祭り。
起き上がったイケメン冒険者は正体に気づき、驚きが漏れている。
「これはいったい……、どういうことですか!」
「……」
ミッツへの糾弾。
しかしミッツは黙して語らない。
この事態の収拾に思考を張り巡らし、普通の【引籠もる剣士】を貫き通す選択肢も捨てないため。――ではなく、テンパっていて反応出来なかった。
「なるほど……。何も語れないということですか。やはり、そうだったのですね……」
ぴしりと、イケメン冒険者はミッツを指差す。
ミッツの背筋に、冷たいものが滑り落ちる。
今すぐなんとかしないと。そう意味のないことを考えるくらいしか残されていない程、ミッツは追い込まれた。
彼我の戦力差から、命を奪おうにも難しい。それに、もし瞬殺が成ったとして、イケメン冒険者が復活しては意味がない。
であるならば、復活を阻止するため墓石をこのダンジョンに保管するというのか。
だが、その選択肢はミッツにはない。
殺し、殺されるのに慣れてしまってはいるが、それは生き返るのが前提だからだ。
生き返りを防ぐというのは、本当の殺人になってしまう。
流石に、その一線は超えられない。
「このダンジョンを、落ち延びた姫の騎士や戦士の発見と育成に利用しているのですね!」
「え?」
「先輩、姫様もここにいらっしゃるんですよね?! このダンジョンへの追跡者を警戒していたのですから、ここにいっらしゃると踏んでいるのですが……」
ミッツは思考が追いつかない。
正体がモンスターだとバレないように警戒していた。
もしバレてしまったら、集客は出来ないようになる。
そうなれば、日に日にダンジョンは痩せ細り、いずれは自然消滅。姫もミッツも消えて無くなる。
そう考え、ミッツは迅速に対処しようとしていたのだ。
それが、蓋を開けてみたら予想の斜め上。
暫く呆けたとしても、誰にも文句は言われないだろう。
それにしても、イケメン冒険者は残念だ。
一部言い当てているのに、全体像は完全にどこかの物語。
初遭遇のその日も、ミッツはこのイケメン冒険者をバカだと判断したが、それは間違いではなかった。
そうとなれば、以前と同じくイケメン冒険者の話に乗って、なんとか退場頂く。そのような結論をミッツが導き出したその時、事態は動く。
「姫様!?」




