月光 初出勤
「えっ…と、月光の拠点はここだよね?」
キウィタスは歪んでいるが、ほぼ円形の土地。月光は、キウィタスの南西の端で活動している。キウィタスがムンドゥスの中で一番栄えている都市と言っても、中央に行くほど、と付け加える必要がある。外側に行くほど治安も悪くなりモンストゥルムに被害も多い。
「インターホン……はないから、ノックしないと」
月光の拠点はすでに廃業したアパートを使っている。周辺にある建物よりは汚れが少ないが、それでもヒビ割れてところどころ壁が黒ずんでいる。
日菜は少しだけ錆びている扉を優しくノックした。だが、錆びているからか、金属だからか、ゴンゴンと大きい音が鳴ってしまう。
「はいはーい!あ、あなたが新人さん!?」
「は、はい!よろしくお願いします!」
扉を勢よく開けて飛び出してきたのは、額からツノが生えてる女性、『ルナ』だった。
日菜はルナにお辞儀すると、ルナは日菜の背中を押して中に入れた。
「お邪魔します………」
「お邪魔じゃないよ〜!みんな〜!新人の子来たよ!」
ルナが拠点全体に響き渡る大声でメンバーを呼ぶ。すると、目の前のソファから1人起き上がり、奥の椅子に座っていた1人が立ち上がり、隣の部屋から1人入って来た。
「おっ、話題の新人?俺はソラキ。よろしくな!」
「よろしくお願いします」
最初に話しかけて来たのは『ソラキ』。背中に弓を背負っており、首には黄色のバンダナを巻いている。
「へ〜、私はマイ。よろしく」
「よろしくお願いしますっ」
ソファから起きがった少女は『マイ』。ルナと同じでツノが生えており、まだ小学生ぐらいの体型だ。それに対して、日菜は驚きながらも挨拶した。
「俺はユヅキだ。月光のリーダーをしている」
「香日菜です!よろしくお願いします」
奥から出て来たのは身長が180センチはありそうな大柄な男性『ユヅキ』。褐色の肌で、腕に何個か古傷が残っている。
「これが月光のメンバーだよ!何かあったら遠慮なく聞いてね!」
「おいおいルナ。そんなに明るいと逆に萎縮しちまうぞ」
「ソラキだっていつもそうじゃん!」
何やら2人の口喧嘩が始まった。マイとユヅキは呆れながら傍観しており、2人に挟まれている日菜は何が何だかわからなくなっている。
(これは………、どうしたらいいの?)
「お前ら、香が困惑してるぞ」
「あっ、ごめんね〜!」
「ごめんな」
日菜のことに気づいた2人が謝りながら、日菜の頭を撫でてきた。それに日菜は余計に訳がわからなくなっている。
(えっ、これは本当にどうしたらいいの?)
「それもやめろ」
(ユヅキさん、ありがとうございます!)
ユヅキが2人を日菜から引き剥がす。ルナとソラキは、ユヅキにつかまれ宙に浮いている状態になってしまった。
「そういえば、香ちゃんは今年、1人だけの合格者なんだよね?」
「あ、はい。まだ信じられません………」
「大丈夫大丈夫!私も最初そうだから!」
少し俯いた日菜に、ルナは背中をバシバシと叩いて励ます。明るいルナに日菜は先ほどよりも明るい表情になり、それを見たルナもさらに明るくなる。
「リーーダーー!今日は任務ないんだよね!」
「あぁ」
「よしっ!なら香ちゃんの歓迎会だ!」
歓迎会という言葉を聞いた瞬間、ソラキとマイがお酒や食べ物を取り出した。その後はすぐに机の上に準備され、歓迎会が始まったが、日菜はルナとソラキが楽しんでいたという印象しか残ってなかった。




