愛と殺しの狂想曲
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僕が担いだのは一般的にスナイパーライフルと呼ばれるもの。上部にスコープがついているものといえば大体わかってくれるだろうか。
「重っ。」
合成樹脂と金属の塊は見た目通りの重さで、持つ人の肩を容赦なく壊しにかかる。決して僕の肩が弱い訳ではない。十キロにも満たないはずなのだが、これが命の重み。
命中精度の方はこの際どうでもいい。どうせ能力で補正をかけるのだから。
サイズが合う弾丸をいくつかポケットに放り込む。こんなことをしてはいけないことはわかっている。でも生憎、ケースなどは持ち合わせていない。
「あれを使えば……」
あれは確か音楽室にあったはずだ。手間はかかるが怪しまれないようにすることの方が優先順位は上だ。ライフルを担いだ中学生がいたらよくも悪くも目立ってしまうのだから仕方ない。
という訳で今いるのは中学校側の一階、昇降口付近の音楽室である。アリーナから遠くはないのだが、近いとも言えない距離。ちなみにあれというのはギター用のケースのことだ。
「外に出すのは良心が痛むけど……」
学校の備品であるエレキギターをグランドピアノの上に置く。新品の弦は既にチューニングを終えたあとらしい。素人にはよくわからないのだが。
空いたスペースに詰め込まれる狙撃銃。長さ的に少し怖かったが、なんとか入れることができた。黒い布製のケースのファスナーを閉める。
うん? はみ出してる? 気のせいでしょう。
めっちゃ銃口見えてる? 知りません。
要は運べればいいのさ。はみ出ていようが関係ない。軽音楽部のように見えなくもない姿が窓に映る。不審者に見えなくはないが、そのまま銃を担いでいるよりはずっとましだ。そのまま僕は外に出る。
「バリケード、お願いします。」
「彼女さんはもう行っちゃったよ。」
呆れ顔の女子生徒。入った時と違う人のようだ。シフト制はちゃんと働いているらしい。
「どっちに?」
彼女は寮の方を指差す。茗荷谷ではなく後楽園側ということがわかっただけ収穫としよう。感謝の言葉も忘れて学校の敷地を飛び出す。
「怖くなんてない。僕は、東葛支部最強なんだ。恐怖なんて感じてない。」
言葉とは裏腹に僕の手は震えているようだ。既に膝は笑いそうになっている。目には涙が浮かび上がっていて、今にも決壊してしまいそうだ。
それでも僕は走る。彼女のもとに向かう僕の足に迷いはなく、逃げるという選択肢はこの時点で完全に消滅していた。
銃声はまだ鳴ってはいない。時計が指し示す時刻は午前九時半。予想時刻までまだ四十五分くらい残っている。
彼女がいたのはバス停の近く、つまり坂を下る前の場所。その背中はあまりにも大きすぎて、僕に話しかけることなど不可能であった。
仕方なくというか、能力上仕方ないのだが、高層ビルの最上部に陣取ることにした。
エレベーターは動いていない。そもそも電気が通っていないとしか思えないような状態。暴徒が入ったとしか考えられないそこは所々赤いスプレーで彩られていた。
「これ、まだ乾いてないや。」
壁を触ったところ、指に赤い何かが残る。舐めてみる気にはならない。ただ、青酸カリでないことだけは確かだ。
残念ながらハンカチなどという女子力の高いアイテムは持ち合わせていない。仕方なくはいているズボンで指先を拭き取る。
そこからは簡単だ。果てし無い長さの螺旋階段をのぼっていくだけ。ゴールは見えない、だがあることだけは確かなのだ。
「はぁ、はぁ」
途中で息を切らしてしまう。窓から入る光だけが光源、非常灯すらもついてはいない。正確にはあったはずのものが破壊された、という方が正しいのだろうが。
二十分以上は階段をのぼっていると思う。足の筋肉はまだまだ大丈夫だが、肺が限界を迎えそうだ。
汗が階段に飛び散る。時間がたつにつれて正比例に近い形で増えていく汗の量。疲れからくる汗だけでなく、ねっとりと絡み付く冷たい汗がほとんどであったが。
上の方にたどり着いた頃には既に時計は十時をまわっていた。作戦の開始時刻。
土足で領土に踏み込む不届きものはまだここにはたどり着いてはいない。だが、スコープには映っている。
開いた窓から入ってくるその声は野蛮そのもので、それは教科書でしか見たことがない戦争という言葉を僕に連想させるには十分すぎるものであった。
「始まったのか、僕らの戦いが……」
すみません。いつか改稿します。
お読み頂きありがとうございます。
次はバトルシーンのはずなのですが……




