知恵と技術と情報戦 4
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「かい、ろ、への、干渉、です。対能力者、の最強、トラップの、ひとつ。あまりにも、非人道的、だったから、実用化には、至らなかったやつ。」
既に焦点が合っていない瞳が僕を見つける。必死にこっちに体を向けようとしているものの、指一本さえも動いていない。かろうじて動いているその口からは今も生命活動に必要な赤い液体が零れ落ちる。保健室かどこかに運んだほうがいいのだろう。でも、その考えに僕の頭が至らない。
「とりあえず、寝るに、しても、床は固すぎる、かな。」
かろうじて聞こえるくらいの声が聞こえなくなる。僕は彼女の口の近くに手をかざす。一定の周期で息が手にあたる。良かった。呼吸は、まだある。ほっとするのもつかの間。彼女の言葉について考える。寝るのに固くない場所。そして、ここから一番近い場所。あっ、保健室。職員室の廊下の突き当たり。
今まともに動けるのはおそらく僕だけ。他の生徒は意識が朦朧としているものの、彼女程ではない。最優先事項はやはりこっちだ。
お姫様抱っこ……。もうこれしかない。肌に触れないように両腕で抱き上げる。本当に人間かと思うほど軽い身体。鳥の羽のようなふんわりとした感覚。ゆっくりと上下する肩がまだ生きていることを証明している。
出口の方を向く。そこにいる先生の目はマッドサイエンティストの色に輝いている。人を人と思っていないその瞳が僕達の方を向く。首筋にナイフを突きつけられるような寒気がする。この際僕はどうなってもいい。彼女さえ助かれば僕の勝ちだ。
「ここまで出来の悪い生徒は初めてです。これではこれから入ってくる後輩に示しがつきません。なので、此処で死んでください。」
えっ……? 突きつけられた死という文字。変換ミスではない。何かの間違いであって欲しかった。でも、これが現実。逃げる、しかない。先生がこれということは保健室でも助けてくれないということだろう。
そう考えた僕は、誰も予想できない行動に出る。詳しく言うと、勢いよく窓の方に向かって走りだし、そのままガラスにタックルする。それは簡単に砕け散り、僕達は空を舞うことになる。地面まで約五メートル。五分五分で骨折するくらいの高さ。でも僕は怖くない。腕の中の温もりを失うよりはずっとましだからだ。
胃袋を鷲掴みにされる感覚。重力を身体全体で感じる。でも、それも一瞬のこと。地面につくと同時に僕の足が煉瓦の地面を砕く。出来上がったのは小さなクレーター。だがそんなことを気にしている余裕はない。
僕の体は勢いよく学校を飛び出す。もちろんどこに行くかなんて全く考えていない。でも、とりあえず落ち着ける場所に行かないといけないのはわかる。この近くで落ち着ける場所。一番最初に出てきたのが男子寮の僕の部屋だった。一瞬躊躇ったが、ここ以外思いつかない。
寮のルールに違反することになるが仕方ない。彼女をお姫様抱っこしたまま寮のある方に走る。いまだにぐったりとしている藤原さん。助ける方法なんてわからない。わからないから僕は走っている。
信号待ちの時間が惜しい。赤信号でも何の躊躇いもなく渡った。僕を止める大人の声。すべて無視して突き進む。
そうしてようやく着いた僕の部屋。そこにはまさかの先客がいた。一応スーツを着ているものの、どこか社会人らしくないその人物。一年前に僕の前から姿を消したはずの新船二葉さん本人がそこにいた。
「ミサからの警告、こういうことでしたか。ええ。お久しぶりですね、横田君。」
お久しぶりです、じゃない。何で部屋の中にいたのかとか色々気になることはある。でも、それは心のなかにぐっと押し込む。
「何で、ここに?」
その代わりに僕の口から出てきたのは拙い言葉。拙いながらも僕が言いたいことがこもっている。
「それに答える前にその子をなんとかしないと、ですね。」
再・登・場! ですね。
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