奇術師は唐突に 1
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アリーナに爽やかな風が吹く。見上げると雲一つない青空。
今着ているのが、青空よりも青いジャージとか笑えない冗談だが。
今回のバトルのルールはとても簡単。どちらかが降参した時点で終了。また、殺傷性のある武装の使用は可能となっている。つまり何でもアリのルール。
簡単なルール説明がモニターに映される。全方位にカメラが設置されており、この映像コンテンツはここの学生なら誰でも見ることができるものとなっている。さすがにそんなところで負ける訳にはいかない。
ふとまわりを見てみる。観客席は制服を着た少年少女で埋め尽くされている。
僕がいるのはアリーナの中央。目の前にいるのは燕尾服のような衣装を着た藤原さん。どこかマジシャンのような印象を受けた。そして、僕が今手に持っているのは、七十センチくらいの木刀。もちろん当たれば普通に痛い。それに、簡単に折れる。
「コインが落ちた瞬間にスタート、でいいですか?」
もちろん異論はない。なので僕は、構わないと返事をする。すると彼女は、どこからか取り出したコインを器用に握った手の親指にのせる。僕と彼女との距離は約五メートル。
コインが彼女の爪に当たり、高く透き通った音を響かせる。宙を舞うコイン。それが地面につくまでの時間は無限であり、一瞬でもあった。
コインが地面に当たった瞬間。お互いに三メートル程距離をとる。
「ふーん。やっぱりそうなるか。」
挑発だろうか。彼女の口元は緩んでいて、あの時の新船ミサの表情にそっくりだった。
「そっちが動かないなら、」
彼女の左手にはいつの間にかトランプ一組が置かれていた。そして一枚を右手で丁寧にめくる。
「ふふっ。jokerです。」
なんとも言えない不気味な感じ。よそ見をしてはいけないのはわかっているが、僕の目はそのカードに釘付けになってしまう。
細い指に挟まれたカードが投げつけられる。かなりのスピード。本能的な恐怖を感じる。とっさに右に避けたのは正解だった。それでも間に合わずに左の頬に浅い切り傷がつく。
そっちがそのつもりなら、こっちにも策はある。木刀を右手一本で持ち、左腕を後ろにまわす。そして取り出されたのはあの時と同じ銃。弾丸に意識を集中させ、迷わずに左手で引き金を何回か引く。もちろん実弾ではなくゴム弾だが。
「そうきたかー。」
そう言った彼女の身体は左にブレたように見えた。すごく速い。でも、見えない程じゃない。弾道が強制的に曲げられ、傍から見ればミサイルのように見える。
「それでも、当たらない。違う?」
彼女の呟きが聞こえてくる。弾丸が遅い訳ではない。彼女が速すぎるだけだ。ゴム弾が空気との摩擦で限界を迎えた。そこからワンサイドゲームが始まった。
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