↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
no_title 題名のない物語  作者: 藤原 アオイ
第一章 project angel
33/68

揺らめく影と蜃気楼 3

 31


 諸注意のプリントは読み飛ばし、窓の外を眺める。泰山木が青々と葉を繁らせているのが見えた。それにしても、『かぐや姫』か。月から追放された姫が竹取りの翁に育てられ、五人の男性の求婚を断り、月に帰る話だったはずだ。隣の席の女子いわく、そこまで深い意味はないらしいが。


「起立。礼。」


 号令が聞こえた。ホームルームはこれで終わり。やっと帰れる時間になった。でも、僕には確認しておきたいことがあった。彼女が帰ってしまう前に。

 教室を見渡す。藤原さんの姿はない。もう帰ってしまったのだろうか。僕はリュックを急いで背負い、ロビーに飛び出す。


「あの、藤原さん。僕と、決闘してくれませんか?」


 思いのほか大声だったようで、同じ学年の全クラスの人に聞こえてしまったらしい。


「入学初日に回りくどい告白って。」

「相手はあの『かぐや姫』じゃね?」

「あの勇気スゲーわ。」


 さまざまな意見? 声? が聞こえてくる。今更ながら恥ずかしさで顔が赤くなる。彼女は帰ろうとする足を止め、こちらに近づいてくる。そして、こう言った。


「べ、別に、構いませんけど。とりあえず、明日にしませんか?」


 確かに。明日であればちゃんと準備もできるし、オリエンテーションしかないから学校もすぐ終わる。そこまで考えが行き着かなかった。僕もまだまだ未熟だなと思う。


「では、それで。アリーナの申請はもちろん僕が出すので。」


 彼女がペコリと僕にお辞儀をする。長い前髪。左しかピンで止めてないからか、さらりと右の髪が流れる。あわてて髪を耳にかける。やっぱりめっちゃ可愛い。ドストライクです。


「ま、また、明日会いましょう。」


 彼女は女子寮に帰っていくのだろう。夕方に入寮式と言う名のパーティーがあるらしいが、彼女は参加しないのであろう。もちろん僕も参加したくはない。だが、ここまで悪目立ちしておいて参加しないという選択肢は残されていない。残念ながら参加するしかないのだろう。

 嫌なことは忘れてとりあえずアリーナの申請しないとな。ロビーから出て真っ直ぐ行ったところにある職員室に入る。もちろんリュックは入口の前に置いておく。


「失礼します。1Cの横田です。アリーナの申請に来ました。」


 知らない男の先生が応対してくれた。


「初日から申請にくる奴、毎年一人はいるんだよな。で、今からか?」


 さすがにそれは非常識だと藤原さんの目は言っていた気がする。というかいたのか、初日からバトルをする戦闘狂。頭おかしいだろ。


「明日の放課後お願いします。」


 先生はタブレット端末を取り出し、何かを確認しているようだ。


「ラッキーだったな。明日は全日空いてるぞ。とりあえず放課後全部に予約でいいか?」


 放課後全部の時間って……。果てしない長期戦になってしまいそうである。


「とりあえずお願いします。」


 先生が端末の画面を押す。これで申請完了らしい。


「失礼しました。」


 リュックを片方の肩にかけ、学校を飛び出す。寮は確か駅の方だったはずだ。僕は迷わずに駅の方へ走り出した。

お読み頂きありがとうございます。

もしよければ評価、感想お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。