桜の咲く季節に 4
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制服の採寸はすぐに終わった。時刻は午後一時。実はまだ昼御飯を食べていない。腹の虫が我慢できずにかわいい音をたてる。
「お腹、空いたのです。」
とぼとぼと校門を出る。
校門の前に誰かが立っていた。
「良かったぁ、間に合って。」
カウンセラーの立花 朱里さん。今日は、全身黒系のコーデ。本人いわく大人っぽく見えるようになるらしいが、ゆるい感じの口調ですべて台無しにしている。口さえ開かなければ、大人の女性なのに……。というと、彼女の仕事を全否定してしまうので、我慢する。
「あの、何でここまできたの?」
単純に疑問に思ったことを口に出す。
「そんなの、決まってるじゃないですかぁ。ミツキちゃんのお迎えですよ。知っているんですからね、お金は持っていても、注文出来ないことくらい。」
正論過ぎてぐうの音も出ない。
「それじゃあ、早く行きましょう。」
「ど、どこにですか?」
「あっ……。」
どうやら決めていなかったらしい。自分的にはどこでもいいのだが。ただし、この条件だけは譲れない。
「とりあえず、人が少ない所でお願いします。」
立花さんは少し困った顔をした。
「はぁ、仕方ないですねぇ。今回だけですよー?」
そういうと、彼女は駐車場に向かい、車を出す。
「あの、どこに?」
「文京支部の食堂ですよー。」
そう言う彼女の車は水色の軽自動車である。中に人形が置いてあったりとファンシーな印象を受けた。
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