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no_title 題名のない物語  作者: 藤原 アオイ
第一章 project angel
14/68

咲き乱れし赤い花 1

過去編、入ります。

12


「6時間後、会いましょう。」


そう言い、渡辺さんは個室を去った。


殺風景な部屋。そう感じた。


特にやることもない僕は、夢の中の黒い瞳の少女のことを考えていた。


どこか新船ミサに似た面影。

ガラス細工のように、触れたら壊れてしまいそうな細い身体。


最後に近づくにつれて、彼女は自分のことがわからなくなっていった。


夢の中での彼女の涙の理由はわからなかった。

嬉しそうにも、悲しそうにも見える表情。

その中に狂気があったことを僕は忘れない。


考えてもわからなさそうだったから、僕はまた眠りにつくことにした。儚げな夢の続きがみられると信じて。







黒い化け物がいた。


とても痛かった。


助けて、と叫びたかった。


でも、その願いは叶えられることはなかった。


だって、自分が黒い化け物だったから。








嫌な夢を見た。救いのない、夢だった。


「患者くん、お目覚めかー?」


返事をしようにも、彼女の名前を知らない。


「あの、あなたは?」


「二葉のやつ、ろくに人の紹介もできないのかー?」


どこか呆れたようにそう言った。


「東葛支部で能力関係の研究をしてる、赤城アオイと言えばわかってくれるかー?」


渡辺さんが僕に愚痴を漏らしていた相手。

悪い人じゃなさそうだった。


「ちょっと待って。今、二葉さんって」


「うん、全部知ってるぞー。でも、ウチが話すことじゃないからなー。」


監視者の能力、いや違う。単純に彼がすべて話しただけなのだろう。


その後、四時間くらいずっと、能力の理論について説明された。


初期の能力のこと。

DNAと遺伝子の違いのこと。

遺伝子の組み換えのこと。

彼女の研究分野のこと。


「簡単に考えると、メンデルの法則だなー。」


「じゃあ、どっちも能力回路が発現する遺伝子になるとどうなるんです?」


「そうだなー。そんな不運な遺伝子になったやつは、」


ガラリと、扉が開く。

渡辺さんが赤城さんの言葉の続きを話す。


「超高確率で死に至り、生き残ったとしても、40年ほどで限界がくる、でしたよね。」

お読み頂きありがとうございます。

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