クローバーの花言葉
10
銃弾は、彼女の頭を貫くはずだった。
確かに能力は発動した。
そこに迷いはなかった。
でも実際、銃弾は彼女の頬を掠めただけだった。
仮面が割れ、彼女の頬に一筋の血が流れる。
整った顔立ちに赤い瞳。
真ん中で分けられた長い前髪が揺れる。
こんなときじゃなければ惚れていたかもしれない。
「攻撃したってことは、ボクも本気になっていいってことだよね? 横田光君?」
彼女は、ピエロのような笑顔を浮かべる。
「なっ、なんで僕の名前を?」
「こたえる必要は、ない。」
そう言った彼女の身体は、左にぶれ、
僕は地面に倒されていた。
口の中に、鉄の味が広がり、視界が赤く染まっていく。
地面には、何かが広がり、赤い水溜まりが出来ていた。
彼女の声は、僕が来た道の方から聞こえた。
「所詮、子どもでしかない。東葛支部最強の称号は、キミにはまだ早い。」
「な、まえ、おし、えて。」
意識が朦朧とする。
それが僕に出来る精一杯の抵抗だった。
「新船ミサ。信じるか、信じないかは、キミ次第だけど。」
こう言って、彼女は立ち去ろうとした。
でも、路地裏の入口を塞ぐように、渡辺さんが立っていた。
逃げて。そう言おうとした。でも、身体が言うことを聞いてくれない。
そいつには絶対かなわない。そう思った。
先に動いたのはミサだった。
「はじめまして、じゃないよね。裏切り者の二葉さん。」
目以外は笑っているように見えた。それでいて、赤い瞳から漏れるのは濃密な殺気。一般人であればそれだけで死んでしまうほどの。
「ええ。てっきりあの事件で死んだものかと。ミサ。」
何がなんだかわからなかった。
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