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陰陽師朝霧、異世界にクレームをつけにいく ~勇者召喚の裏で女神が雑すぎる件~  作者: 和幸雄大


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第2話 異世界での出会い

草原は、予想よりも広かった。

二時間は歩いただろうか。

風は穏やかで、空は高く、月は二つ。

ここが異世界だとは、にわかには信じがたい。

「京ちゃん、この先で誰か襲われてるよ」

肩に乗ったサトリが、耳をぴくりと動かした。

私は足を止める。

「状況は?」

「小鬼が十数体。囲まれてるのは六人」

少し、考える。

ここは異世界だ。

不用意な介入は避けるべきだ。

――けれど。

「死なれると面倒よね」

情報源は多いほうがいい。

私は顔につけた狐面そっと触れた。

本名は使わない。

この世界では、“ミツネ”。

「サトリ、周囲警戒」

「りょーかい」

森を抜けると、石畳の道が現れた。

その先で、小鬼――ゴブリンが群れを成している。

鎧を着た騎士が四人。

そして、銀髪の女性がひとり。

……いや、もうひとりは侍女か。

王族だ。

気配が違う。

私は霊符を指に挟んだ。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」

霊符を放つ。

炎が走る。

ゴブリンの中心で紅蓮が弾けた。

悲鳴。

焦げた匂い。

一瞬で数体が消し飛ぶ。

「なっ……!」

騎士たちがこちらを見る。

私は何も言わない。

ただ、もう一枚。

炎が広がり、残りを焼き払う。

静寂。

銀髪の女性が、ゆっくり歩み寄ってくる。

壊れかけたティアラ。

裂けたドレス。

それでも失われない気品。

「助力、感謝いたします。私はエリシア・ヴァルステラ。エストリア皇国の王女です」

やっぱり。

「通りすがりの陰陽師よ」

私は肩をすくめた。

「狐面の怪しい術者、でいいわ」

騎士のひとりが、露骨に警戒の視線を向ける。

当然だ。

この世界の術式とは違う。

魔力の流れが、根本から異なる。

王女はそれを感じ取ったらしい。

「あなたの魔法は……我々の魔法とは異なりますね」

「理の違いよ」

私は霊符を指先で軽く揺らした。

「あなたたちは“力”で押す。私は“理”で縛る」

騎士たちの空気が、わずかに固まる。

王女だけが、微笑んだ。

「……なるほど。では、なおさらお願いしたい」

彼女は背後の騎士へ目配せしてから、改めて私を見る。

「近くの交易都市ヴァルミナへ向かっております。よろしければ同行を」

「報酬は?」

「護衛と食事を保証します」

悪くない。

情報も手に入る。

なにより――この世界の“常識”を、私はまだ何ひとつ知らない。

「この世界の事情、教えてもらえる?」

王女は静かにうなずいた。

「もちろんです」

サトリが肩に戻ってくる。

「京ちゃん、あの王女、嘘ついてないよ」

「分かってる」

私は狐面の奥で目を細めた。

道を歩きながら、エリシアは静かに語った。

この世界の名は、リーフグラッセ。

女神の加護によって保たれている世界だという。

「女神は戦乱を鎮めるため、時に“勇者”を招きます」

勇者召喚。

やっぱり、そこか。

高校生――神谷悠真は、きっとそこにいる。

私は息を吐いて、短く答えた。

「同行するわ」

王女はほっとしたように息をついた。

そして私は。

この世界の“歪み”に、少しずつ触れ始めることになる。

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