真面目な人ほど恋は盲目 後編
「がりべん様!こちらたった今お話した、ハラショーさんです!」
「ハラショーです☆。お話は聞かせてもらいました☆」
(偶然って言ってたのに、しっかり話聞いてるじゃないっ!!)
(次の発言で設定矛盾させんなっ!!??――って)
「そ、尊師様!!」
リュートは顔を隠すのも忘れて、思わず立ち上がった。
「リュートっ!何やってんのよっ!?」
慌ててティンクが止めに入るも、時すでに遅しだ。
「まぁ!リュートさん!いらしてたんですね……!」
「あ、やばっ!つい感動して顔出しちゃった!!Tシャツの顔そのままだったから……」
「あんたも信者の素養が抜けきってないわね……」
「リュートっ!ティンク!!なんでここにっ!」
「がりべん、帰るで!明らかに怪しい団体の勧誘や!」
「チョッケルまで……!?そうか、皆たまたま鉢合わせたのか!?すごい偶然だなっ!!」
「――んなわけあるかいっ!!」
「どこで会ったか知らないけど、その女は迷惑系なろうチューバー〝わらしゃんどえぞ〟よ。目的のためなら他のなろうチューバーを妨害したり、犯罪すれすれの行為を繰り返すヤバイやつなの!」
「違いますっ!今はプライベートなので、本名のショーコで呼んでいただけますか!?」
「そこぉっっ!?否定するとこ、そこでいいのっ!?」
「私とショーコさんの出会いか……あれはショーコさんが暴漢に絡まれている時だった……私の天才的な頭脳で危機を脱した我々は二人、街角のレストランで――」
「テンプレやなぁっ!?少しは怪しいって気付きぃ!」
「――ってか、あんた本当に方方でいざこざ起こしてるのね」
「違いますっ!無許可で人気なろうチューバーに凸しただけです!!」
「否定が下手ぁっ!!否定できてないっ!!それヘタしたら犯罪っ!!」
「なんしかこんな女のことは気にしぃひん方がええで!はよいの!」
「そうよ!時間の無駄よ!これなら帰って勉強してた方がまだマシ!」
「がりべん!〝魔の手〟に入信すると、いろんなセミナーに参加できて自分の可能性を伸ばせるんだ!ランクが上がれば、それだけハラショーさんに会う機会も増えるしっ!」
「そうなのかっ!?」
「リュートさぁぁんっ!!どっちの味方なんっっ!?!?」
「敵に塩を送るって、このことね……」
「それに〝魔の手〟には、僕やがりべんみたいに夢を追いかける仲間がいっぱいいるんだって!……ショーコさんのような人も多いみたいだよ!!」
「よし、入ろう!」
「いや、勧誘のプロじゃん!!相手の欲しいツボ全部入りじゃん!!!塩どころか信者送ってるじゃん!!!!」
「がりべんも気安く入信すなってぇ!!動機が下心やん!!」
「ななな何を言っているのだ?そそそんなわけあるまい……!」
「嘘が下手ぁっ!!バレバレや!!もっと上手く隠しぃ!?」
するとわらしゃんどえぞが、がりべんにピタリとその身を寄せた。いつの間にか、がりべんの隣に腰を据えていたようだ。
「ショショショ……ショーコさんっ!!??」
「がりべん様……どうか、高い目標をお忘れにならないようにお願いします。そこのちんちくりんとオチビサンは、がりべん様の崇高な志を挫こうと必死なのです」
「ちん……ちく……」
「オチビぃ~っ!?」
わらしゃんどえぞは、なおも上目遣いで続けた。がりべんの手の上に、自らの手を重ねる……。
「自分に必要なのは、ただ魔族を倒せ倒せと煽るオチビサンか……はたまた素晴らしい授業の配信を共に志す同志か……。賢明ながりべん様なら、一目瞭然、犬が西向きゃ尾は東ですよね?」
「は、はい〜」
わらしゃんどえぞの手と共に、がりべんの手がスラスラと動いた。がりべんの手には、なめらかに動くペンが……その手の下には、確かに入信申込書が敷かれていた。
「……はっ!がりべん!!手ぇ止めとき!!」
チョッケルがそう叫んだ時にはもう遅かった。わらしゃんどえぞの手には、がりべんのサインが入った入信申込書が握られている。
「ご入信、ありがとうございます♪」
「や、やられた〜!!」
「クソぉ……っ!こないな単純な手に引っかかってしもたなんてぇ!」
「ズルいぞ!がりべん!自分だけぇっ!!」
「ややこしくなるから、リュートは黙っててっ!!」
「いや、むしろなんでそうまでして入りたいん……?」
「チョッケル!こうなったら、リュートの入信だけでも死守するわよっ!?」
「それはおかしいですねぇ☆……?リュート君は既に、れっきとした信徒の一員ですよ☆?」
「ハラショーさん!残念だったわね!リュートの入信申込書は、サイゼリ屋の瓦礫の下!!今頃は山奥の処分場で粉砕されてるわ!!」
「あー、尊師様。申し訳ございません。僕、結局入信できてないんです……」
「なんでリュートさんの方が残念そうやねん!!」
「どうやら思い違いをしているようですね☆?ショーコさん☆?」
「はい。こちらです――」
わらしゃんどえぞは鞄の中から、しわくちゃの用紙を取り出した。そしてそれを皆に見えるように高く掲げる。
「そ、それは!?」
「はい!リュートさんの入信申込書です!!あの後、瓦礫の中から救出したのです!!」
「えっ!!??じゃあ僕もう〝魔の手〟に入ってるってコト!?」
「左様でございます。信徒ナンバー十三番のリュートさん!」
「やったー!!」
「やったーじゃないわよぉっ!!このままじゃマズイわ!!……ってか、信者少なっ!」
「ホントだよ!うかうかしてられない!!――尊師様Tシャツってまだ在庫ありますかっ!?」
「いや、そっちじゃねぇよっ!!どんだけ気に入ってんだよ、このおっさんの顔をよぉっ!?――このままじゃ、ファンタジー世界で主人公が新興宗教団体のために剣を振る物語が爆誕しちゃうでしょっ!!??」
「そ、そうだ!僕、主人公だった!!はぁ……主人公じゃなければなぁ……んん……かくなる上は……クーリングオフはできますかっ!?」
「二十日以上経っているので、できませんっ!!」
「くっ……手強い……っ!!」
「……だめだ!頼りにならないっ!」
「これからあなた方には、マナの浄化メソッドと魔族討伐のトレードオフ理論をご説明しましょう☆知れば自ずと救いの道が開けますよ☆」
がりべんは不敵な笑みを浮かべた。
「そ、それはきょ、興味深いな……」
「ほんまにわかって言うとる?」
「――だか、ハラショーさん。私が知りたいのは、魅力的な授業の進め方と、視聴者が倒大に合格する方法だ!」
「いや、どうせなら自分が合格する方法聞いときなさいよ……」
「はぁあぁ〜〜っ!!!万事休すやぁ〜っ!!次話から『異世界なろうチューバーは当配信でも魔族の保護とマナの浄化をご所望です。』が始まってまう〜!!絶対おもんないっ!!どないしたらええんやぁ〜!?」
「はっはっはっ……」
突如がりべんは笑いだした。中指で眼鏡のブリッジ部分をクイと持ち上げる。
「学校へ行けーーーっ!!!」
――バシンッ!
「なんでやねんっ!」
「学校へ行かないから、そんなこともわからないのだ」
「まさか、この状況を打開する方法があるというの!?」
「私を誰だと思っている――」
「留年生やろ?」
「私は青年革命家がりべん。卒業式で全生徒が泣きながら別れを惜しむ教師になるのが夢だ!!」
「初耳やでっ!?金○先生目指しとったんかっ!!??」
「その目的が果たせるまで、この物語を終わらせるわけにはいかないっ!!」
「自分でそんなにハードルを上げて大丈夫なのか!?がりべん!!」
「ふっ、任せろ……メタメタのメ~タ♪〝このままだと物語が終わってしまいますよ~作者さん!どうにかしてくださ~い!!〟」
「……ぶん投げた」
「丸投げや……」
「よしっ!これですべて解決だ。はっはっはっ!どうだ!?学校へ行きたくなったか??この呪文も学校で習うぞ!?」
「だから……どんな学校だよっ!!??」
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