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薬草採取

今回の登場人物

アスカ:【新緑の息吹】Eランク、踊り子。元派遣会社のOL。

ユキ:アスカが名付け親の白いドラゴン。中型犬サイズ。

サーシャ:【新緑の息吹】ギルドマスター代理。

エント:城壁門の警備兵。

「どう、ユキ? 似合っている?」

早速、革の鎧を装備し、背中に採取した薬草を入れる籠を背負い、右手に片手剣を持って、ポーズをとって見せた。

ユキは、ピョンピョン跳ねている。きっと好印象なのだろう。


 準備が終わり、一階に降りてサーシャさんに準備が出来たことを伝える。

「見本は見せたから、どこに生えているか情報を自分で集めて、実際に採取して戻ってくるんだよ。それがクエストさ。」と言って、アスカの首にタグをかけてくれた。


「サーシャさん、これはなに?」と言い、タグを不思議そうに見るアスカ。タグには、『【新緑の息吹】 ランクE アスカ』とだけ刻印されていた。

「クエスト中、モンスターに殺された遺体が誰のものか認識するためのプレートさ」

(ちょっと……クエストは、死を警戒しながらやるものなんだ……)


 クエストとはいえ、低ランクなのでピクニック気分でいたアスカの気が一気に引き締まった。

「引き締まった表情になった。これなら安心だ、行っておいで。お昼頃には戻ってくるんだよ。ごはん用意してまっているから。」とサーシャさんが送り出してくれた。

「行ってきます……」緊張した表情でアスカはギルドハウスから出た。


 正面にある【不死鳥の息吹】のギルドハウスの入り口には、これからクエストにでるのであろうパーティが複数たむろをしていた。その中には、昨日アスカの日舞を見て失笑していた人もいたようだ。


 そのうちの一人が、「お嬢ちゃん、【新緑の息吹】に入ったのかい。その姿だと、初日からソロで薬草採取か? 地道でいいねぇ」と言い、どっと沸いた。


 アスカは恥ずかしくなり、足早に城壁外にでる門へ向かう。


 城門の警備兵には、昨日便宜をはかってくれたエントさんが居た。

「エントさん、おはようございます!」

「おぉ、昨日の……アスカだったっけ? ギルドに加入できたようだな。【不死鳥の息吹】の雰囲気はどうだい?」

「教えてもらった【不死鳥の息吹】は加入できなかったけど、【新緑の息吹】に加入させてもらえました!」と言って、サーシャさんにかけてもらったタグを見せた。

「悪口を言うわけじゃないが……【新緑の息吹】は最近勢いがないから……アスカが頑張ってもりたててやってくれ! 頑張るといっても、命は粗末にするんじゃないぞ。城壁の外はモンスターがいるフィールドだからな」

「はい! 命は大事にします! ついでにお聞きしたいんですけど、薬草採取のクエストを受けたんですけど、どのあたりに行くのがおすすめですか?」

「詳しくはわからないけど、草むらが多くある場所なんじゃないか? 城壁から近いところは、同じような初心者が採取しているだろうから、城門から少し離れた方がいいかもな」

「ありがとうございます!」アスカはお礼を言って城門から外に出た。


 街道を進み少し城壁から離れた場所から、草むらを見ながら、薬草がないか確認しているが、さっぱりわからない。見本として見せてもらった薬草は、よもぎのような草だったけど、そんな草は見当たらない。


 虫と遊びながら、アスカの後ろをついてきているユキに「ユキ……薬草ってなかなか見つからないもんだね……」と声をかけて気を紛らせた。すると、ユキはアスカの前に駆けていき、少し距離が出来ると、その場飛びでピョンピョンし、アスカが追いつくと、また先に走っていきを繰り返した。

「ちょっと、ユキどうしたの! 待ってよ!」必死に追いかけるアスカ。


 ようやく止まったユキに、「ユキ……どうしたのよ、急に駆けて行って……」とアスカは言い、両手を膝にあて、肩で息をしていた。

(体がなまっているなぁ……ちょっと走っただけなのに……)


 呼吸が落ち着き、ユキの背後を見ると、薬草が一面群生していた。ユキは薬草の匂いを頼りにこの場所を案内してくれたようだ。


 アスカはユキを抱えて、「ユキ、ここを案内してくれたの? ありがとう!」といってほおずりした。ユキも応えてアスカの顔をなめた。


 アスカはユキを降し、「私は薬草採取に専念するから、ユキはあまり遠くに行かないで、遊んでいてね」と言って作業にとりかかった。

 テニスコートほどの広さに薬草が群生しているので、すべて採取すると背中に担いできた籠一つでは足りない。薬草の葉っぱが痛まないよう、やさしくつんでいく。腰は痛くなるが、久しぶりに自然の中での作業が心地よかった。


 籠いっぱいに薬草をつみおえたアスカは、周りを見ると、少し離れた場所でユキがお昼寝をしていた。「ユキ、ギルドハウスに戻るよ」と言いながらユキの元に行くと、脇には魔石の小山が出来ていた。


 アスカが夢中になって薬草採取をしている間、近寄ってきたモンスターを退治し、ドロップした魔石を回収してきてくれたようだ。なんて頼もしい相棒なんだろう。魔石を数えると、昨日と同じ大きさの魔石が16個、それより少し大きい魔石が3個あった。


「ユキ! 守ってくれていたんだね。ありがとう!」


 城壁の外は、モンスターが居るフィールドだというエントさんの言葉を思い出した。魔石の数は、アスカを襲おうと近づいてきたモンスターをユキが返り討ちにした数になる。モンスターの恐怖を感じたアスカの背中には冷たい汗が流れた。


 早く安全な場所に戻りたくなったアスカは、魔石を薬草の入っている籠の中に入れ、城壁門へ戻り始めた。まだ眠たそうなユキは一回翼を大きく広げる伸びをしてから、アスカの後ろをトコトコと追いかけて付いてくる。

(ユキありがとう……ユキが居なければ、このクエストで死んでいたかもしれないんだ……)

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