みんなでテーマパークへ行く(3)『異世界人?』
男はテーマパークの中央に位置するところで足を止めた。
人はまばらで、エルフの賢者たちがいた場所よりは少ない。
男は中央の噴水の前に置かれたベンチに腰を下ろし、賢者の弟子にも座るように告げた。
銃はもう男のジャケットの下にしまわれ、賢者の弟子を脅すような仕草はしない。
「なぁ、あんたらいったい何者なんだよ?
俺に手を出すなんて命知らずにもほどがあんぞ」
賢者の弟子は、初めてきたテーマパークで散々な思いをさせられていて、正直苛立っていた。相手は銃を持っており、自分の命なんて簡単に奪えるかもしれないとか、エルフの賢者と一緒にいたことでもう麻痺していた。
「いろいろと聞きたいのこちら側なんだけどね。
見た所、君はこちら側の人間のようだけど、
なぜ、異世界の人たちと一緒にいるんだい?」
・・・こちら側の人間?異世界の人たち?
こいつらは、あいつらが賢者って事は知らないのか?
「先に俺の質問に答えてくれよ。
その方があんたの為だぜ」
これは決して脅しではない。エルフの賢者や金髪の少女に捕まったあとで、強引に迫られるよりは、自分の方がよっぽど安全なはずだ。
黒服の男はうつむき、何か悩んでいるようだ。
「なぁ、悪い事は言わないから、
俺に話した方がいい。
あんたも、あいつらの力を見たんだろ?
俺はあんたの身の安全を考えてこう言ってやってるんだぜ」
賢者の弟子はよく刑事物のドラマなんかに出てくる警察が共犯者を落とすシーンを思い出しながら話をするのだが、話しているうちにちょっとはずかしくなっていた。
「あんた、
あいつらが異世界人だってわかるって事は、
あんたも異世界に行った事があるか、
あんた自身が異世界人かのどちらかなっ...なんだろ?」
話しているうちにパッとベンチの背後からの殺気を感じチラッと振り返ると、金髪の少女と銀髪の少女の2人が立っている。
・・・やっぱ来たか・・・これは早く話を聞き出さないと、血の雨が降るな。
金髪の少女が放つプレッシャーに正直潰されそうになる。
こいつらとは心での繋がりとはないもんなぁ。
今の自分の考えてる事は、賢者様にしか聞こえてないだろうし、
こいつらちゃんと待っててくれるか・・・
「ガタッ」ベンチが音を立て、はっと男の方を向くと金髪の少女がにっこりと微笑みながら、男の肩をしっかり掴んで立ち上がろうとするのを阻止している。
・・・人が考えてる間に進めんなよ・・・
「ゴミが聞き出すのが遅いせいで、
気づかれたのよ。
賢者様がくるまで猶予をあげるから、
聞きたい事があるなら早く聞きなさい」
金髪の少女は賢者の弟子を睨みつけて話す。
「ああ、わかったから、わかったから。
とりあえず、その手を離してあげてくんねぇか?
あんたもこいつらから逃げられるとか考えない方がいいぜ。
もし逃げようとしたら、多分とんでもなく辛い思いをする」
もうこいつらが来てしまった以上、なりふ構っている場合ではない。
こんな夢の国であるテーマパークで血の雨を降らす訳には、いやもう降ってるのか?とにかく被害者をへらす努力をしないとだめだ。
「話す気がないなら、私が話す気になるようにするだけだけど」
金髪の少女はベンチに座る男の背後に立ち、男を見下ろしながら話す。
男のとなりに座り、その金髪の少女を見上げるように見る自分には、この少女への恐怖しか感じない。
頼むから早く話してほしい。これ絶対に自分にもとばっちりが来るやつだから。
「お姉ちゃん、
この人が逃げられないように僕がベンチにくっつけておくよ」
そんな金髪の少女に気づいて、銀髪の少女がベンチに手を触れてなにかをする。
・・・んっ、なんか俺まで身体がベンチにくっついてんだけど・・・
ちょっと足に力を入れるとわかる。自分の太ももの裏からお尻にかけて、そして背中が完全にベンチとくっついていて、動こうとするとベンチまで動かそうとしてしまう
・・・なんで俺まで?
「なぁ、話せない理由でもある訳?
話したら殺されるぅとかさ」
男の顔を覗き込んで言おうと思ったが、身体がベンチにくっついてて身動きがとれない。
・・・これすっげぇ邪魔だから解除してくれないかね。
「お願いがあるんだ。
私を、いや私たちを異世界に帰してほしい。
もうこの世界はうんざりなんだ。
私は帰りたい。どうしても帰りたいんだ」
男が唐突に話し始めた内容は、自分には意味がわからない。
返してほしい?どゆこと?
「うっ」
男が続けてなにかを言おうとした瞬間、金髪の少女の手刀が男の背後に入り、男の意識を奪う。
「お、おまえいきなり何やってんだよ」
「こいつが何者なのかわかったし、
もうこいつから聞き出す事はないと判断しただけよ」
「いや、今こいつが話した事でいったい何がわかるっていうんだよ?」
「この話はゴミにはまだ早いわ」
金髪の少女の目力が一層強くなる感じがして、賢者の弟子はすぐに目をそらした。
自分にはまだ早い?
いったいなんの事なんだよ?
「どういうことか、あとで賢者にも聞くからな」
金髪の少女に聞いても、決して話す事はないだろう。
賢者の弟子は「はぁっ」とため息をついて、ベンチから立ち上がろうとするが、
銀髪の少女の手によってまだベンチに固定されたまま。
・・・
しばらくベンチで座っていると、エルフの賢者と小人の賢者が周りの人間に手を振りながらこちらに歩いて来る。
もう完全にテーマパークのキャストのような存在なのか、キャストの人たちは頭を下げている。
小人の賢者は、こちらに歩きながら撮影にも応じるといったサービス精神旺盛だ。
・・・あいつらと一緒にテーマパークを回る俺の立場の事って考えてくれてんのかな?




