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異世界2日目エルフの城(10)『2人の大精霊』

ほぼ全壊状態となった玉座の間、2人の男がその扉の前に降り立った。

1人は、黒髪で色白、長身で身体のラインがはっきりとする赤いタイツを全身に着ている。

もう1人は、とても扉を通れそうにない大きな身体に立派な白銀の鎧を着ており、両腕の小手には大きな盾がついている。


「あの子たち、また派手にやってくれちゃったわねぇ」


「早く片付けて、帰るとするか」


赤いタイツの男は玉座の間の扉を開こうとするが、開かない。

扉の立て付けがゆがんでしまったらしく、扉がびくともしないのだ。


「もう何この扉?

 せっかくかっこよく登場しようと思ってたのにぃ!」


頭にきて扉を蹴りつける赤いタイツの男。

それを見た鎧の男は、扉にふれてそっとつぶやく。

扉は砂のように粉々となり、一瞬で崩れ去る。


「ありがとぉ〜♪」


赤いタイツの男はスキップで、土と泥を踏みつけて玉座の間に入る。

鎧の男はゆっくりとした足取りで、歩を進める。

床に散らばった土と泥は、鎧の男の足をよけるように移動する。

鎧の男の歩いた道には、土と泥は一切なく綺麗な床が見えている。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「キャッホー。小人の賢者ちゃんどこ〜?お掃除に来たわよぉ」


赤いタイツの男の声が、玉座の間に響く。


なんだ、あの変な男は・・・

全身赤タイツ?いくらなんでも変態すぎだろっ。

この世界ってやっぱり美的感覚おかしくない?


「来てくれたんだ。

 ちょっと派手にいろいろ汚しちゃったから、頼むよぉ」


小人の賢者は立ち上がって、赤タイツの変態に手を振っている。


エルフの王妃とエクレアは、赤タイツの変態に頭を下げている。

回りを見ると、警備兵も騎士も皆、この赤タイツの変態に頭を下げている。


何?王妃まで頭をさげるってこいつ何者??

赤タイツの変態は、手を振りながらスキップで玉座の間を進み、自分の前で足を止めた。


「君が例のエルフの賢者の弟子ねぇ。


 う〜ん。やっぱりあたしには、

 ちょっとお肉が足らないかなぁ。

 

 あなたもっと食べなきゃダ、メ!

 もっと食べて、大きくなりなさ〜い。

 

 そうしたら、もっと仲良くしてあ、げ、る」


赤タイツの変態がこちらにウインクをしてくる。

全身に鳥肌が・・・きもい、こいつものすごくきもい。


赤タイツの変態は、自分を通りすぎ小人の賢者の前までスキップで移動して、小人の賢者を抱っこする。


「エルフの賢者の弟子。おまえの主人はどこにいる?」


「はい?」


振り返るとそこには、白銀の鎧を着用し、自分の3倍はありそうな大きな男が立っている。


・・・おいおい、なんだよ。この大男。こんな奴エルフ族にいるのかよ。


全身を鎧で包み、両腕に盾。どんだけ防御特化の兵隊だよ。

その大きさ、迫力に、気後れしてしまう。


「あ、はい。エルフの王と一緒に別室に行かれています」


迫力に圧倒されて頭を下げて鎧の男に賢者の場所を伝える。


「そうか」


鎧の男は赤タイツの変態とは違い、言葉数少なく、小人の賢者の方に歩いていく。赤タイツの変態に抱っこされた小人の賢者は、こっちにおいでぇと自分を手招きしている。


いや、どちらかというと、その赤タイツの変態とは関わりたくないんだけど・・・

それに、、、おまえとも、、、


しぶしぶ、小人の賢者の元へ足を進める。

なんというか、こいつがらみで人を紹介されるというのは、かなり危険な気がする。

いや、危険というか迷惑だ。


「2人とも、もう知ってると思うけど、この子がエルフの賢者の弟子だよぉ。これから仲良くしてあげてねぇ」


小人の賢者が抱きかかえられたまま、2人に笑顔を見せて自分を紹介してくれる。


「あたしは、この子のお尻のサイズも全部知ってるから大丈夫よぉ」


「おい、やめろよ。気持ち悪い」


赤タイツの変態の言葉に思わずツッコミをいれる。

自分にはそういった性癖は一切ない。


「やめんか」


鎧の男が、赤タイツの変態を制止する。

どうやら、鎧の男はまともな人みたいでちょっとほっとする。


「どうやら2人は相性ばっちりみたいだね」


「お願いだからやめてっ!」


小人の賢者は人の嫌がる事を平気で茶化すのが大好きだ。

族長なんだから、そういうのはやめた方がいい。


「もう2人はエルフの賢者の弟子の事を知ってるみたいだから、

 君に2人を紹介するねぇ」


小人の賢者は愛くるしくない、なにか不自然な、悪い笑みを浮かべる。


・・・


・・・


・・・


「もったいぶんなよ!」


「だって、人が一生懸命決め顔決めたのに、なんの反応もないんだもん」


「さっきのが決め顔なのかよ!全然決め顔になってない。不自然すぎるわ!」


小人の賢者を今度は普通に愛くるしい笑みを浮かべる。


「よし、それでいい。おまえはその笑顔が一番いい!」


「ちょっとぉ〜。あ、た、し、を無視しないでくれるぅ〜」


赤タイツの変態がしびれを切らして、横からしゃしゃり出てくる。


「ごめんごめん。

 この子をからかうのはおもしろいからさ。

 それじゃ、紹介するねぇ



 こっちの赤いタイツの男の人は「水の大精霊」だよぉ。


 それでこっちの鎧を着た男の人が「土の大精霊」だよぉ」


!!!


!!!!


!!!!!


赤いタイツの変態を思わず全身みてしまう。


ーーこいつが水の大精霊?!?!


・・・


・・・


・・・


「なぁ〜に?そんなにびっくりしたぁ〜?」


「びっくりなんてもんじゃねぇよ!

 驚きのあまり、ちょっとあの世に旅立ったわ!」


「あらぁ、それじゃあ、あ、た、しがぁ、いやしてあげるぅ〜」


「頼む。頼むからやめてくれ」


今まで自分を助けてくれた、あの綺麗な青い光りの粒の精霊の長。

まさか、こんな変態だとは...やべぇ、知りたくなかった。

この異世界にきて、一番ショックだ。


「やだわっ。この子ったら、こんな事で凹んでるのぉ?」


水の大精霊は賢者の弟子の落ち込んだ様子をみて、軽くため息をつく。


「私のこのキャラって、あなたが家でやっているゲームからいただいたのにぃ?」


「はい?」


「あなた、家でゲームしてるでしょぉ。

 あたしそのゲームの中に出てくるキャラが気に入っちゃったのよねぇ。

 私たち水の精霊と同じように、みんなを癒やすそのキャラがぁ。

 だから、今こうやって真似してるのよぉ」


「ゲームって、まさかドラゴンファンタジー?」


確かに、自分は元いた世界でドラゴンファンタジーをやっていた。

しかしまだゲームは全然進めていない。

なので、ゲームに出てくる主要キャラもわかっていない。


「なぁ、もしかして、水の大精霊様は、

 向こうの世界で自分がゲームをやってるのをずっと見てた訳?

 そして、そのゲームに出てくるキャラを今真似している?」


「そうよぉ〜。だってぇ、君はあたしの子供たちと契約状態でしょぉ。

 だから、時々様子を見に行ってるのぉ〜。

 向こうの君のそばで、あたし、子供と一緒にみ、て、た、のぉ」


思わず、肩で笑ってしまう。


・・・異世界にきて、まさかのゲームのネタバレ...


そして、この水の大精霊のキャラ作りが、自分のやっていたゲームが原因とは。。。


なんで、この世界は、自分たちの世界の変な所ばっかり持ち込むかな!!!


頭を抱える賢者の弟子をずっと見ている土の大精霊。

実は、この土の大精霊も、水の大精霊に言われてこのような鎧をまとって登場している。

しかし、何も言われない。誰にも突っ込まれない。


土の大精霊は、小人の賢者を見つめると、小人の賢者は頭を掻いて苦笑いを返した。


「ってか、大精霊って言ったら、俺の命を狙ってるやつだろ?」


そう、今日の朝一番に草原で風の大精霊に命を狙われた。

そして、外にでた時はくれぐれも気をつけるように・・・っと。


「ああ、思い出したわぁ

 風の大精霊ちゃんが、あなたに会いにいったのよねぇ。


 あれはあなたへの警告じゃなくて、

 エルフの賢者ちゃんへの警告よぉ〜」


「エルフの賢者への?」


「だぁって、

 私たちがその気になったら

 いつだってあなたの命なんてとれちゃうんだもぉん」


・・・軽く、とんでもない事言ってくれるなぁ


「エルフの賢者ちゃんは、

 人間にご執心しすぎてるみたいだからねぇ。


 ほんの少しだけ、私たちもそれを心配してるだけよぉ」


「・・・心配、ね。

 あれだけ強いやつの心配って、

 エルフの賢者より強い奴ってそんなにいるのかよ?」


「別にエルフの賢者ちゃんをどうこうっていう訳じゃないわよぉ

 問題なのは、エルフの賢者ちゃんをとりまく周りってぇ、

 なぁんで私が全部教えてあげなきゃいけないのよぉ。

 ここから先は、あなた自身の目で確かめていきなさぁい」


・・・うざっ。そこまで話すんだったら最後まで話せよ。

ってか、要するに俺の命の危険はないって事か?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




雑談に近い、水の大精霊と賢者の弟子との会話。

エクレアは、2人の会話を聞き耳を立てて聞いている。


彼女は王女として育ち、力がうまく制限できない為になかなか外に出してはもらえない。

だから、この賢者の弟子が住んでいた世界の事も何も知らない。

城を抜け出す為に、いろいろな手段を試しているが、

その度に罠にはまって、暗い地下空間に飛ばされてしまう。


ーーこの賢者の弟子をうまく利用すれば...


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