異世界2日目エルフの城(6)『玉座の間』
「聞こえてるよねぇ」
エルフの賢者が賢者の弟子の耳元でささやく。
・・・
ーーいつから気づいてました?
「私、君の心が読めるのよぉ」
薄めでチラッと賢者の顔を確認する。
賢者は笑みを浮かべている。
うん。これは空耳じゃないね。
バレてるね。むしろ、今まで黙ってた訳ね。。。
お姫様抱っこから解放され、賢者の弟子はバツの悪そうな表情を浮かべて頭を下げた。
気がついた時には、エルフの王様がいて起き上がるに起き上がれず、
ずっとエルフの賢者にお姫様抱っこをしてもらっていた。
気を失い、起きたら目の前にエルフの王様がいるのだ。
緊張で動けなかったというのが正解か。
「やはり、起きていたようだな」
エルフの王はゆっくりと笑みを浮かべてこちらに目をやる。
「はい。起きたら会話の途中だったので、
なんというか今起きていいのかどうか、
タイミングをみてました」
エルフの王に再度頭を下げて、礼をする。
「顔をあげるがよい。それでは話ができないだろう」
「はい。王様」
頭を上げて、エルフの王をみる。
・・・幻か?王様がかわいらしい女の子を抱っこしている。
王妃が座るだろうもう1つの椅子をチラッと見る。
椅子には誰も座っていない。賢者の弟子は目をつむって考える。
エルフの王妃はたしか小人の賢者の娘。
だからドワーフだ。
なら、さっき見た物は。
ゆっくりとうっすらと目を開いて、
エルフの王の胸の下から膝の上に乗っている少女を見る。
間違いない。
あれは間違いなく、ドワーフだ。
この小人の賢者の娘だ。
思わず小人の賢者を見てしまう。
小人の賢者は目があうとにっこりと笑みを浮かべる。
・・・なんかすげぇ・・・
エルフの王はぱっと見て、自分でもかっこいいと思う。
年は人間でいうと30から40の間くらいなのだろうが、
そんな一国の王が、ちっちゃくて可愛い女の子を膝の上で抱っこしている。
しかも、それが王妃だ。この絵面は、自分たちの世界だったら、もうそれは完全な犯罪といってい
「ふぎっ・・・」
賢者の弟子の後頭部にエルフの賢者のチョップが炸裂する。
賢者の弟子は頭を押さえてうずくまる。
突然の出来事に目を丸くする、エルフの王とエルフの王妃と小人の賢者。
「エルフの賢者、どうしたのかね?」
「何でもありませんわぁ。
ちょっと、この子を黙らせただけですわぁ」
エルフの賢者は口元をゆるめて王の前に一礼する。
「もう契約は済ませているという事。。。か」
「もう契約ずみよぉ。
あなたたちには何も言わせないわよぉ。
私の邪魔はさせないわぁ」
エルフの賢者は王に対して殺気を放つ。
「それでは、君の契約者を紹介してくれないかね」
エルフの王はエルフの賢者の殺気に気づき、エルフの賢者を睨みつけて返事を返す。小人の賢者もその2人の殺気に気づき、目を細め片足を一歩下げた。
2人の賢者と王とのにらみあい。
ノヴァはその異様な空気を察知して、ミエが置かれた台とともに数歩後ろに下がる。
「王もお父様も賢者様も、ここを戦場にされるおつもりですか?」
この重くのしかかるような空気の中で3人を止めたのは、王の膝の上で抱かれていたエルフの王妃、小人の賢者の娘。
賢者の弟子は、その空気を感じられるレベルに達していない。
後頭部にいきなりチョップをされて、エルフの賢者の後ろ姿をしゃがみこんで見ているだけだ。
「きみぃ。あのバ!カ!に右手の甲を見せてあげてぇ」
はい?あの馬鹿?あの馬鹿ってもしかしてエルフの王の事?
王様をバカ扱いってそんな事をここで言っちゃっていいの?!?!
エルフの賢者の一言にちょいびびりの賢者の弟子。
エルフの賢者の顔を見ると、目は完全に王を睨みつけていて、臨戦態勢だ。
やっと今の状況に理解した賢者の弟子は緊張の渦にのみ込まれ、
「どうかいでず!」
玉座の間に、賢者の弟子の大きな声が響き渡る。
しかも、完全に舌を咬み、全く意味をなさない言葉。
「声の大きな方ですね」
その声を聞いて、エルフの王妃が笑みをこぼす。
この大きな声と王妃の笑みが張り詰めた重たい空気を少しだけ緩和する。
「エルフの賢者よ。一応、種族会議で決定している事なのだよ。
私の立場もわかってくれないかね」
エルフの王が視線をそらし、エルフの賢者をなだめるように言葉を放つ。
エルフの王妃は、小人の賢者に今度はお父様の番よと言わんばかりに視線を送っている。
「エルフの賢者、
見せるだけ見せておこう。
それで納得してくれないなら」
「お父様!!!」
小人の賢者の話しているのをエルフの王妃が声をかぶせて話を止める。
どういう事?なんで賢者は2人ともやる気満々みたいになってんの?
王座の間の前で待っていたはずの金髪の少女と銀髪の少女の2人も王座の間に入り、賢者の弟子のすぐ後ろに控えていた。
エルフの王の側近が賢者の弟子に駆け寄る。
賢者の弟子が右手の甲を差し出すと、側近は魔道具を手の甲にあてて魔法陣を浮かび上がらせた。魔方陣からは光り粒が宙をまい、文字を作り出す。
ーーすっ すごいっ・・・マジパネェ・・・何これ?こんなのがこの魔方陣に組み込まれてるの?
光の粒の作りだした文字に思わず見とれてしまう。
触ってみたい。ものすごい触れてみたい。あれは掴めるのだろうか。試してみたい。好奇心が止まらない。止められない。
気がつくと、宙に浮かぶ光の粒に左腕が伸びていた。
光の粒はやっぱり掴めない。
うぅぅぅ。歯がゆい。なんてもどかしいんだろう。
「き...」
あの光の粒を瓶に詰めて保管しておきたい。
なんとかできないのだろうか?
この世界の科学を利用すればもしかしてできるのか?
賢者様に頼めばなんとかしてもらえるかな?
「君、もうそうそう戻ってこようかぁ」
「はい?」
頭の中でエルフの賢者の声がして、思わず返事を声でしてしまった。
回りをみると、側近の人が目を丸くしており、エルフの王もまた目を丸くしている。2、3歩後ろでエルフの賢者と小人の賢者は苦笑いを浮かべている。
「あー、そのー、すいません!」
なんだか、ものすごく場を壊している事に気づき大きな声全力で謝る。
空気が読めなくて、マジすいません。
目をつむり腰を90度に曲げて頭を下げる。
回りからクスクスと笑いが聞こえる。
超はずい。マジはずかしい。
すべては自分が原因、賢者が悪い訳でもなければ、エルフの王が悪い訳でもない。
「消えてしまいましたので、
もう一度手の甲を出してもらえますか?」
側近の方に声をかけられる。
すぐに頭を上げて、手の甲を側近に突き出す。
耳まで真っ赤になっている自分をみて、小人の賢者とエルフの王妃が笑う。
さすが親子。笑いのツボは同じらしい。
小人の賢者を睨みつけると、小人の賢者はクスッと笑う。
光の粒は文字となり、宙を舞ってエルフの王の下へ行く。
両手で太ももをつねって好奇心を押さえ込む。
我慢だ。我慢だ。我慢だ。
その様子を見て、笑いこらえず小人の賢者は笑う。
小人の賢者は、俺にとっても敵決定!
エルフの王は光の粒を眉間にしわを寄せてみている。
ん?なんだろ。あまりに悪い成績すぎて、弟子失格とでも言うつもりか?
いや、それならそれで、自分はもういいけど。
「ピデッ・・・」
背後からものすごく痛い蹴りが飛んできた。
そのあまりの痛さに叫び、鼻からも一気に空気をはき出した為に鼻水を玉座の間に思い切り飛ばしてしまった。




