異世界2日目エルフの城(4)『打ち上げ』
暗闇の中、4人で奥へと進んでいく。
自分には真っ暗闇で何も見えないが、賢者には見えているようだ。
火の魔法とかで、明かりをつけてくれればいいんだけど、
なぜそれをしようとしないんだろう。
賢者の顔をチラチラと見ているが、明かりをつけてくれる様子はない。
暗いなら明かりをつければいい。
ここは魔法が利用ができるんだから、火をつけて照らせばいい。
誰でも考えるあたり前の事。それでも賢者はそれをしようとしない。
「君、ここで全員酸欠で倒れたいのぉ?」
「はひっ?」
「こんな空間で馬鹿みたいに火をつけたらぁ、
全員酸欠になって、動けなくなるわよぉ」
「そなの?!?!」
賢者の表情はあきらかにあきれた表情になる。
でも漫画やアニメだって、それにラノベだって、洞窟に入る時は火をつける。
そんなに簡単に酸欠になるの物なの?
「ここは自然にできた場所じゃなくて、
お城の地下に作られた人工的な空間なんだよ。
だから、空気の量ってのは限られてるんだぁ。
出口がわかるように、
風の精霊が出口から風を送ってくれてるけど、
どこかに穴がある訳ではなくって、
密閉された空間なんだよ。
だから、火の魔法とか使って酸素を使っちゃうと、
かなり危ないかなぁ」
小人の賢者が教えてくれる。
この暗闇の洞窟みたいなのが、人工的に作られた地下空間?
「いやこれ普通に浮遊大陸にできてた洞窟とかじゃないの?
もしかして、ここはお城の地下で、そこに転送されたって事?」
「うん。そうだよ。
お城のトラップの転送魔法で、この空間に転送されたんだよぉ」
小人の賢者が答えてくれる。
肌に感じる風もどこかに穴があるからではなく、風の精霊の力。
人工的に作られた密閉された空間。
そりゃ、明かりがない理由もうなずける真っ暗な訳だ。
マッチやライターがあればと考えていたが、それがあったらやばかったという事だ。
なくてよかった。
あったら、速攻で使っていただろう。
「それで、そのおまえの孫も同じようにトラップにひっかかって、この場所にいるのかよ?」
「そうよ。
ちょっと外に遊びに行こうと思ったんだけど、
また罠の場所が変わってて、ここに来ちゃったの」
「・・・また・・・かよ」
どうやらエクエアは何度もこの場所に来ているらしい。
何度も来ているということは、何度も抜け出そうとしているということ。
どんだけ問題児なんだよっ。
「それじゃ、私はしばらくここにいるからまた後でね」
エクレアはすぐに足音を立てて離れていく。
なんでここに残るんだろ?
「城に戻ったら、怒られるからここに隠れてるのよぉ」
「そうなの?」
エルフの賢者が深いため息をついている。
どうやら、エルフの賢者でも手がつけられない問題児みたいだ。
小人の賢者の一族。エルフの賢者の天敵みたいな存在だ。
暗闇の中で身体が急に重くなるような感覚が走る。
ぱっと下を見たが、魔方陣のような光はない。
「何がおきてるの???」
「風が上まで運んでくれてるんだよぉ」
「風が?」
「今立った場所に人が立つと、上の扉が開くのよぉ」
上を見ると、小さな光が見える。
その光は非常に小さい。
これ、お城の地下ってどんだけ下まで転送されてるんだよ。
「ってか、エクレアは大丈夫なの?」
「大丈夫よぉ。
今私たちは通っている場所と違う場所では、
ものすごい空気があの空間に流れこんでるから、
ちょうど空気の入れ換えにもなってあの子も喜んでるわぁ」
・・・ちゃんと考えられてるのね・・・
「さぁ。もう到着よぉ」
上を見ると、小さな光が四角形なのがわかる。
その小さな光の四角形はものすごい速度で近づいてくる。
出口に向けてじょじょに速度が上がっているようだ。
「おい。これってどうやって止まるんだよ?」
「止まらないわよぉ。空に打ち上げられるのぉ」
「はぁぁ?!」
笑顔で答えるエルフの賢者。
その表情はもうわかっているわよと言っている。
持病で遊園地などで遊んだ事がない自分。
産まれて初めての味わう打ち上げ系のアトラクション。
安全装置はエルフの賢者様。
・・・こんなの怖くない訳がない。
空を舞う自分とエルフの賢者。
両腕で必死にエルフの賢者に抱きつく。
もし、この腕を放したら間違いなく自分は自然降下して地面に叩きつけられる。
ふっと、身体の体重が抜ける感覚を全身が襲う。
上昇の勢いがとまる、頂点に達した瞬間だ。
もの凄い風の音が耳に入ってくる。
もう何も聞こえてこない。
どこかのアニメで、打ち上げられ落ちていく中を、
男と女で手をつないで降りていくというシーンがあったが、
そんな余裕は全くない。
こんな中で会話とか絶対にありえん。
もう無理!!!!!
落ちていく。もの凄い速度で落ちていく・・・




