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異世界初日(18)

エルフの賢者におんぶされて運ばれる。

まだ動かない方が良いと注意という名の脅迫を受け、

頭に軽い衝撃を受け、意識を無くしておんぶをされている。

素直にすぐに意見を聞かなければ、意識を失いエルフの賢者の思い通りになる。

絶対的強者には逆らっても意味はない。

改めてその事を思い知った。


隣には係の人をお姫様抱っこする小人の賢者。

小さな男の子にお姫様抱っこされる成人女性。

自分たちの世界では完全に逆だろ?っていう突っ込みたくなるが、

ここは異世界、小人の賢者はドワーフで力持ちなのを忘れてはいけない。


もし、係の人が今目を覚ましたら、間違いなくまた意識を失うんだろうなぁ。。。


係の人にとって、今日は厄日だと思ったのはどうやら軽率だったようだ。


「賢者様。いつまで自分はおんぶされたままなんでしょうか?」


「今日はこのまま屋敷に帰るからぁ」


「このまま・・・」


女性におんぶされた状態で屋敷に帰る。

恥ずかしいだけでなく、帰った時にポットやカップたちにからかわれるのが想像できる。


エルフの賢者は隣を歩く小人の賢者に視線をむける。


「こいつが一緒にいるのよぉ。

 街の中で何がおこるかわからないわぁ


 だからぁ、今日はもう帰りましょぉ」


「ちょっとその言い方、ひどくない。

 呼んだのは君だよね」


エルフの賢者に小人の賢者がくってかかるが、エルフの賢者はそれを完全に無視している。


「えっ、もしかして街の中いかないの?」


話の流れから街の中に入らない勢いだったので、思わず確認のために口を開いた。

ここまで来て、街に入らずに帰るとか残念すぎる。


「こいつがいるって事もあるけどぉ

 今の君をつれて街の中に行くのは危険すぎるわぁ」


「いや、街の中って安全じゃないの?

 街の中が危険っておかしいでしょ」


「こいつがいる事で危険度がはるかにあがるよぉ」


エルフの賢者が小人の賢者をチラッとみて話すと、小人の賢者が苦笑いを浮かべた。

どうやら原因は本当に小人の賢者にあるらしい。


街にいかないという事であれば、危険もないだろうし、下ろしてもらっても大丈夫なんじゃないだろうか?


「君はもうしばらくは動かない方がいいかな。

 今激しい動きをすると、

 身体と魂とのつながりが切れちゃうかもしれないからねぇ」


「身体と魂とのつながり・・・ね」


どうも、賢者のいう話は難しい。

つか、なんで説明がないの?

頭の良い奴って、頭の悪い奴が何がわからないのかわからないって言うけど、

本当にそうだな。


建物の待合室のような所にたどりつくと、まだ多くの人が建物の中にいる。

集まる視線。エルフの男性からは殺気めいた視線を送られ、

エルフの女性からは、すぐとなりの小人の賢者にむけて熱視線が送られている。


「なあ、なんで認識阻害の魔法使わないんだよ」


「君のお師匠さんに叱られたくないんだよ」


ああ、そういう事ね。


小人の賢者は、建物の奥から出てきた数人の男の人に係の人を渡す。

そして、両手のあいた小人の賢者は、笑みを浮かべて手を振っているエルフの女性陣に手を振り返す。


それに気づいたエルフの賢者は大きなため息をつき、小人の賢者に足蹴りをする。


痛がる素振りも愛くるしい。

この場所にものすごい熱視線が送られているのがわかる。


ーー結局叱られてんじゃん。


「早く登録証を受け取って帰るわよぉ」


エルフの賢者はそう言って視線を建物の関係者にむける。


すぐ近くの窓口におんぶされたまま運ばれる。

背中に痛いほどの視線を感じる。


「それでは、利き腕を出してください。」


係の人に言われて、右腕をだす。

ものすごい速度で手の甲にペンで魔方陣を書いていく。


「すごっ」


ものすごい速度で正確に魔方陣を書いていく様子を見て思わず口から声がでてしまった。


「この係の人は、機械人形(オートマター)よぉ」


「はぁ?!」


「エルフの街は、機械人形を多く利用してるよねぇ」


すぐとなりに立っている小人の賢者が、

エルフの賢者を横目でみながら嫌みっぽく言っている。


「なによぉ。

 ドワーフ族だって利用しているでしょぉ。


 この街は人手が足らないから仕方がないのよぉ」


「僕らは、機械人形の権利も認めて...」


小人の賢者が話し終える前に、エルフの賢者の足蹴りが入る。


「もう、暴力反対っ!」


蹴られた小人の賢者は、ほほを膨らまし、

少し距離をとって空手の構えのポーズをとっている。

その姿に、少し離れた所から女性陣の悲鳴と歓声があがる。


「いつも、こんな風なのか?」


「言ったでしょぉ。

 戦争になったのは、あの子にも問題があるってぇ」


「完全に、自分の武器を理解してやってるよな」


「そうよぉ」


はぁ。おまえもだよっとツッコミを入れたい所だが、やめておこう。「はい。できましたよ。確認をお願いします」


手の甲に描かれた魔方陣。書かれている内容は全く読めない。

読みようがないので、確認のしようがないのだが。。。


「ちょっとぉ。なんで自分だけ見てるのぉ。

 君、まだ文字読めないよねぇ」


「あっ、はいはい。そうですよね。確認をお願いします。賢者様」


賢者に言われて、手を賢者の見える位置まで下ろす。


「君、めずらしい物とかあるとぉ。

 それに集中しちゃって回りが見えなくなるのは、

 本当に悪い癖よぉ」


防空壕での出来事や、空の散歩の時を思い出し苦笑い。

何度注意されても、これを直すのは難しい。


「いいわねぇ。

 これで登録してちょぉだい


 手の甲を係の人が見えるようにしてぇ」


賢者に言われて、係の人に見えるように手の甲を差し出す。

係の人は、自分の手の甲に書かれた魔方陣の外枠を指でなぞる。


手の甲に書かれた魔方陣は光の粒に変わって、しゃぼん玉のように浮遊して消えていく。


「なに、これ凄いんですけど」


手の甲を見ると、魔方陣が消えている。

もう一度見たいから、書いてくれとお願いしたい。


「はい。これで登録完了です」


機械人間であるはずの係の人は、こちらに笑顔をむけてくる。


この人、本当に人形なの?

言われないと、これは気づけないレベルだよ。


「それじゃぁ、登録も終わったしぃ。

 一気に駆け抜けるわよぉ」


「はぁい」


エルフの賢者に小人の賢者がなんとも気の抜けた返事を返し、おんぶされている自分の背後に抱きつく。


「ぐわぁっ・・・ぐどぅじっ・・・」


突如顔面を襲う空気の壁。

景色が流れるというレベルじゃない。

頭が一瞬置いていかれたのを、背後にいた小人の賢者が支えてくれる。

視界は一気に真っ暗闇に。

自分の身体の中を流れる血液が全て自分の背中や頭の後ろ側に行ったのだろう。

完全にブラックアウト現象だ。


意識が薄れてっ・・・っと途切れようとした瞬間、視界が明るくなり青い空が広がった。


「とうちゃ〜く」


小人の賢者はそういうと、自分の背中からひょっと飛び降りて、地面におりる。


「ここまでくればぁ

 大丈夫ねぇ」


エルフの賢者は汗ひとつかかず、息もきれていない。


「・・・おまえら一体どういう神経してるんだよ」


「どういうって、何が?」


小人の賢者は、自分が何を言いたいのか理解できていないらしく、口をポカンとして上目遣いで自分を見ている。


ぱっとそれを見ると、子供もいない、彼女もいない自分でも愛おしく思ってしまう。


「あれぐらいの勢いで逃げないとぉ

 みんなついてきちゃうのよぉ

 中では魔法禁止ってなってるんだけどぉ

 みんなこいつを追いかける時は見境なくなっちゃうからぁ」


・・・すべては小人の賢者が原因なのかぁ


エルフの賢者におんぶされたまま、肩で大きくため息をつく。

それに気づいたエルフの賢者も同じようにため息をつく。


そんな二人を見て、笑みを浮かべる小人の賢者。


この賢者もかなりの問題児だな。


ただ2人のやりとりを見ていると仲の良い兄弟にも思えてくるから不思議だ。



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