異世界初日(16)
待たされて苛立ってしまったエルフの賢者により、
自分と小人の賢者に対して説教がしばらく続いた。
そもそも同じ賢者を測定器扱いって、それおかしいだろ?
普通測定器っていうなら、人じゃなくても物を思い浮かべるだろ?
それに、なんで俺まで説教なんだよ?
悪いのはこいつだろ。。。
心の中で、エルフの賢者に愚痴を言うたびに、鋭い視線が刺さってくる。
・・・
やっと説教から解放されて、大きく背を伸ばす。
小人の賢者はエルフの賢者からなおも説教を受けている状態だ。
それを見て、目を輝かせ、少しずつ近づいていく係の人。
ちょっと離れた所で見ていると、あの2人の賢者は兄弟にも見える。
美人なお姉さんが、かわいい弟を叱っていると言われたら、人間だったらみんな納得してしまうだろう。
しばらくすると、小人の賢者が走って逃げる。それを追いかけるエルフの賢者。
2人の賢者のおいかけっこが始まっている。
エルフ族とドワーフ族で過去に戦争があったと話していたが、
あの2人を見ている限り、なんだかんだで仲が良さそうにみえる。
「君。助けてよぉ」
小人の賢者が走りながら、こちらに助けを求めてくる。
小人の賢者を追いかけるエルフの賢者の顔を見ると、
助けたら、自分にも被害が及ぶ事が簡単に想像できる。
空の部屋で、異世界から来た人間と小人の賢者とエルフの賢者が走り回る。
一番最初に脱落したのは、異世界から来た人間。
体力測定で6歳と判定されたほどの体力だ。
速攻で体力切れで、空の中を倒れ込む。
空の中で空を見上げて大の字になって寝転ぶ。
もしかしたら、今のが人生で初めて本気で走ったのかもしれない。
病気から解放された身体。自由が今ここにある。
寝転がっていると、小人の賢者の頭を鷲掴みにしてエルフの賢者が近づいてくる。
小人の賢者は完全に地面に足がつかない状態だ。
足をじたばたするかわいい男の子。
その愛くるしさに思わず笑みをこぼしてしまう。
小人の賢者がエルフ族の女性に人気があるのがわかってしまう。
しかし、、、それで戦争にまで発展するとは。
「なにがぁそんなにおかしいのぉ?」
「いや、2人があまりに仲が良いから」
エルフの賢者の目から殺気めいた物を感じる。
「エルフの賢者は短気で暴力的で有名だから気をつけた方がいいよぉ」
エルフの賢者の視線が小人の賢者に移り、
小人の賢者の頭をエルフの賢者が見えないが確かにそこに存在する地面に叩きつける。
「ほらねぇ」
地面に顔面を叩きつけられても、全然こたえていない感じで小人の賢者は笑みを浮かべている。
いや、今のはエルフの賢者が悪いんじゃなくて、小人の賢者が悪いんだと思う。
やっぱり、小人の賢者も相当厄介そうだ。
あまり関わらない方が身の安全なんだろう。
「やっぱりこの子には首に縄をつけておくぐらいが必要かしらぁ」
「そんな事したら、また戦争になるからやめた方がいいと思うぞ」
エルフの賢者のこの案は、間違いなく問題になる。
そんな事をしたら、ドワーフ族も黙っていないだろう。
エルフの賢者から解放された小人の賢者が駆け寄ってくる。
小人の賢者は自分の左腕を枕にごろんと寝転ぶ。
ため息をつき、小人の賢者に小声で訪ねる。
「なぁ。小人の賢者様。
それが自殺行為だって事、わかってやってんの?」
「そうだね。きっと怒るだろうね」
小人の賢者の返事を聞いて、もう一度ため息をする。
この賢者、最悪の確信犯だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エルフの賢者による2度目の説教タイム。
小人の賢者と自分の2人がエルフの賢者の前で正座。
完全に小人の賢者に巻き込まれ、叱られている。
賢者ってみんなこんな奴らばかりなのだろうか。
異世界にほんの少し夢を抱いていたんだけど、
この先の事を考えると早く元の世界に帰りたくなる。
前回と同じように、先に解放されたので、立ち上がって背筋を伸ばす。
空の部屋を見渡すと、係の人が立っている。
係の人は、つかず離れずこちらを眺めている。
あの係の人も、仕事しなくて良いのか?
俺たち以外にも検査に来ている人がいるんじゃないのか?
あの係の人も完全に仕事を忘れてるような気がする。
少し離れた所で空の部屋でゴロンと寝転ぶ。
さっきから結構眠い。
小人の賢者様を待っている時もそうだったけど、
この眠気はいったいなんなのだろう。
雲一つない空の部屋。
眺めているとさらに睡魔が襲ってくる。
・・・
気がつくと、すぐ近くにエルフの賢者いる。
小人の賢者はエルフの賢者に持ち上げられている。
時間が飛んでいるような気がする。
睡魔に負けて寝てたのか。
ため息をついて1度閉じた目をあける。
エルフの賢者が表情が変わり、心配そうに自分を見ている。
さっきまで小人の賢者を持ち上げていたのに、小人の賢者の姿がない。
えっ・・・
次の瞬きをした瞬間、エルフの賢者の姿も消えた。
そして、エルフの賢者が立っていた場所と同じところに小人の賢者がおり、自分の手を握っている。
いつの間に?
「もうそろそろ休んだ方がいいんじゃないかな?」
「うちの賢者様の姿が消えたんだけど、なんで?」
「その事なら心配いらないよ。
彼女は外でちゃんと君を見守ってるから。
それより、もうかなり眠いでしょ?」
「ああ、かなり眠いけど」
「かなり運動したし、少しの間休もうか?」
「ああ・・・」
空の部屋、小人の賢者に支えられてゆっくりと寝転ぶ。
少しずつ意識が遠くなっていく。
・
・・
・・・
暗闇の中で目が覚める。
真っ暗で、自分の手も足も見えない。
「やあ、意識を取り戻したかい?」
聞き覚えのある男の声だ。でも誰だろう。
「ごめんねぇ。もっと早くに気づいてたらぁ」
聞き覚えのある女性の声。誰?
しゃべろうとしたけど、口がない。
手を顔に持ってこようとしたけど、腕がない。
目を閉じようと思ったけど、まぶたがない。
身体が動かないという感覚ではない。
身体がない。
???
「どっかの誰かさんが、君の魂の外殻に傷をつけていたのさ
だから、今はその魂の外殻の修復中だよ」
「悪かったわねぇ」
「エルフの賢者様は力任せにやるからこんな事になるんだよぉ」
「そうだよ。
僕が気づかなかったら、この子は間違いなく闇に喰われてたよ。
ヒビから漏れ出してしまった分は、大精霊様お願いします」
「賢者様の精神体で補充すると、彼の精神体ではもたないだろうからねぇ」
ここはどこなんだろうか。
聞き覚えのある声は3つ。ただ、誰か思い出せない。
「さぁ、私と一緒に戻りましょぉ」
・・・
・・




