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異世界初日(6)

部屋を出ると、廊下には真っ赤な絨毯がひかれている。


ポットはその絨毯の上に着地する。


「それじゃ、館の中を案内しながら玄関まで行くから、絨毯の上によつんばいになってぇ」


「ん?よつんばいになるってなんでだよ?」


「立っていたいなら、立ってていいけどぉ。

 あとできっと後悔するよぉ」


この世界の事はまったくわからない。

ポットの言うことを素直に聞いて、絨毯の上でよつんばいになる。


「それじゃ、館の中をぐるっと回って、玄関まで行くよぉ」


ポットが言うと、絨毯が動き出す。


「ぬぉぉぉぉぉっ!!マジかよ!」


絨毯が動き出した瞬間、後ろに転げそうになったが、

手で絨毯を握りしめて、なんとか踏みとどまった。


えっ、えぇぇぇっ


もの凄い速さで速度が上がって行く。空気がだんだん壁になってくる。

髪型なんかももう崩れまくりでオールバック状態になっているだろう。

いくつものドアを横切っていく。

この建物の大きさがまずわからないけど、

部屋もいくつあり、ポットが紹介をしてくれるのだが、

その声が入ってこないというか、覚えるの無理!


「ねぇ。君」


「なっ、何?」


「賢者様の事、よろしく頼むよぉ」


館の案内で部屋の名前を言っていた時と比べて、あきらかにポットの声が元気がない。


「賢者様には、君より前に2人弟子がいたんだぁ。

 だけどぉ、2人とも他の世界にとられちゃったんだぁ」


ーー弟子をとられた?


「なっ、うわっ」


質問をしようと思って口を開いたら、もの凄い勢いで空気が口の中に入ってきて、後ろに体を持っていかれそうになった。

絨毯を強く握りしめて、状態を元の位置に戻す。


「なんでまた、弟子をとられたりするんだよ?」


「2人には才能があったのさぁ。

 だから、賢者様の弟子にしておくのは危険だってぇ」


・・・


「だからって、弟子をとられるとか、よくあの賢者が許したな?」


「世界の平和の為には仕方がなかったんだよぉ

 だから、君にはそうならないでほしい。

 どんな事があっても、賢者様の弟子でいてあげてぇ」


「まぁ、その前に弟子になるって話を今おまえから聞いてびっくりしてんだけどな!

 本の翻訳の話しか聞いてないしよ。

 できる限りがんばるよ」


「賢者様はいつも説明がたらないんだよねぇ。」


ポットが回転したが、正直どちらが前でどちらが後ろかわからない。


「今、それ俺の事を見つめてる感じ?」


「えっ、今は進行方向を向いてるよぉ」


ーーわかりづらい。


「おまえ、今日街から帰ってきたら、絶対に目と口書いてやるからな。

 みんな、どちらが前でどちらが後ろかも全くわからね。

 そんなんだと、俺もコミュニケーションがとりにくいわ!」


「君に顔を描いてもらうのは、ちょっとやだなぁ」


「文句を言うなら、中途半端なサプライズをした賢者を恨め」


あたり前の事だが、ポットの後ろ姿をみても、何も変わらない。

これ、本当にうまくやっていけるかマジで自信ないぞ。


「もう少しで到着だからぁ。止まるから気をつけてぇ」


ポットの声を聞き、停止に備えようと思ったが、

どうすればいいかわからない。


「どうすればいい?」


・・・絨毯をしっかり握っていたはずなのに絨毯の感触がない。


天井が見える。

なぜか景色がスローモーションになり、足下から頭上へと流れていく。


ああ、これあれだな。

止まった勢いで前転っていう、ジャックナイフって奴だな。


目をつむり、激突に備える。


こっちの世界にきても、自分の人生踏んだりけったりだよな。

つか、この動く絨毯とか、家の中でおくの危なすぎじゃね?

ジェットコースターには、乗った事がないけど、これより凄いのか?

ポットの奴も、先にいろいろ教えてくれよ。

自分は、この世界には今日初めてきたっていうのにさ。

これで壁に激突してまた痛い思いすんだろうよな。

はぁ〜っ


・・・


・・・


・・・


「君は、相変わらず心の中がおしゃべりだねぇ」


目を開けると目の前には、賢者の顔が見える。


ーーなんで?


自分の身体は賢者に抱きかかえられている。

よつんばいの状態から、急ブレーキでジャックナイフ

空中で前転をしてそのまま賢者にお姫様抱っこ。

顔が熱くなるのがわかる。


「おっ、お待たせしました」


ーー超はずかしいんですけどぉ。


「もうしばらく、このままにしておこっかぁ?」


「あ、いえ、結構です。下ろしてください」


どちらが前で、どちらが後ろかわからないポットが宙に浮いている。


「おまえ、家に帰ったら絶対に顔書いてやるからな」


「八つ当たりはやめてよねぇ

 本当は嬉しいくせにさぁ」


自分とポットとのやり取りを見て、笑顔を見せる賢者。


「それじゃ、街まで行くわよぉ」


扉を開けて、外に出る。


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