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夢見る物語   作者: 照橋桃花
第一章 羽の無い妖精
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第11話 朝起きたら鍛錬だ!

「モモさん、メイド辞められるって、本当ですか!?」


「モモさん…」


「モモさーーん!」


 買い出しからの帰り道、部下達が、なぜか、来た。


「はぁ」


 どこでそんな噂が立ったのか、心当たりは…あるが、まさか本当に間違えられるなんて、ちょっとびっくりだ。


「私はメイドをやめませんし、騎士にもなりませんよ。それよりも皆さん、仕事に戻ってくださいませ」


 きっとまた、レナとサナのせいだろう。あの二人のいたずらには、いっつも呆れる。


「皆さん、私はメイドを辞めませんし、騎士にもなりません。どうか、仕事に戻ってください」


 そう言うとメイド達は、ほっとして、でも何か残念そうに仕事に戻っていった。

 本当に、仕事をないがしろにしてまでおしゃべりしたり、噂を確かめたりするのはやめてほしい。彼女らがおしゃべりしている間の仕事も、どうせモモが担当しなければいけないからだ。

 まあ、モモも自分の仕事はすぐに終わって、余力があるというのが正直なところだか。


 でも。それでも、モモの朝は今日も憂鬱だ。


 最近は秋晴れが多いのに、今日はひたひたと染みわたるような雨。朝の掃除を終えたモモはそっと窓から外を見ると、一つため息をついて、部屋を出た。


 * * * * * * *


 翌日。今日が、愛莉の聖女としての仕事初めての日だ。だが、朝に弱い愛莉が早朝5時に起きた理由は、別のところにある。


 そう、モモに鍛えてもらえることになったのだ。愛莉の無茶なお願いにも付き合ってるれるモモには、愛莉も感謝が尽きない。


 愛莉は机に置いてある運動用の服を着た。宗教上の関係で、この国の女性は膝より長いスカートを着なければいけないそうで、運動用の服とはいっても、騎士団の隊服に似せたブラウスにスカートがくっつけてある、騎士団風ワンピースなのだが、清潔感があってかなり可愛い。愛莉は早速くるりと回ってみる。


「うーん、やっぱりロングスカートが一番かわいいんだよなー」


 愛莉が鏡の前でスカートをひらひらさせていると、ドアをノックするトントントンという音が聞こえてきた。


「モモさん‼」


「はい、モモでございます。まぁ、聖女様、ドレスがとってもお似合いで良かったです!」


 ドアを開けるなり、いつもの可憐な笑顔を見せるモモ。


「わぁ、ありがとうございます!モモさんが仕立ててくれたおかげです」


 愛莉は姫らしく、ロングスカートの裾をつまんでお辞儀してみせた。


「聖女様素敵です!それもいいのですが、そろそろ練習場に行きましょうか。それほど時間もございませんので」


「はい‼」



 いつも騎士団が練習しているこの部屋を使わせてもらえるなんて、愛莉は何だか早く上達しそうな気分だった。


「それでは、早速始めましょう。長々と説明するより、実際に触ってみるのが一番ですから」


 そう言ってモモが差し出したのは、つるつるに磨きあげられた銀色の剣だった。


「うおお‼」


「これはレイピアという剣です。切ることもできますが、特に突きに特化した剣なんですよ。初心者の聖女様のために、少し小さく、軽いものを特注いたしました」


 そう言って、モモは自慢気に笑う。


「しかし、危険な物なので気を付けて使ってくださいね」


「はい、もちろんです!それでそれで、どうやって持つんですか!」


 せかす愛莉に、モモも苦笑いだ。


「落ち着いてください。グリップの付け根を片手で握るんです。」


「こうですか?」


「はい。ではまず、振ってみましょうか」


 シュッ、シュッ。モモのお手本通りにただただ剣を上から下に振り下ろしていく。


「おお!何だか、何でも切れそうな気分です!テレビとか切ってみたいな~。中どうなってるんだろう?」


「テレビ……?そんなことより、素振りに集中してください!」


「は、はい!」


 と言いつつも、五分後。さっきまでのワクワクはとっくにどこかに失せてしまっていた。と言うのも、愛莉の体力が限界に近づいているからである。さっきまでモモとそろっていた剣を振る『シュッ、シュッ』という音が、今は全く合っていない。


「モモさん、剣が鉛のように重いです………」


「あら、本当ですか?そちらの剣は、聖女様の体格にぴったりだと思うのですが……では、あと六十回で今日は終了としましょう」


「六十回ですね……よぉぉし」


『ふんっ‼』


 愛莉は残った力の限りに剣を振った。が、振ったはずのその手にはもう剣が握られていない。


「あれ?」


『ギッギッギギン‼』


 耳をつんざくような金属音が、愛莉の後ろで響いた。


「聖女様!」


 いつも笑顔を絶やさないモモの顔が、いつもと違って怖い。


「わわわわわわ、ごめんなさいモモさん。手汗でうまく握れなくって……」


 愛莉が涙ぐんで言い訳している間に、モモは素早く愛莉の剣を拾ってきた。


「………大丈夫ですよ。失敗は誰でもします。次はきっともっとうまくできますよ!」


 すっかりいつもの笑顔を戻したモモさん。やっぱり可憐だ。


「うぅ……ありがとうございます」


 尊敬のまなざしでモモを見つめ、愛莉はまた剣に手を伸ばす……が。


「え?聖女様、もちろん剣は没収ですよ?」


「えぇ!?」


 あまりのショックで、愛莉は開いた口が閉じない。


「当然です。真剣はとても危険な物。剣を正しく扱えるようになるまでは、木刀で鍛錬です!」


「そ、そんな…」


 その後、剣置き場に木刀を取りに行った愛莉は、名残惜しくモモにしまわれる愛莉のレイピアを眺めていたのだった。

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