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そこにいたのは如何にも医者のような人間だった。白衣を着て、セミロングの茶髪を首のところで縛っていた。眼鏡をかけていた彼女は笑って言った。
「はじめまして。私、ラインスタイル・ホークキャノンと申します。今回フランシスカ=リガンテ=ヨシノの健康管理を担当させていただきます」
「ホークキャノン? 聞いたことのあるような……」
サリドはそれを聴いて少し唇を歪めたが、
「はい。先日は妹がお世話になりました」
「……あっ!」
「どうしたサリド?」
「フィリアスさんだよ。エンゼルハンドの。なるほど。彼女のお姉さんなのですね?」
サリドが言うとラインスタイルは首肯する。
「私どもホークキャノン家は医学に秀でた家系でして。代々医師などに就くのが多いのです。シスター部隊にも入隊している人も多いですし。……まあ姉は違いましたが」
「姉……?」
「ライズウェルトをご存知ですか」
ラインスタイルは言ったが、サリドには聞き覚えのない名前だったし、それはグラムも同じだろう。
「やはりわかりませんか……。実はレイザリー軍に入隊しているらしいんですね。たしか通信士になるとかどうとか。だから嫁の貰い手が見つからないのよ」
「それはあなたも同じよ? ラインスタイル」
フランシスカが少し苛立ちしながら、そう言った。
「……、フランシスカ。どうする? まだ準備を始めるには余裕があるだろうし……。ちょっとこの人工浮島を巡ってみたら? なんか発見があるかも」
ラインスタイルはたくさん積まれているダンボールのうちのひとつの封を切り、そこから水筒を取り出し蓋を開け、中に入っている液体を口に含んだ。なんとなく彼女の口から溢れて洩れ出た色がどうみても飲める色ではなかったのが気になるところだが。
「変わり者だろう。あいつは」
フランシスカは傍にいたサリドに小さく呟いた。
サリドはただその風景を見て苦笑いすることしかできなかった。