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……そんな物騒なことが起きてるとはさも知らないだろうオリンピアドームは今日も雲ひとつない青空であった。
世界トライアスロンの開始を明後日に控えたオリンピアドームは多少の喧騒はあるものの着々と準備が進められていた。
選手とその関連する人間は既に入場を許されており、それらを含めるとあとはスタッフくらいしかいないので人通りは疎らである。
「……んで、なんで、俺らがここにいるんだ? サリド」
「仕方ないだろ、グラム。毎年この時期にはこれがあることくらい解ってるんじゃないのか? 選手の防衛役抽選。その度にプロのボディーガードを選ぶとお金が嵩むし機密性が守られる、とかどうとかで」
グラムの発言にサリドは携帯端末を弄くりながら――なんとなく何かを調べているようにも見てとれるが――言った。
「まぁ、そうなんだろうけどな……。なんで“あいつ”の護衛なんだよ!!」
「グラムは結構なめてるかもしれないけど彼女あれでも相当な実力の持ち主なんだよ。しかも天性の素質を持っていて、かつ努力家。これはさすがの君も真似できないんじゃない?」
サリドはふざけたように小さく笑った。
「で、その話は出来たら本人が居ないときにして欲しかったんですけどねぇ」
フランシスカはサリドの後ろで眉を痙攣させながら、言った。
「いやはや……。聞こえてたか?」
「当たり前でしょう?! あんたノータのことなめてるでしょう!!」
「別になめては居ないんだが……。そんな言葉遣いでいいのか? これでも一応世界大会だから粗を世界から探されてしまうぞ」
「そんなの、探せるものなら探せばいいの。私はそんなの一切ない完璧ですから」
ああそうかい、と適当に相槌をついてグラムは天を仰いだ。
「着いたぞ」
そこにあるのは、天が霞むほどの高さがあるマンションであった。
マンションは一人の選手がワンフロアーもらえるという非常に豪華なつくりであった。
「えーと……27階か。グラムよろしく」
サリドは荷物を抱えて重たそうに苦悶な表情を示した。
「へいへい」とやる気のない声でグラムはエレベーターにある27のボタンを押した。
サリドたちを載せたエレベーターが27階に到着し、扉が開いて三人の目に入ってきた光景は、なんとも形容しがたい景色でもあった。
まず、あるものは家具全般。だから棚からテレビからパソコンまで。その全てが最高級の品々だった。なぜ解るかといえば、
「凄いな……。まさかここまで最高級だとは。ノータっていつもこんな感じなのか?」
本をいつも貪るように読む男、サリドがいたからであった。
「まぁね。でも私は軍職になったばっかだし。私より仕事が長い人間は国にも因るけどこれ以上の装備なんじゃないかしら?」
フランシスカはため息をついて首を横にゆっくりと一往復振りながらそう言った。
「まじか……。侮れない。さすが国のVIPだけはある……」
グラムは呻くように呟いて、ふと思った。
確かに、家具はもともとオリンピアドーム側から支給された、いわば備え付けのものである。
しかし、
なら“そのまわりにバベルの塔のごとく積み上がっている大量のダンボール”はなんだ?
グラムがそんなことを考えていると、奥から声が聞こえた。
「おかえりー」
「……ただいま」
フランシスカは鬱陶しい素振りを見せた。もう数える気も失せるくらいの回数彼女はこれをやっていたのだろうか?
「さっさと出てきなさいよ」
フランシスカは次いで付け足すように言った。




