興生での普通の生活
とある施設の窓から、白い髪がちらりと覗く。
「懐かしいな……昔より平和になってるみたいで、良かった」
そう言って椅子に体を預けるレリア。
その言葉の内容に反して、憂鬱そうな表情をしている。
「今度は戦わなくてもいいのかな……」
その時、リレイの部屋の方から何やら物音がした。
「……何?」
背中に手を回し、そこで手元に銃がないことに気づく。
「……平和を求めてる割には、戦いが身につきすぎてるね」
自嘲気味に笑うレリア。
その後、リレイの部屋からは健人の声がした。
「おい! お前はそんなすぐ暴走するな! すま――リレイ。うちの研究――でな」
途切れ途切れだが、レリアは健人がいることと、会話内容から特に問題はないと判断したようだ。
「私も普通に……なれるのかな」
◇
朝七時頃。
「あ、おはようリレイ」
『おはよう御座います。レリアさん』
そう言って自分でドアを開けて出てきたのは少し一回り大きくなったリレイだった。
「……なんか大きくなった?」
『その通り! 手をつけてもらいました』
そう言って折りたたまれていた様子の腕を展開した。
その様子は――
「ちょっとアンバランスじゃない?」
『……言わないでください。これでも頑張ってもらったほうなんです』
そう言ってリレイはディスプレイ上の目をそらした。
『というか、昨日いきなり扉の向こうからガチャガチャと音が聞こえて来たかと思ったら、直後『喋る球体はここか!』なんて言って研究員が突っ込んできて大変だったんですよ』
「昨日の物音はそれね……あ、もしかしてそれって技術担当の人?」
『そうだったみたいなんですが、鍵を掛けているのにいきなりドアバーン! は驚きましたよ。勝手にピッキングは流石に勘弁して欲しいですね……』
「災難だったね」
『まあおかげで色々楽になったので、感謝ですね』
「あー、おはようリレイ。あとレリアさんもおはようございます」
「おはよう」
『おはよう御座います。そうだ、見てください星流さん。私、腕生えたんですよ』
そう言ってもう一度リレイは腕を展開した。
「うわなんだそれびっくりするわ! ……なんか変じゃね?」
『それを聞くのは二回目ですね……』
◇
「おはようあんた達。今日からあたし、藤原零子があんたたちの生活指導役をやらせてもらうよ。しっかりとこの都市で生きれるようにしてやるからね!」
そう言って袖を捲ったのは、エプロンを身に着けた中年の女性だった。
「よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
「よろしく」
「あたしにはあんまり丁寧にしなくても大丈夫だよ。もちろんそうしたいならそれでも構やしないけどね、はっはっは!」
そう言ってその女性、零子は快活に笑った。
「まずは基礎的なスケジュール説明さね」
◇
「生活費はその月の分がもらえるけど、配分は自分で考えなくちゃいけないんですね」
「そういったことをできるようにするためにあるこの『教育期間』だからね。でも、その辺りの知識は困ったらなんでも私に聞きな」
「分かりました」
「さてと、説明は終わっちゃったね……じゃあ時間もあるしあんたたちの基礎的な生活力でも図ろうかね!」
◇
「う、うーん。思ったよりもできなかった」
「私はそこそこかな……」
『私は自信がありますね』
「いい結果だね。レリアは完璧だし、星流とリレイもあと少しで完璧さ」
零子は満足そうな表情で頷いた。
「自信の割に結果が微妙みたいだね」
レリアは澄ました顔でそう言った。
『ま、まあこんなものですよ? ねぇ星流さん?』
「え? ……まあそうだな」
「次は……義務教育だね。行ってらっしゃい」
「そうえいば他の人はどのくらいいたりするんですか?」
「確か十五人くらいじゃないかね? そこから知識レベルごとだったりで分けられるから……一クラス数人程度さね」
「意外と少ないんですね……じゃあ行ってきます」
「はいよ」
◇
「じゃあ君らはそこの席ね……今日は君らだけになるかな」
そう言ったのは、クリップボードを持った黒髪黒目の男性教師だった。
「あ、俺は福田智也って名前だ。よろしくな」
(意外と学校って感じがするな……)
「よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
「よろしく……お願いします」
教室には机と椅子が三つ置いてあり、部屋自体のサイズは机と椅子がもう二倍前後は余裕で入りそうなくらいの大きさだ。
「確か君たちは旧文明を知ってるんだっけ?」
「はい、そうです」
「それじゃ多分ここは堅苦しい場所だって思ってると思うけど、君たちの礼儀はちゃんとなってるみたいだし、そこまでガチガチじゃなくて大丈夫だよ。まあ敬語は使ってもらおうと思ってるけど」
「なるほど……あ、じゃあ一つ気になることがあるんですが、他の人はいないんですかね?」
今いる教室には、星流たちの他には誰もいなかった。
零子は事前に一クラス数人と言っていたので、食い違いっている。
「本来ならいるけど、歩調合わせのために一緒の授業は受けられないだろ?」
「確かに……そうですね」
「はい、じゃあまずは……あ、授業道具は机に置いてあるから、それ使ってね。ペンとかノートもあるよ」
智也の言う通り、テーブルには筆記作業に必要なもの一式と、教科書らしき本が数冊置かれていた。
かなり用意周到なようだ。
「おお、凄いな……」
「とりあえず君らの実力図るために、テストするからね」
「い、いきなりテストですか?」
「大丈夫、間違っても特に悪いことはないよ。逆にあったら理不尽でしょ? さ、席ついて」
そう言って智也は軽く笑った。
「わ、分かりました」
◇
「よ、よし、まあまあだろ……」
『ふむ……まあまあといったところでしょう』
「うん、いい感じ」
「回収するぞー」
そう言って智也は三人の答案用紙を回収した。
「おっ、いい感じだね。これは……他の子と一緒でも大丈夫そうかな? クラスも考えなきゃだなー」
「よっし」
「ん? もう昼か……じゃあ一旦この辺で終わりだ、昼飯をどうするかは零子さんから聞いてるよな?」
時計の針は十二時を指し示していた。
「はい、大丈夫です」
「よし、じゃあ大丈夫だな。行って来い。あ、終わったらちゃんと戻ってこいよ?」
「分かりましたー。確か学食があるとか言ってたから……そこで食べようかな」
『いいですね。そうだ、レリアさんも行きますか?』
「気になるから……言ってみようかな」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




