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王様の奴隷  作者: ぷー介さん
19/42

ガルカン

「エル、店番を頼んでも良いか?客がいない間にハサミを修理に出しに行きたいんだが。」

「もちろん大丈夫ですよー!」

エレノアはロジェットの店の手伝いをしている。成人の儀まで残り1か月は続けるつもりだ。

コリンとの約束の日まであと一週間を切っていた。




エレノアは、市民の感情や情勢について常に敏感にあろうとした。今、国を支えている国民の不満は飽和状態に来ている。成人したら一刻も早く国政の改善を求められるように、少しでも説得力のある材料を探すのに必死だ。





ロジェットが出掛けようとしたとき、騎士団に所属している兵士が二人、店に入ってきた。よく、ガルカンと一緒に来ていた仲良し3人組である。

「エドガー、マーク久しぶりじゃねぇか。だが悪いな。俺は今から出掛けなきゃならねぇんだ。」

ロジェットが出掛ける支度をして、店を出ようとした時、エドガーと呼ばれる兵士が口を開いた。



「ガルカンが処刑されました。」




「…へ?」

店内は、静まり返った。


「今、何て言った?」


突然の報告に、ロジェットは意味を理解することが出来なかった。

しかし、報告に来た二人の様子は、今、聞こえた事は聞き間違いでは無いと理解せざる得なかった。

エドガーの声は震え、隣のマークは涙を流さないように歯を食い縛っている。二人とも腕を後ろ手で組み、騎士団の気を付けの姿勢をとっていた。

「おい、何て言ったんだよ!?」

ロジェットはエドガーの胸ぐらを掴んだ。


「子供を庇った事により、反逆罪として処刑されました。…ぐっ…ふぅ…」


口を開いたのはマークだった。マークは言葉と一緒に吐き出される悲しみを堪えるように右手で顔を覆った。しかし、手から大粒の涙が零れていた。


「あいつは…税金を滞納していた村の討伐に行ったんですけど…幼い子供まで殺すのはおかしいと、上司に意見したんです…そしたら…」


「意見しただけで、何でガルカンが処刑されなきゃなんねぇんだよ!!」

「俺達だっておかしいって思ってますよ!!だけど…この国は狂ってる…」

そこまで言ってエドガーは慌てて口を抑えた。今や、この国では、お互いを監視させ、国に異を唱える者がいれば告発され、最悪は処刑される。

騎士団の兵士だって例外は無い。




ロジェットはエドガーの胸ぐらを掴みながら放心状態だった。

「ははっ…あいつめ…素直に職を全うすれば良いものを…」


乾いた笑いがロジェットを覆う。


「隊長、ガルカンが隊長に渡してくれって…」

エドガーはポケットから、隊服から切り取られた騎士団紋章をロジェットに渡した。


「ガルカンは隊長の事を兄のように慕ってましたから…」


ロジェットは紋章を受けとると、無言でそれを額に当てた。


「処刑はいつだ?」

「昨日の晩、全て終わりました。」

「…そうか。」




エレノアはロジェットたちのやり取りを眺めていたが、何もいう事は出来なかった。



現在、過激な法の締め付けに、騎士団内部からも今の政策を疑問視する声は出ている。

それどころが、反逆罪として処刑まで行うなんて…。今すぐにでも、王の執務室に 怒鳴り込みにいけたらどんなに良いか。

しかし、いくら言ったところでどうせエレノアの意見は聞き入れてもらえない。

エレノアは悔しさと、自分ではどうにも出来ないもどかしさで気が狂いそうだと思った。



ロジェットは、泣くエドガーとマークを落ち着かせ帰らせた。

「エル、急用が出来たから今日はもう店仕舞いさ。」

「ロジェットさん…」


ロジェットはエルの呼び掛けに反応せずに片付けを始めた。

「エル、当分手伝いに来ないで良いぞ。いつ店を再会するかわからんからな。」

「ロジェットさん!!」


エレノアは強く呼び掛けた。


「悪いな。急用が終わるまで俺は帰ってこねぇ。」


ロジェットの決意の瞳から、エレノアは嫌な予感がした。

もしかしたら、反逆罪に相当する事を目論んでいるのではないか。

万が一、ロジェットに何かあったら、残された者達はどう思うのか。


「ミモザさんとお子さんはどうするんですか。」

エレノアはなんとか、ロジェットを引き留めようと、ロジェットの弱点を突いた。ロジェットはエレノアの問いかけに一瞬躊躇したように立ち止まる。


「二人には田舎に帰るように伝えておくさ。」


ロジェットは苦しそうに言葉を吐いた。


「さあ、エル。もう出ていってくれ。今までありがとうな。無事でいろよ。」

「え!?ちょっとロジェットさん!?ロジェットさん!!」

ロジェットは、エルを無理矢理店内から追い出した。


「ロジェットさん!!扉を開けて下さい!!ロジェットさん!!」


ロジェットは無言で店の扉を閉めると、エレノアの問い掛けに応える事なく、ロジェット理髪店の扉は二度と開かなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます

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