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ムスティーク・バタイユ  作者: 沙φ亜竜
エピローグ 熱い夏はまだ終わらないから
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17/17

ー☆ー

 ダラダラと夏休みの後半を満喫する。

 その希望が叶えられることは、残念ながらなかった。

 なぜなら、毎日のように木乃々さんがあたしを迎えに来たからだ。


 関東大会が終わったから、しばらく休みたい。そんなの無理に決まっていた。

 あたしは関東大会で優勝した。今月末には全国大会がある。

 だったら当然、あたしは出場者としてカウントされるに決まっていたのだ。


「といっても、全国大会は五人ひと組のチーム戦になるんだけどね!」

「メンバーはまだ発表されておりませんが、少なくとも優勝した理葉さんと準優勝のわたくしは、まず確定と見て間違いないでしょう」


 ムースバター研究所には、どういうわけか潤平くんと鮎季さんの姿もあった。


「全国大会を見据えて、チーム戦のトレーニングも必要だから、私が呼んでおいたのよ」


 と、木乃々さん。

 確定しているらしい鮎季さんはともかくとして、潤平くんまで呼ぶなんて。


「実際には、関東大会に出場した有力なエルヴァーに片っ端から声をかけてみたんだけどね。集まることを考えても同じ県内じゃないと難しいし、随分と断られたわ」

「俺の所属事務所は、幸いここから結構近いしね。それに……」


 ちらっ。

 潤平くんが、あたしに目を向けた……と思ったら、すぐに視線を逸らしてしまった。

 どうしたのだろう?

 なんだか、顔が真っ赤になっているようにも見えるけど、熱でもあるのかな?


「ま……まぁ、とにかく俺は、協力することに異論はなかったから! 俺自身の実力アップにもなるはずだし! だからこうして来てあげたんだよ! せいぜい感謝するがいいさ!」


 恩着せがましい潤平くん。

 最初に会った頃のように、ナルシストキャラを復活させたのだろうか?

 あたしは首をかしげながらも、


「うん、ありがとう。よろしくお願いしますね!」


 と言って、潤平くんの両手を握る。


「お……おう……。こちらこそ、よろしく……」


 相変わらず視線は合わせないし、顔はより一層真っ赤になっていたけど、潤平くんもあたしの手を握り返してくれた。




 結局、夏休みをダラダラと過ごす計画は頓挫してしまったことになる。

 だけど、全国大会という大舞台が待っているのだから、あたしは頑張るしかない。

 こうやって、わざわざ集まってきてくれた人もいるわけだし。


 みんなで一緒にトレーニング。

 きっと楽しくなるだろう。

 あたしは気合いを入れ直していた。




「えっ? ちょっと、これ、なに?」

「ど……どうしてわたくしまで、こんな格好をしなくてはなりませんの!?」


 潤平くんと鮎季さんにも、当然、蚊の着ぐるみを着てもらっている。

 これはムースバター流トレーニングの基本だから、避けて通れない道なのだ。


「でも、やっぱり暑苦しいわよね。それに、何度着ても恥ずかしいわ……」


 萌波さんまで、そんなことをぼやいていたけど。


「なに言ってるんですか! 心頭滅却すれば火もまた涼しです! 蚊の着ぐるみだって、みんなで着れば恥ずかしくないです!」


 あたしは声を荒げる。


「さあ、まずは外でランニングですよ!」

「こ……この格好で外に出るんですの!? ありえませんわ~~~~!」


 不満たらたらの鮎季さんをも、問答無用で引っ張っていく。

 やると決めたら、とことんやるのだ。


「ムスティーク・バタイユ万歳! ムスティーク・バタイユ万歳! ムスティーク・バタイユ万歳! ……ほらみんなも、声を合わせて叫びながら走りましょう!」

『どんな怪しげな宗教よ(だよ・ですの)!?』


 おかしなテンションで盛り上がるあたしに、全員からの総ツッコミが浴びせかけられた。


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