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ダラダラと夏休みの後半を満喫する。
その希望が叶えられることは、残念ながらなかった。
なぜなら、毎日のように木乃々さんがあたしを迎えに来たからだ。
関東大会が終わったから、しばらく休みたい。そんなの無理に決まっていた。
あたしは関東大会で優勝した。今月末には全国大会がある。
だったら当然、あたしは出場者としてカウントされるに決まっていたのだ。
「といっても、全国大会は五人ひと組のチーム戦になるんだけどね!」
「メンバーはまだ発表されておりませんが、少なくとも優勝した理葉さんと準優勝のわたくしは、まず確定と見て間違いないでしょう」
ムースバター研究所には、どういうわけか潤平くんと鮎季さんの姿もあった。
「全国大会を見据えて、チーム戦のトレーニングも必要だから、私が呼んでおいたのよ」
と、木乃々さん。
確定しているらしい鮎季さんはともかくとして、潤平くんまで呼ぶなんて。
「実際には、関東大会に出場した有力なエルヴァーに片っ端から声をかけてみたんだけどね。集まることを考えても同じ県内じゃないと難しいし、随分と断られたわ」
「俺の所属事務所は、幸いここから結構近いしね。それに……」
ちらっ。
潤平くんが、あたしに目を向けた……と思ったら、すぐに視線を逸らしてしまった。
どうしたのだろう?
なんだか、顔が真っ赤になっているようにも見えるけど、熱でもあるのかな?
「ま……まぁ、とにかく俺は、協力することに異論はなかったから! 俺自身の実力アップにもなるはずだし! だからこうして来てあげたんだよ! せいぜい感謝するがいいさ!」
恩着せがましい潤平くん。
最初に会った頃のように、ナルシストキャラを復活させたのだろうか?
あたしは首をかしげながらも、
「うん、ありがとう。よろしくお願いしますね!」
と言って、潤平くんの両手を握る。
「お……おう……。こちらこそ、よろしく……」
相変わらず視線は合わせないし、顔はより一層真っ赤になっていたけど、潤平くんもあたしの手を握り返してくれた。
結局、夏休みをダラダラと過ごす計画は頓挫してしまったことになる。
だけど、全国大会という大舞台が待っているのだから、あたしは頑張るしかない。
こうやって、わざわざ集まってきてくれた人もいるわけだし。
みんなで一緒にトレーニング。
きっと楽しくなるだろう。
あたしは気合いを入れ直していた。
「えっ? ちょっと、これ、なに?」
「ど……どうしてわたくしまで、こんな格好をしなくてはなりませんの!?」
潤平くんと鮎季さんにも、当然、蚊の着ぐるみを着てもらっている。
これはムースバター流トレーニングの基本だから、避けて通れない道なのだ。
「でも、やっぱり暑苦しいわよね。それに、何度着ても恥ずかしいわ……」
萌波さんまで、そんなことをぼやいていたけど。
「なに言ってるんですか! 心頭滅却すれば火もまた涼しです! 蚊の着ぐるみだって、みんなで着れば恥ずかしくないです!」
あたしは声を荒げる。
「さあ、まずは外でランニングですよ!」
「こ……この格好で外に出るんですの!? ありえませんわ~~~~!」
不満たらたらの鮎季さんをも、問答無用で引っ張っていく。
やると決めたら、とことんやるのだ。
「ムスティーク・バタイユ万歳! ムスティーク・バタイユ万歳! ムスティーク・バタイユ万歳! ……ほらみんなも、声を合わせて叫びながら走りましょう!」
『どんな怪しげな宗教よ(だよ・ですの)!?』
おかしなテンションで盛り上がるあたしに、全員からの総ツッコミが浴びせかけられた。




