1秒のために
ちょっと短い回になってしまいましたが、楽しんでいただけたら幸いです。
こういうのってラブコメっていうのかな?
(赤黒龍視点)
村に逃げても仕方がない、森の奥へふくろうを抱え、颯爽と逃げて距離をとった。
目を瞑っていてもわしの攻撃を避けるだろう、それが、性能の差
しかし、対策を練らねばアヤツを殺さなくてはいけない結果にもなりかねん。
そう考えながらもふくろうを地面に置き、回復の魔気を両手に帯びさせてからそっと血の滴る傷口に手を当てる。
殺すのはふくろうが最も嫌がることだろう。
だとしたら、執念や嫉妬、妬み、様々な邪気を少し弱くせねば……。 体の持ち主との命誓すら交せず終わるだろう。
恐らく、ギリギリの状態、どこからあんなに執念を集めたのやら……。
はっきりいって相当な量だ。
今の状態であれば、まだアヤツは気づいておらぬかもしれぬが、命誓を守らなくても体の自由を手に入れる可能性がある。
自暴自棄で命誓をないがしろにして、それでも体は支配できている。
その事実に気づく前に……。
傷口は塞がり、HPも安定したふくろうを確認してから、自分の爪を見る。
一撃を与えねば……。
しかし…… どう隙を作れば……。 コンマ数秒ならともかく、約1秒は欲しい所だ、ましてやふくろうを守りながら戦うとなると……。
腕を組み必死に考える、そう時間は稼げない。シオンに頼んでも足手まといになるだけだ。
いっそのこと逃げてしまいたいとさえ思うのだがそれは今後の生き様を後悔する気がした。
アヤツは籠の中の鳥とでも思っているのだろうか?
ジワリジワリと近づいてきている、後数分は大丈夫と思うが、いつ気が変わって襲ってくるか……。
そう思っていると
「……ん……んっ……」
ふくろうの喘ぎ声というか寝起き声、思わず胸がキュンとする。
人間のしかも男相手にこういう感情を抱くというのがどうもぎこちない。
ただ、こー……。
……ぷにぷに。
……さすさす。
……つねつね。
「うぅっ……何……?」
頬を突いたり、摘まんだり撫でたりするのは実に楽しい。
頭が痛そうに起き上がるふくろう、急な回復、しかも時間が経っていないので体の負担は凄く大きい。
少しだけ和らぐ魔法をかけてやりながら、状況を説明した。
数分後にはアヤツ(チェンジ)がくる。
身体能力の差的に刃がたたない。
殺さなきゃいけないというのを避けるためにも一発技を当てておきたいそのためには約1秒は時間が欲しい。
しかし1秒の時間を作るのは難しい。
そう伝えてるとふくろうは怪訝そうな顔をして、俯きながら
「ボクのためにあっ、ありがとう……」
一筋の涙を流してから、真剣に見つめられた。
ふくろうの潤んだ目は、どんな宝石よりも美しく、健気な姿は今まであった如何なるものよりも可憐に見えた。
思わず魅入りそうになった。
その時だった。
結構離れた所だが、木がなぎ倒される音が聞こえた。
ドスッ!……
ハッと我に返る。 そして、我に返った反動か一つの策が浮かんだ。
そして、相手に聞かれまいと少し声のボリュームを落とし提案を告げた。
「……チェンジを助けるために何でもすると言えるか?」
「……そ、そりゃ、勿論……やれる範囲のことは」
「……じゃったら、わしとキスするぞぃ」
「……へっ……?」
言われた内容と言葉の語尾のせいか、ふくろうは頬を赤くし戸惑った。
何か策があると信じてくれているのか、ただの変な物好きなのか、ふくろうは、2秒後にコクリと頷いた。
信頼しているのかそれともわしのことを好きなのか、どちらにせよ恥ずかしいが
次第に近づく音に病むおえず、スッとキスをし、舌を忍び込ませほんの一瞬舌と舌を重ねた。
そして、そっと離れて、詠唱に入った。
気遣いの言葉とか、礼とか、或いは状況説明とか、そういうのをするのが何故か恥ずかしく
ただ黙々と1秒を得るための準備に取り掛かった。
粗方唱え終わってからふくろうに一言告げた。
「…………」
「……わかりました、宜しくお願いします」
そう言ってくれたふくろうは勇気に溢れていて頼もしかったが、これから先のことを考えてか足が震えていた。
「わしを信じろ」
そう言ってから『ニィ』っと笑うと、ふくろうも笑い返してくれた。
正真正銘の一発勝負、そしてわしは、アヤツに当てるための技の詠唱を闘気を抑えながら慎重に始めるのであった。
何が為のキスだったのか? 次回 いよいよ?




