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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第10章 真実との邂逅
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第7話 愛の欠片

 きっと、1号はテラが、自分たちの弱さを補うために創り出したのだろう。

 テラの代わりに働き、戦い、従う──ただの“道具”として。


 1号の話からして、父と呼ばせていたくらいだ。

 愛情はあったのかもしれない。

 けれどそれは恐らく、“モノ”を愛玩する感情だ。


 1号の父親の瞳に宿るものが、愛ではなく、ただ従わせるための“命令のぬくもり”──冷たさを孕んだ熱だと気づいたとき、リオの胸に、言葉にならない痛みが走った。


 1号は“善悪”を知らない。

 教えなかったからだ。


 父親は、どう接すればいいか分からなかったのだ。

 だから、教えることから逃げた。


 いつも真っすぐ向き合ってくれる父──アレンと違い、人としての責任を放棄したのだ。


 リオの頬を、涙が伝った。


「ねえ。我はお父さんに、愛されていたのかな」


「……そんなの、愛じゃないよ」


 嘘でも、そうだとは言えなかった。


「どうして泣いているの?」


 1号に問われ、リオは言葉を失った。

 けれど、言わない方がもっと残酷だと思った。


「哀しいと、思ったんだ」


「かなしい?」


 1号が、リオの言葉を繰り返す。


「愛を知らないまま、愛を返そうと足掻くその姿が、ただ──哀しいと思ったんだ」


 リオも、まだ十四歳だ。

 愛なんてものは、全然わからない。

 それでも、温もりの種類の違いくらいはわかる。


「……そうかあ」


 1号が、息をついた。


「そうだよね……本当は、何となくわかっていたんだ」


 軋む首を動かし、アレンとリオを見つめる。


「汝らを見ていると、嫌でも思い知らされる。ああ──これが羨ましいという感情なのかな」


 胸が、ぎゅっと締め付けられた。


「ふふ……どうしてここに来る汝らを止めなかったのか、今ならわかる気がする。互いを想い合って、信じて行動する──それが、途方もなくまぶしくて、ただ、近くで見てみたかったんだ」


 限界だった。


「父さん、俺……無理だよ」


 リオは1号の左手を握った。

 真っ白な床に、滴が落ちる。


「理由も、答えもなくなってしまった……俺はもう、1号に剣が向けられないよ」


 ずっと黙って話を聞いていたアレンが、リオの手の上に、自分の手を重ねた。

 そして、そっと離すと、横抱きにして1号の体を持ち上げる。


「父さん……?」


 アレンは立ち上がった。


「1号。体を直す方法はあるんだろう。案内してくれ」


 1号が、驚いたように目を見開く。


「でも、我は……」

「いいから早く答えろ。落とされたいのか」


 1号が戸惑ったように視線を漂わせ、やがて一つの方向を指差す。


 アレンは、静かに歩き出した。

 リオもその後に続く。


 背後から、フィオナたちの足音が響いた。

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