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 玄関から入って台所の机の上に買って来たものを置いて、必要なものを作りながら片付けていく。

 香草と塩、砂糖は中身が見てわかるように氷石で作った蓋つき容器の中に。

 穀粉は虫が入らない様に重い黒長石で作った箱の中。

 干し果物はすぐに無くなるから紙袋のままでいいか?

 日持ちのしない白パンと油紙に包まれたウサギ足の香草焼を持ってよく晴れた空の下、玄関のある山頂で少し早い夕ご飯を食べる。

 下の、入口がふさがれた環状の洞窟にいる四人は警戒しながらゆっくりと進んでるみたい。

 喉がかわいたからカップを作って水を飲んでると二手に分かれたのがわかった。

 二人は進んで残りは戻って。戻る組の方が足早に来た道を引き返して、僕の作った岩壁の前で足を止めた。そして先ほどよりも早く、多分走ったんだろうな、先行組に追い付くと今度は四人して戻り出した。

 ゆっくりと、慎重どころじゃなく僅かな見落としすら許されないとでも言う様に、舐める様に移動する。

 夕日が沈んで僕は部屋へと戻った。日課の本を開いて眺める。

 ランクが3か4か5位になったら街にでも出ようかと思ってる。


 シュレイ

 クラス:ひきこもり

 ランク:2

 領域:自宅(洞窟) 環状洞窟

 クラススキル:領域操作Lv3、領域維持Lv2、内弁慶Lv1、領域同調Lv2

 個人スキル:水魔法Lv4、土魔法Lv5、火魔法Lv4、風魔法Lv4


「あ、ちょっとスキルが上がってる」

 多分、今感じてる男達が居る場所を把握するっていうのが同調の力なんだろうな。

 入口がふさがれた事を理解した盗賊達はしばらく動かなかったけど、また先へと進み始めた。

 これで外に出たら諦めて帰ってくれるだろうと、僕は本を棚へと戻すと薄い布を被って目を閉じた。


 翌日、起きたときには環状洞窟の中に人は残っていなかった。

「ふふーん、ざまあみろ☆」

 洞窟から出た時の顔が見えなかったのは残念だけど、家が荒らされたことに対する溜飲はかなり下がったから別にいいや。驚いただろうな、あいつら。

 今日はどんな部屋を作ろうか?

 いっそのこと壁一面が本棚で好きなだけ本を読む部屋を作ってもいいかも。うん、図書室を作ろう!

 岩山の中央部?台所の下にできるだけ大きな四角い部屋をくりぬいて小休止、このまま棚も作りたいけど魔力の残量も考えてこれくらいにしておこう。

「結構時間かかっちゃったな」

 まだ何もない、すっからかんの四角い部屋を眺めて呟いた。

 なるべく綺麗な正方体に近づけたかったために端っこは少しずつ削ったからしょうがない。でも自信作だ。

 いつかこの部屋がいっぱいの本で埋まる事を夢見て僕は台所へと向かうことにした。

 ご飯が出来上がったのはお昼を結構過ぎた頃。

 今日も玄関外に作った平らな山頂で朝昼晩ご飯を頂きます!

 イスイスの種を向いて教えてもらった通りに甘く煮付けて、少し物足りなかったからバターを加えて冷ましたものを薄く切ったパンにたっぷり塗って二つ折りにして食べる。

「おいしー!なんか麦を丸のまま茹でたみたいな食感?」

 麦に似てるなら乳がゆにしても美味しいかも?今度はもっとたくさん買ってこよう。

 少し水分が多かったのか、後ろの方から溢れて腕にこぼしてしまったイスイス煮を舐めとっていると、下の方で何やらガタガタと音がした。

「なんだろ?」

 覗き込んでみると昨日の盗賊らしき人たちと冒険者っぽい人たち。

「ここ、ここだぜ!」

 一人が大きな声で喚いている。

 全部で7人、つるはしとすきを積んだ荷車、さっきのうるさいのはこの車の音だったみたい。

 それにしても、最近人が来すぎだと思う。

 昨日の洞穴、環状洞窟へと5人が入り込むと視界からは消えても僕のスキルによって行動が把握される。

 つるはしで壁を叩いてるのが嫌な感じ。

 僕は領域維持で壁に傷一つつかないようにしてやった。


 上からじぃっと眺めてても外の2人は入り口を見つめたまま動こうとしない。

 昨日みたいにからかってやろうと思うけど、見られてる前で領域の形を変えるのはなんか嫌だ。

 そこで僕はちょっと考えた。

 中の5人が壁を叩いたりすきを突き立てたりしながら半分を超えた頃、外側からは見えないくらいの位置で入口に戻れない様に埋めてやる。

 続いて一番奥の行き止まりから急に曲がりくねった様に洞窟を伸ばしてさっき埋めた壁の横、入口側に繋げて完成。

 時間をかけて警戒をしながら進む男達は結局前に進み続けて、入ったはずの入口から出てきて見張りの二人と言い争いを始めたのだった。

「なんだ?戻ってきたってことは何かあったのか?」

「あ?戻ってきた?馬鹿言うな、俺たちはずうっと前に進んでたぞ」

「嘘つくなって、どうせ怖くなって引き返したんだろ」

「は?てめぇ、喧嘩売ってんのか?」

 干しツルカをしゃぶりながら男達の言い争いを聞いてるうちにもっと他のことを考えついて、洞窟の道を途中から七つに分けてそれぞれに長さを変えてやる。最終的に一本の道へと収束させて準備完了。

 もう一回、入ってくるかな?

 あ、一人が殴られた。

「スーフォッ!てめ、よくも!」

 仲間っぽい人が一人それを支えて、もう一人が殴った男につかみかかる。

 ちぇ、せっかく作ったのに入ってくれなかったや。

 がっかりして部屋に戻ったらすぐにさっきの洞窟に感じる四人の気配。

 分かれ道までくると全員で一番端っこに進んでしまった。残念。

 もういいや、入った道だけ残して全部埋めてしまおう。

 侵入者への興味を無くした僕は、本棚部屋をどうするのかに思いをはせる。

 本を読む場所が欲しいな。

 机と椅子、寝転がりながら読むのもいいよね?敷物を敷いて、うん、長椅子にしよう。

 本棚は木で作りたいな。

 木材はどうしよう?

 森の木を切って反らないように乾燥させるのに半年、いや、一年だって本に書いてあったっけ。そんなに待つより街で買った方が良いかも、でも持って帰るのが大変そう。板を少しずつ買おうか、荷車でも用意して……。

 思い出して侵入者へと意識を向けると細い道に苦労しながら荷車を引いて歩いてる。

 その道の先をぐぐっと狭めてやった。荷車がつっかえるくらいに、人は通り抜けられるくらいに。

「後は入ってきた方を塞いでっと、これでよし」

 少しして、狭くなった箇所に着いた男達は来た道を引き返し、入口がなくなっている事を知って再び洞窟を進んで、つるはしやすきを使って壁を掘り広げようと頑張っていたけど結局は諦めて上に乗せていた荷物を全て担いで帰っていったのでした。

 えへ、捨ててったんだから僕がもらっても良いよね?

 これで木材買ってこようっと!

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