あったような子供時代
家族が寝て静かになった深夜2時
ここから僕の冒険が始まる
部屋の扉を音を立てずに閉め、階段を慎重に降りる
スパイや忍者にだって今の僕ならなれる
玄関の重い扉を開ければ
(扉を開ける音)
ほら、見たことがない世界が広がっている
足早に家から離れて一呼吸
夜の冷たい空気が肺を満たし僕の頭をクリアにする
握りしめた500円玉を持っていつも通る見知った道を、しかし、普段とは全く違う道を歩く
海賊王やヒーローになった気分で意気揚々と歩きたいが、ついつい周りをキョロキョロしてしまう
「着いた!」
こんな時間なのに明るく光る店内に、光に惹きつけられる虫のように吸い込まれる
本当はファミチキを食べたいが、多分店員さんを呼ばなければならないから、おにぎりと缶コーヒーを手に取る
セルフレジで手早く会計を済ませ、
「ミッションコンプリート!」
公園のベンチに座り、月明かりの元口にしたおにぎりは背徳の味がした
おにぎりを夢中に頬張った後はお楽しみの缶コーヒー
(缶の開く音)
初めてのブラックコーヒーは夜の闇より深い味がした。
……嘘だ
「苦い」
これを飲み干すという予想外のミッションが追加されたが、今の僕ならきっとできる
無事家に帰りベットに潜り、翌朝「お母さんにどこに行っていたの?」と聞かれるまで、僕は無敵だった……




