第十七話 来る?
後ろからなぜか猛烈なプレッシャーを感じる――
一日の終わりを告げる帰りの会が進行している間、自分の背中にジィ~ッと感じるモノ。
――これは間違いなく柚葉だなぁ……
ここまで果桜から呼び捨ての件で何回も聞かれる事はあったけど、柚葉も言っていた通りで何かあったわけじゃない。答えるのは同じ事だけ。
でも昨日起こった事は別に秘密でもないんだけど、柚葉からみんなに言っていない事もある。たぶんそれが後ろから今放たれてきているプレッシャーの元なんだろうと一人理解していた。
「では皆さんさようなら」
「「「「「さようなら」」」」」
日直の言葉を合図にしてみんなが一斉に教室の出入り口に殺到していく。
僕もその流れに乗り遅れないように急いでランドセルを背負い立ち上がろうとした。
「匠君……ちょっと良いかな?」
言葉と同時に机の後ろからスッと伸びて僕のランドセルを掴む腕が同時だった。
「え!? 何かな?」
振り向いた先にはやっぱりと思われる人物がニコッと笑顔を向けている。
「あのね……今日何もないなら一緒に帰らない?」
「え~っと……それは柚葉と果桜とって事かな?」
柚葉はまだ自分の机に座っているけど果桜はすでにランドセルをしょって柚葉の隣で準備万端待っている感じがする。
――こりゃ逃げられないかな……
「うんもちろん三人でだけど……不安なら光も呼ぶ?」
そう言われてうんという訳にはたぶんいかない。覚悟を決める。
「わかった。一緒に帰ろう」
僕から出た答えに女の子二人はなぜかハイタッチして喜んでいる。
決まれば行動に移すのは早くて、三人ともランドセルを背負い駆けていくように教室を抜け昇降口までたどり着くと勢いよく降りて行って下駄箱で靴に履き替えた。
そのまま真ん中に僕、左に果桜右に柚葉という両手に華な状態のまま帰宅路を歩いて行く。ほとんどの会話は何気ない一日にあった事とか他愛もない話題だ。二人が声を上げながら話すことに求められたら返事をするだけという時間が過ぎて行く。そして昨日何かあった場所まで近づいてきた時だった。
「かねえねえ果桜ちゃん……昨日ここでかわいい子猫見つけたんだよ?」
「え!? 今もいるかな!?」
土管のある場所が見えてきたところで柚葉はそんな事を言ってきた。
――これはあの猫に繋がる気配がするな……
どうにかして名前の事を伝えなければならないという変な使命感が働く。
「その猫ってまだいるかな?」
「う~んどうだろう……」
そんな会話の後で僕の方へ視線を投げかけてきた柚葉。完全に確信犯だ。僕にその答えをさせようとしている。
「あぁっと……その子猫ならウチで飼うことになったよ」
絞り出す声を出して二人から見られない様に反対側をKるっと向きながら言葉にした。
「「えぇ~!!」」
「本当に家に連れて行ったんだ!!」
「見に行っていい? 良いよね? ねぇ?」
二人そろって目を輝かせている。ここは言えるセリフは一つしかないような気がする。
「うちに……来る?」
果桜と柚葉はお互いに顔を見合わせた後大きくうなずいた。
「もちろんいくわ(よ)」
――声揃ってるし……はぁ……
ソレから三人で僕の家まで行くことになった。
――名前はその時で良いかな……母さん居ないと良いなぁ……
足取りの軽い女子二人と違い、僕の足取りは重くなっていた。
お読み頂きありがとうございますm(__)m
結局二人とも呼んでしまった匠の運命やいかに!!
赤くなること必須か!?
柚葉sideに期待!!
by 藤谷 K介




