呪詛の浄化
呪詛でぐるぐる巻きにされているのは、男の子だった。
わたしより、何歳か年上に見える男の子。
顔を歪めて、苦しそうに呼吸をしている。
でも、その目の強さに惹きつけられた。
生きることを、諦めていない目。
教会から抜け出した日のことを思い出した。
あの時のわたしは、逃げることに必死だった。
でも、一瞬たりとも死のうなんて考えなかった。
今ならわかる。
わたしらしく、生きたかったから。
だから、必死に逃げたんだ。
彼もきっと、わたしと同じだ。
生きるために、必死で足掻いている。
だったらわたしは、全力で彼を生かす。
あの時アルに助けてもらったように、今度はわたしが助けるんだ。
呪詛から漏れる、負の感情が気持ち悪い。
わたしはわたし自身の恐怖と闘いながら、少しずつ彼に近づいた。
彼の目はとても鋭くて、全身に突き刺さるような感じがしたけど、今はそれを無視する。
ようやく、手の届く場所まで近づけた。
わたしは彼のそばに膝をついて、胸の前で手を組んだ。
どうか、彼が救われますように。
悪意を打ち払えますように。
闇を照らせますように。
祈りを力に変えて、解き放つ。
光の蔦が呪詛を包み込み、色とりどりの光の花を咲かせる。
わたしから溢れた光は、呪詛の影響で枯れた草花に、再び命を吹き込んだ。
緑が蘇り、花は天を仰ぐ。
長いようで一瞬だった光の幻想は、最後の呪詛を飲み込み、弾けて空気に溶けた。
ふう〜
何とか浄化、できた、よね?
……これで失敗だったらどうしよう……
うぅぅ……アルゥ……
やってからいろいろと考えてしまい、目の前の彼を意識の外に追い出していた。
「あんた……」
「ひゃいっ!」
突然の声かけに、大袈裟に反応してしまった。
そちらを見ると、彼はゆっくり身体を起こしていた。
彼がわたしを見る目は、どこか呆れているように見える。
先程までの鋭い目つきは、いくらか和らいでいた。
「……」
「な、何?」
「なんで、助けたんだ?助ける義理なんてないだろ?」
「だって、生きたいって、強く思っていたでしょ?だったら、助けないと。」
「助けたやつに、殺されるかもとか思わないのか?」
「そういうこという人は、そんなことしないよ。それに、何かあってもハオウが守ってくれるし。」
「ハオウ?」
「この子の名前。」
ハオウがいる方の手を前に突き出すと、ハオウが腕を張って手のひらに顎を乗せた。
シャー
……ちょっと、威嚇してる?
でも、威嚇も可愛いかも……?
はっ……違う違う。
今はそうじゃないっ!
腕を下ろすと、ハオウも肩に戻ってきた。
助けたのはいいけど、これからどうしよ……
助けた後のことを何も考えていなかったわたしは、心の中で頭を抱えた。




