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聖女は逃げ出した  作者: 氷桜 零
第1章
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誘拐


意識を失った、フリをした。


わたしは治癒の魔法が得意。

だから、自然と身体に入った異物を治癒してしまう。

つまり、水に入っていた変な薬の効果も、打ち消してしまった。

でもそれを知られるのはマズイので、眠ったフリをしている。


ミスティが言ってた。

「女は皆んな、女優なのよ」って。

女優が何か聞いたら、演技が上手い人だと返ってきた。

だから、わたしも女の子だから女優なの。

今こそ、女優のわたしを見せつける時。

どうか、上手くいきますように!


目を閉じたまま、耳や感覚だけで周囲を探る。


わたしを抱えている人は男の人。

アルよりも太い腕。


足音から、石造りの階段を下に降りて行っている。

下に降りているせいか、少しずつ肌寒くなってきた。

響き方から狭い通路だけど、歩く時間から距離はそこそこありそう。


足が一旦止まって、扉の開く音。

また少し歩いて、今度は鍵の音と、金属の擦れる音。

そのまま冷たい床に降ろされた。


寒い……

ダメダメ、まだ我慢。


男の人の足音が遠ざかる。


衣擦れの音が近づいてくる。


「あ、あの……起きて……」


「う……ん……」


身体を揺さぶられたので、ゆっくり目を開けた。


すぐそばにいるのは、1人の女の子。

この子がわたしを起こした子みたい。


「あ……え……誰?……ここ、どこ?」


周りを見渡すと、石造りの部屋に金属の格子で区切られた場所にいた。

隅っこの方には、3人の男の子と1人の女の子。

そして、わたしのそばにいる女の子とわたし。

それがここにいる全員だった。


わたしはできるだけ不安に見える表情を作って、女の子を見た。


「ここが何処か、私たちにもわからない。孤児院にいたはずなのに、気がついたらここに連れてこられていたの。」


「わたしも……さっきまで、孤児院にいた。」


「やっぱり……そうなのね。」


「子どもを捕まえる理由なんて、一つしかないだろ。攫って、売るためなんだよ。」


赤髪の男の子が呟いた言葉に、一番小さな緑髪の男の子が涙ぐむ。


「泣いたって、どうしようもないわ。」


今度は、一番年上そうな茶髪の女の子が言い放つ。


皆んなはわたしよりも長くここにいる。

その間に理不尽なことが何度もあったはず。

逃げることも怒ることもやめて、諦めることにしたのか。


わたしにも身に覚えがある感情だった。

まるで、以前のわたしみたい。

教会から逃げ出さずに、諦めていたわたし。

けど、今は違う。

わたしには助けてくれる人がいる。

信じられる人ができた。


わたしの役割はここで終わり。

あとは……信じて待つのみ!


早く迎えにきてね、アル!






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― 新着の感想 ―
ヤバいアルが孤児院に嵐を起こす!
アルの情緒が心配…!
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