出張
万全の準備を整えて、ベローナ町にやってきたのは、人身売買のオークションが開催される半月ほど前。
全員が一斉に町に入ると怪しまれるので、個々にわかれて行動している。
闇ギルドの依頼は基本的に個人行動が多いので、何の心配もいらない。
わたしはもちろん、アルと一緒。
ベローナ町は港町なので、海が見える。
特産品の多くも、海に関係するものだ。
オークションまで時間があるので、情報収集をしながら町歩きをしている。
アルと手を繋いでトコトコと歩いていると、知らない人たちから温かい視線をもらう。
何でだろう?
おかしいことは、何もないよね?
何かあれば、アルがちゃんと言ってくれるはずだし。
うん、気にしない、気にしない。
「アルは泳げる?」
「泳げるぞ。」
アルは泳げる。
泳ぐのは難しいって聞いた。
やっぱり、アルはすごい。
何でもできちゃう。
「じゃあ、泳ぐ?」
「今の時期は、もう泳ぐ時期じゃないからなぁ……」
「そっか……」
「今度は泳げる時期に来るか?」
「アルも一緒?」
「当然だろ?」
「うん!」
次の約束。
また来ようって。
嬉しい。
港町に吹く風は、少しベタベタする。
潮風って言うんだって。
潮風があると、作物が育ちにくいと聞いた。
だから、海の食べ物と作物を交換して成り立っているらしい。
生活していくためには、いろいろな食べ物を食べないといけない。
だからこうして工夫している。
港町によっても特徴が違って面白いんだって。
ベローナ町は、遠くに魚を取りに行くのではなく、近場で貝なんかが有名。
焼きたてを一口食べさせてもらったけど、とても美味しかった。
貝をくれたおじさんたちが、胸を張って笑っていた。
「お嬢ちゃん、兄ちゃんから離れないようにしろよ!最近、何かと物騒だからな!」
「ん?なんかあったのか?」
「まぁ、ここは港町だからな。人の出入りがもともと多いんだが、最近は特になぁ……見かけない連中が多い。貴族みたいな奴らも多くて、そこいらでトラブルが多くてよ。……それに、ここだけの話なんだが……」
おじさんが周りを気にしながら、声をひそめる。
「貧民の子や孤児が、消えているって噂だ。だから、お嬢ちゃんを1人にしないようにな。」
「そうか。忠告感謝する。」
「おう!また、来いよ!」
「ああ。」
「バイバイ、おじさん!」
アルと繋いでる手とは逆の手を振った。
「アル。」
繋いでる方の手を、軽く引っ張る。
「ああ。帰ってからな。」
「うん。」
おじさんの言葉と町の違和感。
わたしでも気がついたくらいだから、アルはもっと気がついてそう。
わたしたちは町歩きを切り上げて、拠点にしている宿に引き返した。




