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聖女は逃げ出した  作者: 氷桜 零
第1章
19/33

出張


万全の準備を整えて、ベローナ町にやってきたのは、人身売買のオークションが開催される半月ほど前。

全員が一斉に町に入ると怪しまれるので、個々にわかれて行動している。

闇ギルドの依頼は基本的に個人行動が多いので、何の心配もいらない。

わたしはもちろん、アルと一緒。


ベローナ町は港町なので、海が見える。

特産品の多くも、海に関係するものだ。


オークションまで時間があるので、情報収集をしながら町歩きをしている。

アルと手を繋いでトコトコと歩いていると、知らない人たちから温かい視線をもらう。


何でだろう?

おかしいことは、何もないよね?

何かあれば、アルがちゃんと言ってくれるはずだし。

うん、気にしない、気にしない。


「アルは泳げる?」


「泳げるぞ。」


アルは泳げる。

泳ぐのは難しいって聞いた。

やっぱり、アルはすごい。

何でもできちゃう。


「じゃあ、泳ぐ?」


「今の時期は、もう泳ぐ時期じゃないからなぁ……」


「そっか……」


「今度は泳げる時期に来るか?」


「アルも一緒?」


「当然だろ?」


「うん!」


次の約束。

また来ようって。

嬉しい。


港町に吹く風は、少しベタベタする。

潮風って言うんだって。

潮風があると、作物が育ちにくいと聞いた。

だから、海の食べ物と作物を交換して成り立っているらしい。


生活していくためには、いろいろな食べ物を食べないといけない。

だからこうして工夫している。


港町によっても特徴が違って面白いんだって。

ベローナ町は、遠くに魚を取りに行くのではなく、近場で貝なんかが有名。

焼きたてを一口食べさせてもらったけど、とても美味しかった。

貝をくれたおじさんたちが、胸を張って笑っていた。


「お嬢ちゃん、兄ちゃんから離れないようにしろよ!最近、何かと物騒だからな!」


「ん?なんかあったのか?」


「まぁ、ここは港町だからな。人の出入りがもともと多いんだが、最近は特になぁ……見かけない連中が多い。貴族みたいな奴らも多くて、そこいらでトラブルが多くてよ。……それに、ここだけの話なんだが……」


おじさんが周りを気にしながら、声をひそめる。


「貧民の子や孤児が、消えているって噂だ。だから、お嬢ちゃんを1人にしないようにな。」


「そうか。忠告感謝する。」


「おう!また、来いよ!」


「ああ。」


「バイバイ、おじさん!」


アルと繋いでる手とは逆の手を振った。


「アル。」


繋いでる方の手を、軽く引っ張る。


「ああ。帰ってからな。」


「うん。」


おじさんの言葉と町の違和感。

わたしでも気がついたくらいだから、アルはもっと気がついてそう。


わたしたちは町歩きを切り上げて、拠点にしている宿に引き返した。






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